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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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結論に向けて

 パノが口を開く。


「ここまでの話を纏めると、ミリが望めばコードナ侯爵領への視察をさせると言う事で良いのですね?どうでしょう皆様?異論のある方はいませんか?」


 そう言ってパノは参加者を見回す。バルが「だが」と応えた。


「行って帰って来るだけでも、幼いミリには負担になるんじゃないか?」

「行って帰って来るだけならそうね。途中で色々と寄り道をしたり、向こうでしばらく暮らしたり、そう言う余裕を持っての旅にすれば、きっと平気よ」

「いや、だけど、そんなに長旅だと、ミリだって耐えられないだろう?これまでだって余所に泊まった事はないのだし」

「耐えられなくなったら帰って来れば良いのだから、良いじゃない」

「俺のところに帰って来るのだって、日数が掛かるじゃないか」

「ミリよ?そんな事は計算して帰って来るでしょう?何日目でこれだけ寂しいのだから、もう帰らないと我慢出来ないって言う(ふう)にね」

「いや、そうかも知れないけれど」

「ミリ?」

「はい、パノ姉様」

「日帰りなら良いけれど、数日掛かる行商は、気が乗らないのよね?」


 パノはバルとの遣り取りを切り捨てる。それに気付いて、ミリは眉根を寄せながら答えた。


「はい。いつも通りの人数の護衛を連れて行くなら、どうしても費用が厳しいので」

「フェリさん、ダンさん。その護衛費用は収支から外せないのですか?」


 フェリの質問にラーラの父ダンが小首を傾げながら応える。


「外せない事はありませんが」

「なに言ってんだい。そしたらどこから費用を工面すんのさ」


 ダンの言葉にラーラの祖母フェリが異見を出した。


「フェリさん。例えばその費用をバルが払うのはどうですか?」

「パノ様。それはミリの為になりません」

「でもソウサ商会の行商は、普通は護衛が一人なんですよね?ですから一人分はミリが費用に計上して、それ以外はバルが納得するだけ護衛を用意すれば良いのではありませんか?」

「いや、二人ですね。普通は行商を行う本人達も自衛出来ますから、ミリに付ける護衛は最低二人。ミリの出来次第では三人は、ソウサ商会でも護衛を付けます」

「曾お祖母ちゃん?私の出来次第なら一人でも良いの?」

「ダメだね。コードナ侯爵家とバル達に護身術や剣術を習ってるから、護衛は二人でも良いかも知れないって言ったんだ。ミリはまだ子供なんだから、普通は三人だ」

「でも、曾お祖母ちゃんが行商する時は、護衛は一人だったんでしょ?」

「だからなんだい?護衛を一人にケチるのは、私に勝ってからにしな」

「え?良いの?」

「なんだい?勝てる気でいるんじゃないだろうね?」

「え?だって曾お祖母ちゃん、鍛錬したりしてないじゃない」

「パノ様。ミリに付ける護衛は最低四人ですね」

「え?曾お祖母ちゃん?なんで増えてんの?」

「自分の実力を甘く読み違えてる様なヤツは、いざって時に余計に手が掛かるもんさ。ミリはその典型だろうよ」

「そんな~」


 二人の遣り取りを周囲は微笑みや苦笑いを浮かべながら見ていた。

 パノも苦笑しながらフェリに向けて肯く。


「分かりました。では皆様。護衛四人で予算を立てて、ミリが行商に行くなら、それは許可しても良いですね?警護が不安な方は、自分で費用を出して、護衛を増やすと言う事で」

「それならバルさん。ミリに護衛を付けたい者同士で相談しませんか?」

「ええ、お義父(とう)さん、そうしましょう」

「私も乗せて下さい」

「俺もです」

「俺もお願いします」

「私も加わろう」


 この場にいる男性全員が声を上げた。女性達はそれを見て苦笑する。


「なのでミリ。行商もやりたければ、出来るからね?」

「はい、パノ姉様」


 とは応えたものの、護衛四人の費用は悩みどころだとミリは思う。

 コードナ侯爵領視察より、行商の方が日数調整はし易いから、外泊日数を少しずつ伸ばすなら、行商をする方が良いのだろうけれど。


「それと、医師への師事も、住み込みは必要ではないけれど、泊まり込む事は出来るわよ?」

「え?そうなのですか?」

「ええ。リルデ様?助産師はその辺り、どうなのでしょうか?」

「出産現場に立ち会うなら、泊まり込みはあるのでしょうけれど、普段はどうかしら?日程調整は難しいかも知れませんね」

「う~ん、確かに」

「確認して置きます」

「分かりました。よろしくお願いします」


 パノがバルの母リルデに頼むのを追って、ミリも「お願いします」と頭を下げた。


「でも、姉上?」


 パノの弟スディオが口を挟む。


「ミリは今でも忙しいのではありませんか?」

「それはそうですけれど、定期授業はコーハナル家のだけになりましたし、どこに向かうにしても護衛が一緒ですから、その地で毎日の鍛錬も出来る筈よ?お祖父様達が遺した資料を読むのだって、出先に資料を持って行けば良いのだもの」


 資料を持って行くなら、移動は騎馬ではなくて馬車になっちゃうかな?とミリは考える。


「それらはそうですけれど、そうするとミリが遊ぶ時間がないのではありませんか?」


 そのスディオの言葉が脱走して空き地で遊ぶ事を指している気がして、ミリは体を強張らせた。

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