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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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盗賊達の引き渡し

 一つ目の村に戻ると、ミリ達一行に気付いた村長孫がまた出て来た。


「お前()!良く顔が出せたな!反省したとしても、もう遅いぞ!世の中には許される事と許されない事があるんだ!」


 村長孫は一行に荒げた声を掛けて来たけれど、しかし今度は護衛達が槍で牽制しているので、ミリには近寄れなかった。

 そして荷車に乗せられた盗賊達に気付くと、村長孫も他の村人達も騒ぎだす。


「え?なんだあれ?」

「村人か?」

「確かに服装を見ると村人っぽいけど、誰だあれ?」

「おい!お前達!そいつ()は誰だ!」


 護衛達が調書の写しを村人達に配る。それを読んで、村長孫も村人達も言葉を失った。


 静まって視線だけ向けてくる村人達の間を通って、そのままミリ達は一つ目の村を通り過ぎた。

 その時にも老使用人は歩くより遅く走っていたが、ミリ達迄にはまだまだ距離があって、追い付く事はなかった。



 ハクマーバ領都に戻り、ミリ達は領主館を訪れた。

 そこで事情を伝えて盗賊達の引き取りを依頼すると、刑務部に連れて行く様にと言われる。

 場所を聞いて刑務部を訪ね、ミリは盗賊達を自供調書と経緯説明状と共に引き渡した。



 刑務部で盗賊達を引き取った刑務官達が愚痴を零す。


「なんで盗賊なんかわざわざ連れて()んだよ」

「その場で殺せば良いのにな」

「そうだよな?わざわざ生かしておく意味、ないだろう?」

「それになんだろうな、この書類。調書だって言うけど」

「行商人の荷物を盗もうとしたんだろう?それで全てじゃないか。わざわざ犯罪者の言い訳を聞いてやる意味、あるのか?」

「知らんよ。上が判断するんだろう?」

「あいつら収監するのだって金かかるのに。処刑するのにわざわざ飯を食わせてやる必要ないよな?」

「その意見には同意するけど、食事を出さないのは規定違反になるからな?」

「分かってるよ。でも必要あるかないかなら、ないだろう?」

「まあ、直ぐに処刑するんじゃないの?」

「そうだよな。洪水の対応で、領地の財政にかなりの影響があるって言うんだから、こんな犯罪者達に構ってらんないよな」

「洪水対策に金を回して貰わないと、この後、金に困って犯罪を犯すヤツらが増えるしな」

「ああ。増える。絶対増えるし、凄く増えるよな」

「そうしたらまた、拘置所が溢れんだろうな」

「犯罪者なんて、片っ端から処刑しちゃえば良いんだよ。更生するヤツなんてほとんどいないんだから」

「更生しても、他の土地に行っちゃうだろうしな」

「そりゃそうさ。事件を知ってたり被害にあった人達にしてみれば、ずっと疑い続けるんだから。疑われ続けたら、更生してても生き辛いだろうさ」

「更生してないヤツらの方は、そんなの気にしないんだろうけどな」


 そこに刑務隊長が来た。


「今日運ばれて来た盗賊達の、処刑の指示が()りた」

「お?早かったですね?」

「まあ、(とど)めておく必要が、ないだろう?」

「それはもちろん」

「結構人数がいますけれど、今日、全員ですか?」

「ああ、全員だ」

「ですよね」

「これから全員はしんどいですね」

「胸を刺す許可も下りた」

「あ、一人一人ではなく、次々と刺して、最後に全員が死んでれば良いんですね?」

「ああ。それで良い」

「了解しました」

「じゃあ早速、取り掛かるとしますか」

「これが処刑許可書だ。手が必要なら、適当に集めて執行してくれ」

「了解しました」

「手が空いてそうなヤツに、声を掛けてみます」

「最後に全員死んでる事だけは確認しろよ?死亡時刻は一緒で良いから」

「了解です」

「分かりました」


 上司が出て行くのと一緒に、刑務官達も控室を出た。



 ミリはハクマーバ領都に残していた連絡員と合流して、状況の共有をした。

 ハクマーバ伯爵からは連絡がまだないとの回答を受けて、ミリは別の連絡員にハクマーバ伯爵領最寄りのソウサ商会倉庫支店への連絡を頼む。その内容は、商品と馬車の追加手配だった。

 それと共に、コードナ侯爵に宛てて、ハクマーバ伯爵領で盗賊に遭った事と全員を捕まえた事、そしてハクマーバ伯爵に引き渡した事を(したた)めた手紙の配達を依頼した。バルとラーラとパノにも手紙を書いたけれど、そちらにはミリが怪我などは一切しておらず、無事である点を特に強調しておいた。



 ミリ達一行は領都に一泊し、翌朝また被災地に向けて出発した。



 一つ目の村の手前で擦れ違ったのは、二つ目の村から来た徒歩の集団だ。

 その村人達は当然ミリ達に気付く。

 そして村人達がミリ達を囲んで盗賊達がどうなったのか訊いて来たので、護衛の一人が代表して領主館の指示で刑務部に引き渡した事を伝えた。

 村人達は、子供は大人が抱き抱えるなり荷物を代わりに持つなりして、その場から足を早めて領都に向かい、ミリ達はこれまでのペースで一つ目の村を目指す。



 一つ目の村に着くと、村人達も村長孫も老使用人も遠巻きに様子を窺うだけで、ミリ達一行には近付いて来なかった。

 ミリ達は休憩を先日と同じく一つ目の村の先で取る事にしていたので、そのまま一つ目の村を通り過ぎた。



 二つ目の村では、途中で擦れ違った村人達と同じ様に盗賊達の事を尋ねられたので、同じ様に護衛の一人が同じ答を返す。

 村人達は村長の扱いをミリに報告しようともしていたけれど、ミリ達一行は立ち止まる事もなく、二つ目の村も通り過ぎた。

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