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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ミリの要望

 ミリは友人話を終わらせようとして、皆に向かって要望を出した。


「わたくしは、コードナ侯爵領の視察をさせて頂きたいと思いますが、コーハナル侯爵領も視察させて頂けないでしょうか?」

「ミリ?コーハナル領には今、父しかいないけれど?」


 パノが首を傾げながら、ミリにそう確認する。


「はい。コーハナル侯爵閣下を訪ねさせて頂く積もりです。ですが出来ましたら、パノ姉様にも同行して頂きたいのですけれど、いかがでしょうか?」


 ミリの言葉にラーラ以外はもう一つの噂、パノとバルが恋人だと言う方の噂を思い浮かべた。

 パノは実家であるコーハナル侯爵邸にも泊まりに帰っていたりするが、ミリと同様で、バルとラーラの家から長期間離れた事がない。

 それなので、噂を耳にしない様にとバルとパノに守られているラーラ以外には、ミリの意図が読めたし、ミリがその噂を知っている事も察せられた。


「でもミリ?私が離れている間のラーラの事が、心配なのだけれど」

「なに言っているのよ、パノ?私は大丈夫よ?」


 ラーラが不服()に反論する。


「大丈夫じゃないでしょう?私と一緒に、ミリもいないのよ?」

「あっ・・・うん。それは、そうだけれど」


 言葉を詰まらせるラーラに、皆が「それはそうなんだな」と思う。

 ミリは要望を重ねた。


「お母様の世話なのですが、お母様の育ての親のマイさんにお願い出来ないでしょうか?」

「マイは今、夫のガロンと共に、コードナ侯爵領にいるけれど、呼び戻すのかい?」


 ラーラの父ダンの言葉に、ミリは「はい」と肯いた。


「子供を預かって育てているとの事ですけれど、一番下の子はわたくしより二歳年上だと聞きました。それですので、マイさんがずっとその子に付いていなくても、もう大丈夫なのではないでしょうか?」

「子供の世話はそうだろうけれど、一番上の子はコードナ侯爵領から離れられないのでしたよね?ガダ様?」


 ダンの問いにバルの父ガダ・コードナ侯爵は「そうだな」と肯いた。


「ルモの扱いを見直しても良いが、本人もどうしたいか」

「でもお祖父様?そのルモと言う(かた)は、既に成人なさっているのではありませんか?」


 ミリの問いにもガダは「そうだな」と返す。


「そうか。ルモももう、成人だったか」

「はい。それですのでルモと言う方は、一人でコードナ侯爵領に残って頂いても大丈夫なのではないでしょうか?」

「そうだな」


 肯くガダに肯き返して、ミリはダンを向いた。


「お祖父ちゃん。マイさんとガロンさんはソウサ商会の所属なのよね?」

「今はそうだよ」

「お二人にはウチに、コードナ家に勤めて貰う事って出来る?」

「まあ、二人が納得するならね。でもガロンもかい?」

「うん。ガロンさんにはお母様の護衛をして頂くの。昔もそうだったのでしょう?」

「そうだけれど、ガロンももう()い歳だよ?」

「でも絶対にお母様を守って下さるのではない?」

「う~ん、行商での護衛は続けていたけれど、貴族女性の護衛はまた違うだろうけれどね」

「でも、ガロンさんとマイさんが良いと言えば良いのよね?」

「そうだね。二人が請けるなら、コードナ家に勤めるのはソウサ商会としては構わないよ」

「うん。ありがとう、お祖父ちゃん。コードナ侯爵領に行った時に、お二人に相談してみる」

「なるほど。コードナ侯爵領の視察中に二人を勧誘して王都に連れ帰って、それからパノ様と一緒にコーハナル侯爵領の視察に向かうのか」

「うん。皆様?その様な進め方でよろしいでしょうか?お父様もお母様も?」

「ミリ?ここで決めないで、もう少し相談しない?」


 そう応えたラーラにミリは首を左右に小さく振る。


「いいえ、お母様。時期ですとか期間ですとかは追って相談しますし、ガロンさんとマイさんにも事前に連絡は取って置きます。ですけれど、方針はここで決めておきたいと思います」


 ラーラは不安を感じていたけれど、何がどうとは説明出来なくて、ミリに断言されたら、「そう」と言って引き下がるしかなかった。



「そして行商に付いてですけれど、そちらはまず、王国北部に行きたいと思います」

「北部?ミリ。北部は今、景気が悪いよ?」

「うん」


 ダンの言葉にミリは肯いた。

 バルの祖母デドラがミリに話し掛ける。


「ミリ」

「はい、曾お祖母様」

「北部とは、ハクマーバ伯爵領ですか?」

「はい、その通りです」

「ハクマーバ?洪水があったとこだぞ?」


 ラーラの三兄ヤールの言葉に、ミリは肯く。


「うん、ヤール伯父ちゃん。復興の為の資材を買って貰おうかと思って」

「復興って、ミリ」

「領主の伯爵閣下と取引出来れば、護衛費も捻出出来るでしょう?」

「いや、まあ、その通りだろうけどね?」

「食料とかを持って行くんじゃないんかい?」


 ラーラの祖母フェリがミリに訊く。


「うん、曾お祖母ちゃん。持って行くよ。でも、ソウサ商会として行ったら広域事業者特別税を掛けられるかも知れないから、食料はミリ・コードナとして売ろうと思ってる。復興資材もね」

「そうかい」

「いや、そうかいって祖母(ばあ)さん?ソウサ商会の名前を使わないなんて、ミリが苦労するだけじゃないか?」

「うるさいよ、ヤール。それも経験だ」

「なにそんな冷たい事言ってんだよ?」

「冷たかないよ。ミリは日帰りだけど、もう行商を経験してんだ。そして利益もちゃんと出してる。もう商人なんだから、自分の考えでやり切るだろうさ」

「突き放し過ぎじゃないか」

「ヤール伯父ちゃん、そんな事ないよ。心配しないで」


 ミリが心配しないでと言っても、この場のほとんどの人間は心配だった。

 しかし長年ソウサ商会を仕切ってきたフェリがそう言うのに、異論を挟める人間は少ない。

 ダンとヤールと、ラーラの母ユーレと次兄ワールは、自分達でフォローしようと思った。


「ミリ。ソウサ商会の名を名乗らないって事は、最後までソウサ商会には頼れないからね」

「うん。分かってるよ、曾お祖母ちゃん。でも仕入れたりはソウサ商会を通させて」

「ああ。そう言う裏側は任せな」


 突き放していたフェリが「任せな」なんて言う事に、ソウサ家の面々は納得いかなかった。結局は自分達が後始末する事になりそうで、自分からフォローするのは良いけれど、フェリに面倒を押し付けられる事になりそうなのは、みんな気が進まなくて、思わず苦笑を漏らした。


 フェリとの話が途切れたところで、デドラが口を挟む。


「ミリ」

「はい、曾お祖母様」

「ミリ・コードナとして行くと言う事は、コードナ侯爵家の人間として行くと言う事ですね?」

「いいえ。わたくしにはその積もりはありませんが、そうなってしまいますか?」

「そうですね。そうと決まる訳ではありませんけれど、そうすると、バルとラーラのコードナ家のミリとして、ミリはハクマーバに行く積もりなのですね?」

「はい」


 コードナ侯爵家の面々も、コーハナル侯爵家の面々も、バルもラーラも渋い表情を浮かべる。


「ハクマーバ伯爵家の跡継ぎベギル殿の妻は、コーカデス家から嫁いだチェチェ殿である事は知っていますね?」

「はい、曾お祖母様」


 ミリがデドラを見詰める目を見て、「そうですか」と言ってデドラはミリを見詰め返した。

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