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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ルモの帰宅

「ただいま」

「お帰り!兄さん!」

「兄さん!お帰んなさい!」


 ルモが久し振りに実家に帰ると、待ち構えていたデシとセチが抱き付いて来た。


「兄さん、お土産は?」

「あ~、悪い。また今度な」

「え~?楽しみにしてたのに」

「デシったらね、兄さんなに持って来てくれるかなって、朝からうるさかったんだよ?」

「セチだって楽しみだって言ってたじゃないか?」

「兄さんが帰って来るのが楽しみだっただけだもん」

「じゃあお土産は俺が全部貰うからな?」

「じゃあ兄さんはあたしが貰う」

「はあ?ふざけんなよ」

「ふざけてないよ」

「ほらほら、いい加減にしな。ルモは疲れてんだからぶら下がらない」


 奥から出て来たマイがそう言って、ぶら下がる様にルモの腕を引っ張っていたデシとセチを引き剥がした。


「お帰り、ルモ」

「はい。ただいま、母さん」

「ご飯すぐ出来るから。食べて来なかったろう?」

「ええ」

「ほら、お前達は食器出すの手伝って」

「うん。あたし、兄さんの食器出す」

「あ、待て。俺が出すんだから」

「セチとデシがケンカするなら、俺が自分で出すよ」

「そうだね。ルモ、自分で出しておくれ」

「え?母さん?あたしが出したい」

「あ~分かったよ。その代わり明日は俺が兄さんの食器を出すからな?」

「うん。仕方ないから譲って上げる」

「仕方ないのはセチだろう?」


 デシがセチを小突こうとするのを遮って、ルモはデシの頭を撫でる。


「俺は腹減ってるから、さっさと食事にしようぜ」


 デシはルモを見上げて、仕方ないと言う様に肩を竦めた。



 ダイニングに入ると、ガロンが鍋を運んで来た。


「おう、お帰り」

「はい。ただいま、父さん。スープ?俺が配るよ」

「そうか。じゃあ、俺と母さんのを頼む」

「兄さん、あたしのも」

「え?セチはいつも自分でやりたがるじゃないか?」

「だってデシにやらせると、変なもんばっか入れんだもの」

「セチ。変なもんなんて材料に使ってないわよ」

「母さんはそうだけど、たまに父さんが変なの入れてるじゃない?」

「そうだよな?変な苦いのとか、変な酸っぱいのとか」

「あれは俺が自分用に入れてんだ。それをデシが掬っちゃうんだろう?」

「それならスープやシチューとかに入れないで、父さんの皿だけに入れれば良いじゃないか」

「お前達の体に良い成分がスープに染み込むんだよ。その残りを俺が食べてちょうど良いんだ」

「分かった?デシは気付いてるんだから、あたしの皿じゃなくて父さんの皿に入れて」

「わざとじゃないだろう?」

「あんなに入ってるんだから、わざとに決まってるじゃない」

「どっちでも良いから、ほら席に着きな」

「母さん、どっちでも良くない」

「セチ。今度入ってたら、俺の皿に入れて良いから」

「だって、食べてみるまで変かどうか分かんないし」

「変だったら出して良い」

「お行儀、悪いもん」

「外では入ってないから、ウチでやるだけなら良い」

「またガロンは、子供に甘いんだから」

「そう言うなよ、マイ。子供が甘えて来るのなんて、わずかな期間じゃないか」

「それは、そうだけど・・・」


 マイとガロンが変な雰囲気に変わったので、デシとセチは口を閉じた。

 そこにルモが声を出す。


「さあ、スープを配ったから食べよう。何が入っているのか俺は知らないから、当たったら俺に感謝して、外れたら父さんを恨んでくれ」

「え?どっちが当たり?」

「入ってる方?入ってない方?」

「それは当たってからのお楽しみ」


 結局セチが大当たりしたけれど、ルモの前で口から出すのは絶対にイヤだと、頑張って飲み込んだ。



 夜。

 ガロンが一人で酒を飲んでいるダイニングに、ルモが入って来た。


「父さん一人?母さんは?」

「寝たんじゃないか?セチを寝かせる積もりで、一緒に寝てしまったと思う」

「いつもこんなに早いの?」

「いや。ここん所、良く眠れてなかったから」


 今日はルモの顔を見てマイは安心したのかも、とガロンは思ったけれど、口にはしなかった。


「セチは母さんと寝てるの?前は俺とデシと三人で寝てたのに」

「いつもはデシと二人で寝てるよ。今日はなんだろな?ルモと一緒に寝たがるかと思ってたんだけど」

「俺もそう思ってた」

「もしかしたら母さんがルモばかり構うから、ヤキモチを焼いたのかもな」

「え?俺に?」

「ああ」

「う~ん。父さんも母さんも、セチに甘すぎるんじゃない?俺やデシにもだけど」

「そうか?」

「いや、まあ。良いんだけどね。感謝してるし」

「・・・ルモも飲むか?」

「そうだね。明日も早いから、少しだけ」

「ああ」


 ルモが食器棚から出したカップに、ガロンが酒を注ぐ。


「忙しい所、帰って来させて悪かったな」

「いいえ。俺の方こそ、連絡貰ってから何日も経って、遅くなってごめん」

「いや。もしかして聞いてるかも知れないが、コードナ侯爵様の御三男のバル様から、バル様の邸で勤める様にと命令が来た」

「命令?お願いって言うか、問合せって聞いたけど?」

「貴族からのお願いなんて、命令と一緒だ」

「そんな事もないけれど、それで?バル様の邸に行くの?皆で?」

「いや。断る積もりだ。歳を理由にすれば、何とかなるだろう」

「歳って、父さんに護衛を頼むって言われたの?」

「ああ。母さんにメイドをやって欲しいって話の方がメインだけどな。序でに俺も護衛に復帰させるそうだ」

「断るってもしかして、俺の所為で?」


 ガロンは目を眇めてルモを見て、カップを傾け「違うよ」と言うと、酒を口に入れた。

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