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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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話し合いの終わり

「そう言えばミリの誕生日、どうするんだ?」


 ラーラの三兄ヤールがバルとラーラに向けて尋ね、バルが答える。


「普通に祝う積もりですけれど?」

「それなら行商や視察もその日は外すんだな?」

「なるほど、そうですね」

「まあ、誕生日が済んでから計画を練っても良いしな」


 ミリが「あの」と口を挟む。


「私はハクマーバ伯爵領への行商は、なるべく早く行きたいのですけれど」

「え?ミリ?なるべく早くって、誕生日よりも前にかい?」

「はい、お父様」

「いや、だって、準備とかはどうするのだい?」

「復興資材の用意は契約が出来た後で良いので、行く時は食料やクスリをソウサ商会から仕入れるだけですから、準備はすぐに済みます」

「あ、うん。でも、心の準備とかも必要だろう?」

「特には要りませんけれど?」

「心の準備が要るのは、バルとラーラの方だよな」


 ヤールの言葉にバルとラーラは言い返したいけれど、二人とも反論出来ない。

 その様子を見てミリは、バルとラーラに笑顔を向けた。


「では、私の準備が整っている事をお父様とお母様に納得して頂いてから、行商に出発する事にします。それまではいつでも出られる様に、待機しておきますね?」


 そう言われたら、バルもラーラも肯くしかなかった。


 パノの弟嫁チリンが「でも」と言葉を挟む。


「ミリちゃんの誕生日の前に、サニン殿下の誕生会がある筈だけれど、バルさん?ミリちゃんには本当に招待状が来ていないの?」

「はい、チリン様」

「懇親会の時には招待状が届いたのでしょう?」

「はい。我が家に届きました」

「チリンさん」

「はい、パノ義姉(ねえ)様」

「懇親会は王都で行われたから王宮が手配したけれど、誕生会は王領で行われるから事務作業のやり方も違うでしょうし、招待の対象も変わるのではない?」


 パノの指摘にチリンは「そうですね」と肯く。


「しかし私の誕生会の時には、各家の子息令嬢全員を招待しました。毎回全員の名前を暗記しているか、確認しましたので間違いありません。ましてやミリちゃんはサニン殿下と同学年ですし」

「コードナ侯爵家には招待状が届いておりましたけれど」

「そうなのですね?リルデ様?」


 バルの母リルデは「ええ」と肯いた。


「王領での開催との事で出席辞退の返事をしてしまいましたけれど、もしかしたらあれには、ミリへの招待も含まれていたのかも知れませんね」

「そうでしょうか?家名宛てで届いた招待状なら、家長が出席を求められている事になりますし、同伴したり代理で出席したりはありますけれど、普通はミリは招待の対象にならないのでは?」


 パノの言葉に、皆が小さく肯く。


「どうします?兄に尋ねてみましょうか?」


 チリンの言葉に皆が顔を見合わせるけれど、バルの父ガダ・コードナ侯爵が首を左右に振った。


「いえ。王太子殿下に伺う程の事ではありませんし、我が家としては既に辞退の返事をしてしまっています。バル、ラーラ、ミリ。それで良いか?」

「ミリ?どうだい?」

「お祖父様、お父様。もしわたくしへの招待も含まれていたとしても、それで結構です」


 ミリの返事にガダもバルもラーラも肯いた。



「では、纏めさせて頂きます」


 ラーラの父ダンが、話し合いを締める。


「バルさんとミリに関しての噂の抑制を目的として、ミリには数日の泊まり掛けで出掛けさせる事で、バルさんとラーラとミリ自身に経験を積ませる事と致しましょう」


 ダンはそこで一旦、参加者を見回した。


「ミリはハクマーバ伯爵領への行商を手始めに、コードナ侯爵領の視察と、ガロンとマイを呼び戻す事が出来たならパノ様と共にコーハナル侯爵領の視察も行います」


 ここでまたダンは、参加者を見回す。


「これらを行う内に新たな案や方策も出て来るかも知れません。その際にはまた皆様に相談させて頂くなり、この様な話し合いの場を設けさせて頂くなり、させて頂きたいと思います」


 ダンはそう言って参加者に会釈をする。


「そしてミリが望むなら、医師や助産師への見学や師事を通して、数日の泊まり込み学習も行うかも知れません。こちらについてもコーハナル侯爵家の皆様、コードナ侯爵家の皆様に、ご助力頂く事になるでしょう」


 そう言ったダンは、ミリに目配せをした。それを受けてミリは席を立つ。


「今後も様々にお力を貸して頂く事になりますが、どうかよろしくお願い致します」


 そう言って頭を下げたダンに合わせて、ミリも「よろしくお願い致します」と言って腰を折った。



 話し合いが済んで、バルの祖母デドラがミリに声を掛ける。


「忙しくなる様ですので、護身術とダンスの授業はスケジュールを調整しましょう」

「はい、曾お祖母様」

「次に来た時に、相談しましょうか?」

「分かりました。よろしくお願いします」

「我が家の授業も調整しましょうね」


 パノの祖母ピナもミリに提案する。


「はい、お養祖母(ばあ)様」

「ミリにはまだまだ教えたい事がありますけれど、優先順位を少し下げても良いでしょう。こちらも相談しましょうね?」

「はい。ありがとうございます、お養祖母様」


 ラーラの次兄ワールがミリに話し掛けた。


「ミリ。何かあれば力になるから、相談しろ」

「ありがとう、ワール伯父さん」


 それを聞いてヤールが口を挟む。


「俺には何かなくても相談して良いからな?」

「うん。ヤール伯父さんも、ありがとう」

「ミリ。ヤールは何もない時にだけにしておけ。何かある時は俺に言うんだぞ?」

「何言ってんだよ、ワール兄さん?ミリ?いつでも俺で大丈夫だからな?」

「ワールもヤールも、さっさと仕事に戻んな」


 ラーラの祖母フェリが、ワールとヤールを広間から押し出して出て行った。


 パノの母ナンテが、「ミリ?ちょっとこっちへ」と皆と離れた場所にミリを喚ぶ。


「はい、養伯母(おば)様。なんでしょうか?」

「少し確認したい事があるのだけれど、良いかしら?」


 ナンテは囁く様にミリに尋ねる。ミリは声を出さずに肯いた。


「ミリが結婚しないって言うのは、もしかしてパノの影響?パノが結婚していないのを見て、ミリも結婚する気をなくしたの?」


 ナンテは少し悲し気な表情を見せる。その顔に向けて、ミリは首を左右に小さく振った。


「いいえ、養伯母様。今後パノ姉様が結婚してもわたくしは結婚しないかも知れませんし、お父様が結婚しろと言えば、パノ姉様が結婚していなくても、わたくしは結婚します」


 そのミリの答にナンテは「そう」とだけ返して、微笑んだ。

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