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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第一章 バルとラーラ
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24 コードナ家の人達の意向

 バルの祖父のコードナ侯爵がカップから口を離し、ラーラに向けて確認した。


「コードナ家としての意向を知りたいと言っていたが、こうやって皆を集めたソウサ殿の考えが知りたい。誰か一人でも交際を続ける事を反対したら、()める積もりなのか?」

「え?」


 コードナ侯爵の言葉に弾かれた様に、バルはラーラを見た。


「それを意図した訳では御座いません。権限をお持ちの皆様が疑問を感じられた時に、忌憚なく尋ねて頂いて、()ぐに答えさせて頂く為です。噂の元が貴族様なので、ソウサ家も早急(さっきゅう)な対応が必要になるかも知れません。その(あた)りの感触も教えて頂けたらとも思い、皆様にお時間を頂きました」

「そうか。私はこのまま、バルとソウサ殿の交際を続けても問題ないと思う」

祖父様(じいさま)

「皆はどうだ?」

「私も良いと思う」


 バルの父ガダが続ける。


「我がコードナ侯爵家をターゲットとした噂ではないだろう。そうだったらまず、バルがソウサさんに骨抜きにされて、貴族の責任を放棄しているとかの噂から始まる筈だ。バルとソウサさんが乱れた関係にあるなんて、面白がった第三者が付け足したんだろう」


 ガダの言葉にバルの祖母デドラが肯く。


「そうですね。わたくしも、交際を続けさせる事には賛成です。これが貴族家の企みなら続く攻撃があるでしょう。ソウサさんやご家族が構わないのでしたら、追加攻撃があるか噂が消えるまで、交際を続けても問題ないと思います」

「わたくしは、交際を是非続けて欲しいと思います」


 バルの母リルデは、ラーラに微笑みを向けながらそう言った。


「え?母上?本当に?」

「バルの成績が最近急に伸びています。これはソウサさんのお陰ですね?」

「え?ソウサさんがバルに勉強を教えてるのか?」

「いえいえ、違います」


 ラーラは慌てて手を左右に揺らした。


「わたくしがバル様に教えて頂いているのです」

「表面上はそうらしいですね。しかしそれがバルに取っては復習になっていて、理解が足りていなかった部分が身に付き始めている様子です。このままソウサさんに勉強を教えていれば、バルの成績はまだ上がるでしょう」

「それならソウサさんには授業料をお支払いしなければなりませんね」

「あ、いえ!わたくしの方こそ、バル様に教えて頂いて、とても助かっておりますので」

「確かにバルは騎士になるからと、剣術ばかりに時間を掛けていたな」

「騎士にも知恵や知識は必要だといくら言って聞かせても、勉強を疎かにしていたのにな」


 話題が望ましくない方に進みそうなので、バルはテーブルに手をついて腰を浮かし、皆の顔を見回しながら言った。


「つまり、俺とラーラは交際を続けて良いんだよな?」

「そうだ」

「状況が変わらない限りは、構わないな」

「あら、バルの成績の為なら、状況の方を何とかして頂戴よ」

「そうですね。ソウサ家の皆さんも問題がなければ、二人には交際を続けて頂きましょう」

「ラーラ」


 バルは冷たい視線をラーラに送る。


「交際続行で構わないよな?」

「はい。よろしく御願いします、バル様」

「ああ、もちろん」


 そう返すバルの声も、それを受けるラーラの表情も少し固かった。


「皆様も有り難う御座います」

「ただし、何かあったら()ぐに言いなさい」

「はい、侯爵様」

「それと私の事はゴバと呼びなさい。私も君をラーラと呼ばせて貰う」

「あ、え、はい。畏まりました、ゴバ様」

「わたくし達もラーラと呼んで良いですか?」

「はい、もちろんで御座います。侯爵夫人様」

「それではわたくしの事もデドラと呼びなさいね、ラーラ」

「はい。有り難う御座います、デドラ様」

「口調も崩して良いのよ、ラーラ。私はさん付けでも良いし」

「あ、いえ、リルデ様。さん付けにさせて頂くのは難しいです」

「あら、本当に?」

「ラーラはバルを呼び捨てにしてるんだろう?私もリルデも呼び捨てられるのはまだ許せないけれど、さん付けでも良いよ?」

「私達の前でもバルは呼び捨てで良いわよ」

「そうだぞラーラ。いつも通りで構わないって」


 3人に詰め寄られ、二人にも肯かれる。


「わたくしに取っても、バル様との交際は練習で御座います。皆様のお気持ちはとても有難く光栄で御座いますし、嬉しくも存じますが、わたくしの練習の為に、貴族様との接し方のままとさせては頂けないでしょうか?」


 リルデとガダは体を引いた。


「まあ、ラーラがそう考えているなら、それで良いか」

「そうね。それなら練習相手をたくさん務めるから、我が家をもっと訪れなさいね?」

「え?あ、その」

「ね?」

「はい。お心遣い、有り難う御座います」


 言葉遣いや態度は譲って貰ったのだから、訪問回数を増やすのは仕方ないとラーラは諦めた。心の中でそっと溜め息を()く。


「ラーラは真面目だよな」


 そう言いながらバルは椅子に腰を下ろした。


「バルも少しは見習うのですよ?」

「少しで良いんだね?祖母様(ばあさま)?」

「そうですね。いきなりたくさんは無理でしょう?ラーラとのお付き合いが続く限り、良い所は常に少しずつ見習いなさい」

「そうだな、バル。大切な友だと思うなら、良い影響を与え合う事だ。そしてラーラにとっても、利となる友となれ」

「ああ。分かってるよ、祖父様(じいさま)


 そう言うとバルはラーラに、少しぎこちない笑顔を向けた。


「これからもよろしくな、ラーラ」

「こちらこそよろしく御願い致します。バル様」


 ラーラもバルに笑顔を返した。

 言葉遣いこそ畏まっていたけれど、ラーラの方は普段の気取らない笑顔だった。

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