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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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二つ目の村の村長と村人達

 馬車を何台も繋げて、その最後尾に荷車を繋げる。

 その荷車には盗賊達を乗せた。


 盗賊達は両手首が腰の位置で縛られて、縛られた両足首とも結ばれている。その状態で荷車に乗せられているので、図らずも正座と言う苦行を()いられる事になっていた。

 その上、口には布を詰められた上で猿轡を噛まされ、呻き声もあまり立てられない様にされている。そして耳にも布を詰められた。これで盗賊同士を会話出来なくさせている。更に頭から袋を被せて首で結んでいるので、盗賊同士が合図を遣り取りする事も出来ない。

 声は出せない様にしているけれど、中には泣いている盗賊もいる事がミリにも分かった。捕まって泣くくらいなら盗賊なんてしなければ良い、とミリは思ったけれど、泣かなくても盗賊なんてやらない方が良いか、と思い直した。



 二つ目の村の入り口には、人(だか)りがしてる。

 その様子に護衛達は槍を構え、警戒をした。


 人集りから盗賊達に、「あなた!」や「父ちゃん!」や恐らく盗賊の名を呼ぶ声が掛かる。

 耳栓をしていながらも家族の声が聞こえたのか、身(じろ)ぎしてむうむう唸る盗賊もいた。


 村人達が近付かない様に護衛達が槍で牽制しながら進むと、ミリ達一行の前にこの村の村長が立ち塞がる。


「お前達!よくぞ盗賊を捕まえた!」


 村長が目を見開いて、笑みを作って、ミリ達にそう言った。


「後はワシが引き受けよう!さあ!悪人共を渡すのだ!」


 ミリが馬を進ませ、村長の前に立つ。


「盗賊の処罰はハクマーバ閣下にお任せします」

「え?あ、そうか。分かった。悪人共はワシから領主様に引き渡そう」

「いいえ。私はこのまま、盗賊を領主館に運びます」

「はあ?なぜだ?お前達は先を急いでいるのだろう?構わないから悪人共を置いて行け。領都にはワシが連れて行ってやる」

「盗賊は村長の指示で私達を襲ったと言っています」

「な?何をバカな!」


 ミリの合図で護衛達が「字が読める者はいるか?」と声を掛けながら、盗賊達から取った調書の写しを数枚、村人達に配った。


「複数の盗賊から、村長の指示だったとの供述が取れています」

「ウソだ!」

「嘘か本当かは私には分かりかねますので、判断をハクマーバ閣下に委ねる事にします」

「あ!いや!待て!ワシではない!本当だ!」

「証言だけで証拠もないですし、私には村長が黒幕かどうかは分かりません」

「もちろんだ!そいつらが勝手にやった事だ!」

「「「村長!」」」


 その村長の発言に、村人達が村長に詰め寄る。


「皆さん」


 ミリの声に村人達が振り向いた。


「盗賊からは村長の指示だとの供述がありましたが、それが本当かどうかはハクマーバ閣下に判断して頂きます。もしかしたら村長を陥れる本当の黒幕がいるのかも知れませんが、私にはその判断が出来ません。それらもハクマーバ閣下に判断して頂きましょう」


 事情を知っている村人がいても、村長が本当の黒幕だとは言い出せなかった。


「村長が盗賊と無関係の場合、本当の黒幕に村長が襲われるかも知れません。万が一村長が亡くなれば、事件の真相は分からなくなり、盗賊達に全ての罪が着せられるかも知れません」


 村人の中から「そんな」「どうして」と声が上がる。


「ですから村長がそんな被害に遭わない様に、ハクマーバ閣下より沙汰があるまで、皆さんで監視をする事を勧めます」


 ミリの言葉に「監視か」「そうだな」と賛同の声が聞こえた。それに対して村長が慌てる。


「それは不要だ!ワシを恨む者などいない!ワシを監視しなくても大丈夫だ!」


 その声に村長に視線が集まるが、村人達は同意を示す動きも言葉も示さなかった。

 狙った通りに、村長が逃げ(にく)く出来た事を感じたミリは、一行に指示を出して馬を進めた。

 その動きにミリを振り返った村人達が、再び声を上げる。


「待ってくれ!」

「待って!」

「代わりに俺を連れてってくれ!」

「待ってちょうだい!」

「息子の代わりにバツを受けるから!」

「私を連れてって下さい!」

「俺を連れてってくれ!」


 村人に取り囲まれてミリは馬を停める。


「代わりに誰かに罰を受けさせるかどうかも、私には決められません。それはハクマーバ閣下に申し出て下さい」


 ミリがそう言えば村人達は静かになったが、ミリがまた馬を進めようとすると、村人がまたミリに訴えた。


「それなら一緒に連れてってくれ!」

「私も!私も連れてって!」

「俺もだ!俺も一緒に行く!」

「そうすると村長の護りはどうするのですか?」

「村長、村長も連れて行く!」

「そうだ!村長も連れて行こう!」

「いや!ワシは行かん!ワシが村から離れる訳にはいかん!」

「いや!村長も!」

「そうだ!村長も!」

「どちらにしても私達の移動は馬です。馬でなければ同行は出来ません。追い付いて来れたなら、領主館には一緒に行きましょう」

「待っててくれないのか?!」

「私の一番の目的は、洪水被害者の救援です。歩きに合わせていたら、少なくとも一日は余計に日数が掛かる。本来なら盗賊は殺して先に進むべきですが、村長が陰謀に巻き込まれているかも知れない為、ハクマーバ閣下に報告して、盗賊を尋問して頂くのです。私はそれ以上の遅れを受け容れる事はできません」


 そう言うとミリは一行に合図して商隊を進めさせ、二つ目の村を(あと)にした。

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