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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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スイーツとお土産と

 ピナ・コーハナルの葬儀に参列する為に、バルの長兄ラゴ・コードナ次期侯爵とその長男ジゴが、領地から王都のコードナ侯爵邸に来た。

 領地にはラゴの妻と生まれたばかりの長女、それとバルの次兄家族が残っている。



「ラゴ兄上、久し振り」

「おう、バル。それにミリは随分と大きくなったな」

「ご無沙汰致しております、ラゴ伯父様」

「おお、すっかり淑女だな。素晴らしい。可愛い姪がこんなに美人に育って嬉しいいよ」

「ジゴも久し振りだな」

「ええ、バル叔父さん。この間は直ぐに帰ったから王都のスイーツを紹介して貰えなかったけれど、今回は時間があるから、よろしく」

「もちろんだ」

「俺も行くからな」

「分かったよ、ラゴ兄上。でも最近はコードナ領もスイーツ店が大分増えて、王都と同じ物を出す店も多いのだろう?」

「そうは言っても、コードナと仲が良くない領地の資本の店は、中々、出店して貰えない様だからな」

「それはそうだろうけれど、そう言う店は俺も馴染みがないから、紹介出来る程の事はあまりないぞ?」

「店に出入り禁止にでもされているのか?」

「そうではないよ。俺も一緒には行くさ。けれど、まあ、俺が立ち寄る事で店側に気を遣わせるのも悪いし」

「気を遣われてもバルなら気にしないかと思った」

「そんな事、ないだろう?」

「いや、昔のバルなら店に入ったら、スイーツの事しか頭になくて、店員の表情とか気にしなかったからな」

「それ、小さい頃の話じゃないか」

「そうだったか?まあ、そうかもな」

「バル叔父さん。ガス叔父さんも来た時の為に、コードナ領にはないスイーツ店を中心に、連れて行ってよ」

「そうだな、そうするか」

「ああ、そうしよう」

「父上?回りきらなかったら、俺は王都に残って良いよね?」

「そんな事したら、帰ってからリザが怖いんじゃないか?」

「リザには何かお土産を買っていくから大丈夫。ミリ姉上、手伝ってよ」

「流行っているお店は教えられるけれど、私はリザさんの好みを知らないから、ジゴが自分で選んでね」


 ミリは二つ年下のリザが苦手だった。バルの次兄ガスの妻の姪で、会った事はあるけれど、その時にあまり良い印象が残っていない。

 サニン王子の交流会の時も、リザが参加しないと聞いた時に、ミリはホッとしていた。


「え~?俺、女の好きな物なんて、分かんないんだけど?」

「ジゴのお土産なんだから、ジゴが選ばなければダメよ。私が選んだら、リザさんも納得しないだろうし」

「だけど良い物選ばないとリザは納得しないよ?今回だって王都に来たがって大変だったんだから」

「そうなのか?」

「大変なのはガスだったけどな」


 ジゴの言葉へのバルの質問に、ラゴが応えた。


「サニン殿下の交流会にもリザは出たがったのだけれど、まだ一人で王都には来られないだろう?」

「一人じゃなくて、ジゴと一緒だったのではないか?」

「バル叔父さん。俺はイヤだよ。リザの面倒を見させられるなんて」

「まあ、リザが来るとなれば、ガスが付いて来る事になったろうな。リグがまだ旅をさせられないから、サナレも領地に残る必要があるし」

「そうすれば良かったじゃないか?」

「他の子はみんな一人で来てるのに、俺だけガス叔父さんと一緒に来るなんて、恥ずかしいよ」

「ガス兄上はリザの付き添いって事にしたら良かったじゃないか?実際にもそうなのだし」

「リズもジゴと同じ様に、一人で来たがっていたからな。もしガスが同行するなら、ガスはジゴの付き添いって事にされていたと思うぞ」

「そうなんだよ、バル叔父さん」


 いつまでも話しが続きそうなので、ミリは口を挟む。


「あの、わたくしは曾お祖母様に会いに行ってもよろしいですか?」

「ああ良いよ、ミリ」

「おう。ミリはこれから授業だったか」

「え?ミリ姉上?結局、リザへのお土産は?」

「ジゴ。ミリは忙しいから、自分で探せ。店には俺が案内してやるから」

「もしかしたらミリは、ピナ様の葬儀の手伝いがあるのか?」

「いいえ、ラゴ伯父様。ピナお養祖母(ばあ)様の葬儀に付いては、手伝いと言う程の事はしておりません」

「しかしな、ラゴ兄上。ピナ様が亡くなって、チリン様が気落ちなさっているんだ」

「チリン様が?」

「ああ。チリン様もピナ様の弟子の様なものだったらしくて、とても懐いていらっしゃったからな」

「そうだったのか。俺らからみるとピナ様は怖いばかりの存在だったけれどな」

「そうだな」


 ラゴの意見にバルが同意した事に、ミリは少なからぬショックを受けた。

 そのミリの様子を見てバルは苦笑し、ミリの頭を撫でる。


「お母様と結婚する前の話だよ。お母様と私が結婚出来たのは、ピナ様のお陰もある。私もお母様もとても感謝していたさ」

「はい。そう思っていました」


 バルはホッとした表情のミリの頭をポンポンと、優しく叩いた。


「そんな訳でラゴ兄上、ジゴ。ミリは今日これからも用事があるのさ」

「そうか。分かったよ。ミリ?」

「はい、ラゴ伯父様」

「俺達が領地に帰るまでに、昼だか夜だかに、身内だけの食事会を開こうと思っているのだけれど、それには参加して貰えるかな?」

「はい。是非、参加させて下さい」

「ああ。日時の調整はバルとすれば良いか?」

「ああ、ラゴ兄上。ミリの予定は把握しているし、俺の方がミリより捕まえ易いだろうから」

「分かった。じゃあ食事会に付いてはそれで、バル、ミリ、頼むな」

「ああ」

「はい、ラゴ伯父様」


 そしてミリはその場から解放され、男三人はその場でスイーツ談義を始めた。



 ミリが部屋を訪ねると、バルの祖母デドラはまだ眠っていた。

 使用人の話では、昨夜はラゴ達と遅くまで話をしていたので、寝付く時間もかなり遅かったとの事だった。


 デドラは朝日が明るく当たるベッドの上で、横になって目を閉じていた。

 ミリはデドラの顔に手を翳し、呼吸を確かめる。

 そしてホッと肩の力を抜いて、そのまま静かに寝室を出た。


 ミリが生前のデドラを見たのは、その時が最後であった。

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