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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ガダのリルデのマッサージ

 ガダが寝室に入ると、リルデは既にベッドに横になっていた。近付くと、寝息を立てている。

 ガダはそうっとベッドに腰を下ろした。


「うん?ガダ?」

「起こしてしまったか?」

「待たずに寝てしまったみたい。ごめんなさい」

「いいや、構わないよ。今日は疲れただろう。私の方こそ、起こしてしまってごめん」


 リルデは小さく首を振って「ううん」と返すと、ガダを入れる為に上掛けを(めく)る。ガダは横にはならずに、リルデの頬に手を当てた。


「ずっと立っていて疲れたろう?」

「それはガダもでしょう?」

「私は立ったり座ったりしていたけれど、裏で指示する時もリルデは立ちっ放しだったのではないか?」

「それはラーラもミリもよ」

「ミリは子供だろう?寝て起きたら疲れなんて残らないだろうし、ラーラだってまだ若いのだから」

「あら?私がもう歳だと言いたいの?」


 リルデが一睨みするけれど、ガダは微笑みを返す。


「いいや。リルデにはマッサージが必要なのではないかと、思っているだけだ。さあ、足を揉ませて貰っても良いかな?」

「え?・・・でも・・・」

「うん?なに?ふくらはぎとか、張ってないのか?」

「でも、ガダも疲れたでしょう?」

「ラゴやバルがいたから、全然だ。ほら?足を出して。それとも、私が捲って良いかい?」

「え?待って待って、自分で出すから」


 リルデは上掛けを更に捲ると、ナイトウエアを少し手繰(たぐ)り上げて、ふくらはぎまで裾から出した。


「じゃあまず、ふくらはぎかい?それとも土踏まず?」

「ガダにお任せします」

「それなら、指先からにしようか」


 そう言うとガダは片脚ずつ、リルデの足の指を一本一本揉み始める。


「そのまま、眠ってしまって構わないよ」

「・・・でも」

「今日の片付けで、明日も忙しいだろう?」

「そんなに残ってないわ。ラーラとミリに任せたから」

「そうか」

「二人がいてくれて、本当に助かったわ」

「そうだな」


 そこで会話は途切れたので、ガダはリルデが眠りそうなのかと思い、あまりリルデの体を揺らさない様にマッサージをする。


 しかしリルデは寝てはおらず、しばらくしてからガダに話し掛けた。


「どうしようかって判断が必要な時に、どうしてもお義母(かあ)様の顔が浮かんでしまうわ」


 一瞬ガダは手を止めたけれど、「そうか?」と言ってまたマッサージを続ける。


「リルデはもう大分前から、母上に聞かずに家の事を取り仕切っていたじゃないか?」


 ガダの言葉にリルデは、「任せて頂いてはいたけれど」と呟く。


「・・・お義母様はいて下さるだけで、私は安心できたのよ」

「まあ私も、リルデに頼りにして貰える様に、これから頑張るよ」

「ガダの事だって頼りにしてるわよ?でもやっぱり、お義母様がいらっしゃらないのは不安だし、何より寂しいわ」


 ガダは手を止めないまま、「そうか」と返した。


「母上の事を苦手とする人が多い中で、リルデは不思議だよな」

「私は結婚前から、お義母様には何度も助けて頂いていたから」

「そうか」

「ええ」

「そうだったな・・・」


 ガダは土踏まずのマッサージに移る。


「ハーナかサナレに王都に来て貰うか?」


 ガダが息子達の嫁二人の名を上げた。


「・・・そうね・・・でも、そうしたらラゴかガスも王都に来させるのでしょう?領地が手薄になるんじゃない?」

「どちらか一人でも大丈夫だとは思うが、領地に残すならラゴとハーナか」

「でもそうすると、ガスは王都でやる事がないのではないの?」

「私の代わりをさせれば良い」

「それなら私達は領地に行くべきじゃない?」

「他家と同じ様にか?」

「ええ。それで王都にはラゴとハーナに来て貰って」

「ラゴとハーナは領地が良いんじゃないか?王都はそんなにやる事がないし」

「まあ、そうなのだけれど・・・」

「何か懸念があるのか?」


 そう尋ねながらガダは、踵からアキレス腱のマッサージをする。


「サナレとラーラ、あまり相性が良くないから」

「そんな事、あるのか?」

「あるわよ。これまではお義母様がいらっしゃったから良いけれど、私も領地に行って離れたら、王都に残る二人の事はかなり心配だわ」

「二人の様子からは、そんな風には思えなかったけれどな」

「それにミリとリザの事もあるし」

「子供達がどうした?」

「リザがミリを意識してると言うか、目の敵とまではいかないとは思うのだけれど」

「リザが?なんで?」

「色々と羨ましいのだと思うわ」

「リザは王都に来たがっているらしいけれど、その辺りの理由で、王都生まれで王都育ちのミリにヤキモチを焼いているとかか?」

「ヤキモチはヤキモチでしょうけれど、色々とあるみたいよ?」


 ガダは「そう言うものか」と口にして、幼くても女は女なのかもと考えながら、リルデの(かかと)からふくらはぎに向けて揉み上げる。


「その辺りは落ち着いてから考えるか。母上の葬儀にはガスも来るから、葬儀の後にでも相談しよう」

「そうね。リザは連れて来ないのでしょう?」

「来ないのではないか?リドラもレグも小さ過ぎてまだ連れて来られないから、サナレもハーナだって来られないだろう?さすがにガス一人で、リザを連れては来ないだろうし」

「そうよね。でもリザを置いてくるのも、ガスは大変よね」

「そうなのか?」

「ピナ様の葬儀の為にジゴだけ連れて来たでしょう?リザがごねてごねて、大変だったそうじゃない?」

「まだ子供だから、ごねても仕方ないは仕方ないけれどな」

「そうなのよね」


 そう言うとリルデは溜め息を吐いた。

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