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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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四つ目の村、街道交差の町

 四つ目の村は三つ目の村よりは規模は大きいけれど、ミリは同じ様なイメージを感じていた。

 村人達はミリ達一行(いっこう)が隊商だと知るととても歓迎して、喜んで商品を買い求めた。

 村長の愚痴や自虐に付いては三つ目の村よりねっとりとしていて、ミリもねっとりと捕まって中々離れる事が出来なかった。


 四つ目の村にも宿を兼業する食堂があった。領都から馬車か騎馬で来るならこの四つ目の村で泊まる筈だから、食堂兼宿屋もこれまでの村より規模が大きい。

 しかしこちらは、しばらく前から閉められていた。四つ目の村の品不足は、ここまでの村より深刻で、食堂の主人も自分達で食べる物さえ事欠いていた。

 その食堂主人は何も(もてな)せないけれど、食堂宿屋を宿として勝手に利用しても良いと、ミリに許可を渡した。村長も宿に泊まる事をミリ達に勧める。

 しかしミリは野営を選んだ。護衛達から警護の不安を指摘されたからだ。


 護衛達の頭には、宿に火を着けられる可能性が浮かんでいた。食堂や宿屋として営業していれば安全なのかと言えば、もちろんその様な事はない。しかしもしミリ達一行が運んでいる残りの商品を奪う事を考えたのなら、食堂宿屋が既に使われなくなっている事は、食堂宿屋の建物を罠に使うハードルを下げるだろう。

 普段なら護衛達もここまで疑わないのだろうけれど、二つ目の村の盗賊に襲われた事で、より慎重になっていた。


 それならせめてと村長に、ミリが村長宅に泊まる事を提案されたが、護衛達に反対されるまでもなく、ミリはその誘いを丁寧に、ただし強く断った。


 ミリ達は二つ目の村の時と同じ様に、四つ目の村の先に野営出来る場所を探し、そこで夜を明かす事にする。


 その夜、襲撃はなかった。



 街道を更に先に進むと、別の街道と交わる場所に、大き目の町がある筈だった。

 ミリ達が進んでいるハクマーバ伯爵領の領都から延びる街道と交わるのは、領都を囲む様に円状にハクマーバ伯爵領を一周している街道だ。その円状の街道はハクマーバ伯爵領のあちらこちらで他の街道と交差している。そして以前はソウサ商会が行商に使っていた道だ。

 ミリ達が領都に寄らずに洪水の被災地に向かったのなら、使うのはそちらの円状街道になる筈だった。


 町に近付くにつれ、ミリ達が通る村々の品不足は少なくなっていく。一番品不足が酷かったのは四つ目の村で、そこから町に近付くにつれて、品不足は解消していった。

 それは商人が円状の街道から、町に商品を運び込んでいるからだ。近くの村の村人達は、町まで商品を買い求めに来ていた。町に買いに行ける村にもまた、近隣の村から買いに来る。

 そしてそこで売り買いされる商品の出所を遡ると、それらはハクマーバ伯爵領の最寄りのソウサ商会の倉庫支店で販売された物だった。


 つまり町周辺の村々に流通している物と、ミリ達一行が運んで来た商品には同じ物がある。

 それなのに村では、ミリ達の運んで来た商品が売れて行く。数が足りていて、不足している訳ではない品物に関してもだ。

 その原因はひとえに価格にあった。村人が手に入れるのが同じ商品でも、ミリ達一行の隊商の売値の方が安いのだ。


 行商人は普通は仕入れ価格に、売る場所までの輸送費等の経費と利益を上乗せして、販売価格の目安にする。

 もちろん売れ行きが良いなら予定より値段を上げる事もあるし、売れないなら持って帰るよりはマシなので赤字になっても値を下げる事もある。

 そして町に来ている商人達は皆、町で売るのに当たって、かなりの利益を乗せていた。

 その上今は、洪水被害対応の為とその影響で町に人が集まって、品物への需要が高まっていた。その為、町で売られる商品の値段も徐々に更に高くなっていて、当然町から村に持ち込まれる商品価格も高くなっていた。


 一方ミリはどの場所でも一律に同じ値段で売っていた。それは想定した輸送費を均等割にしている為だ。またそれなので、予め値段表を作る事が出来ている。

 もちろんミリも利益は出す様に計算はしているけれど、護衛や馭者の人件費などの諸々費用が回収出来れば良いだけなので、他の商人に比べたらリーズナブルだ。

 その上、曾祖母フェリに内緒で祖父ダン達が、身内割引で商品をミリに卸している。ちなみに身内割引でもソウサ商会は、もちろんしっかりと利益を取っていた。


 町の傍なのでたとえ値段が高くなっていても、村でも商品は手に入れられる。しかし、領都からの街道を使って定期的に来ていた隊商は、村に来なくなっている。

 その為ミリ達が運んで来た商品は、取っておいても劣化や腐敗をしない様な物から、次々と売り切れていった。


 ミリ達が町に着いた時には、商品はほとんど残っていなかった。



 町はとても活気があって賑わっていた。

 ミリ達が町に着いたのは夕方近くではあったのだけれど、まだまだ日は高く、町も明るかった。

 その明るい町には、肌をかなり見せる服装をして嬌声を上げる女性と、その肩や腰を抱く男性が目立つ。よく見ると町の通りの端には、酔い潰れたと見える男性が、座り込んだり寝そべっていたりする。


 ミリは、以前はハクマーバ伯爵領に行商に来ていてこの町にも詳しいと言っていた、ソウサ商会所属の馭者を振り返る。

 その馭者も馬車を進めながら、町の様子に驚いている様に見えた。

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