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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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ミリを出せないバルの主張

 ミリは暗い表情の皆を見回し、ミリが既に理解している事を共通認識とする為に口にした。


「つまり、父親が娘を嫁にやらないと言うのは良くある事でも、お父様が血の繋がらないわたくしを結婚もさせずに傍に置くと言うのは、今後には問題となると言う事ですよね?」

「父親が娘を嫁にやらないと言うのが、良くある訳じゃないけどな」


 ミリの伯父ヤール・ソウサがそう返す。

 話がずれてしまうのは分かったけれど、ミリは好奇心でヤールに訊いてしまった。


「そうなの?ヤール伯父さん。小説なんかだと、良く出て来るけど?」

「実際にラーラに甘々だったミリの祖父(じい)さんも、ラーラをバルの嫁さんにさせてるだろう?」

「それは知ってるけれど、その頃の情報は私の耳には入り(にく)くされてたから、お祖父ちゃんかお父様がさんざん暴れたのか、あるいはお母様の嫁ぎ先がお父様しかないからとすんなり決まったのか、どちらかなのかなくらいに思ってた」


 ミリの発言に皆、一言(ひとこと)言いたかったけれど言えない。そんな中、ヤールが応えた。


「一番暴れたのはラーラだけどな」

「な!?」

「それも知ってる」


 ラーラが反論しようとしたのをミリが遮る。

 その様子を見て苦笑しながら、パノの弟スディオ・コーハナルが話を戻してミリに尋ねた。


「ミリが今後問題になると言っているのは、今は噂はそれ程広がっていないと言う事なのかい?」


 その問いにミリは「はい」と肯く。


「さすがにわたくしがまだ幼過ぎますし、お父様がわたくしに手を出すと言う事は、現実味がありません」

「さすがに、そうだよね」

「あの、ミリちゃん?ミリちゃんは手を出すって意味、ちゃんと分かって言っているのよね?」


 スディオの妻チリン・コーハナルがミリに尋ねると、ミリはまた「はい」と肯いた。

 それに続けてミリが言った「体格差を考えても」の一言には、一同そろって苦い顔をする。

 それには気付いたけれど、ミリはそのまま言葉を続けた。


「普通でしたら考え難いですから、想像力の低い誰かが思い付きを口にする事はあっても、それを真に受けて噂を広める人がいないのだと思います」


 ミリは噂を怒っている。それなので人物想定に悪意を含めた。


「ミリはそれをどうやって調べたんだい?」

「どうって、スディオ兄様」


 ミリは少し焦った。調べてはいても、それほどの事はまだしてはいない。けれど、港町の船員コミュニケーションの存在は誤魔化したいし、脱走して空き地で遊んでいるのは絶対に秘密だ。


「どうと言いますか、どこかでたまたま耳にしただけです」

「そう?それなら広がっていないのは、ミリの想像?」

「想像と言えば想像ですけれど・・・」

「それなら、誰かが意図してその噂を広めようとしているのかどうかは、ミリは調べていないのだね?」

「それは・・・」

「それは私の方で調べている」


 歯切れの悪いミリの代わりに、バルの父ダン・コードナ侯爵がスディオに応えた。

 ミリはどうやって調べているのか訊かれると答えられなかったので、ダンの言葉にホッとする。


「誰かの意図は今のところ認められない。まあ、平民に対しては調査の漏れもあるかも知れないが。しかしこのまま放置すれば、やがては誰かに使われるだろう」

「そうですね。ミリが年頃になったら、間違いなく攻撃材料にされそうです」

「それならバルさんが、ミリちゃんの縁談を探しているって言う事にすれば良いのではないかしら?」


 チリンがそう提案する。

 それに対してバルは首を左右に振った。


「それはダメですよ、チリン様」

「え?バルさん?どうしてですか?」

「私が今ミリの縁談を探したら、私がミリを追い出そうとしたがっているとの噂が立ちます」


 バルの言葉にスディオが「そうか」と肯く。


「そうなったらその噂は今すぐにでも使われそうですね」

「ああ、スディオ。その通りだと思うんだ」


 バルもスディオに肯き返した。


「私とミリがと言う噂があると聞いて、私も色々と考えたのだけれど、もしミリの縁談を探すとしたなら、それはミリが年頃になってからではないと色々と問題が出る」

「そうですね」

「確かに、そうなりそうですね」


 スディオもチリンもバルの意見に同意した。

 バルは二人に向けて小さく肯くと、ソウサ家の人々に顔を向ける。


「フェリさん、お義父(とう)さん。ミリとの別居も同じで、今すぐに行うのは変な噂を呼んで、問題が起こると思います」

「そうかい」


 ラーラの祖母フェリ・ソウサは、興味のなさそうな平坦な口調で、あっさりとバルに返した。

 ダンは首を傾げながらバルに応える。


「う~ん、確かに、バルさんの危惧も分かるか」


 ダンがバルに同意すると、フェリが異論をバルに唱える。


「だけどバル。私はミリがこのままなのは拙いと思ってる。それと噂とどっちを取るかなんだよ。でもバルはミリの将来より噂を重要視するって事だね?」

「いや、フェリさん。そう簡単に比較している訳じゃないんですよ」

「そうかい?少なくとも私には、私が感じているミリの将来の問題がバルには明確に意識されてない様に見えるけどね」


 フェリの言葉にミリは、「少なくとも」なんて付けて含みを持たせるところが、曾お祖母ちゃんはやっぱり言いたがりぃだ、と思った。

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