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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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曾祖母の意見

 ミラとラーラとパノにフェリ。

 この四人の空間の空気はフェリが支配していた。それは狙っている訳ではなく、フェリの性格によるものだった。

 それに抗うのはラーラだ。


「ミリがやりたい事に賛成するのも反対するのも、我が家の問題よ。なんでお祖母ちゃんが口出すのよ?」


 ラーラの言葉にフェリは「何言ってんだい」と口にする。


「あんたは私の孫だし、ミリは私の曾孫だからさ」

「・・・だから?」


 続きを待ったラーラは、フェリの説明は済んだとでも言う様な表情に、カクンと力が抜けた。


「だからも何も、それで充分だろ?」

「いや、全然分かんないわよ」


 ラーラは首を左右に振りながらそう返す。


「説明は(あと)でしてやるって言ってんだろ?後にしな後に」

「説明なしに、ミリをお祖母ちゃんに預けられる訳、ないでしょう?」

「何言ってんだい。普段からソウサ商会にミリ一人で寄越してるじゃないか」

「護衛も付けてるでしょ?ミリを一人になんてしてないわよ」


 ミリはなんとなく、ソウサ商会からの脱走の話に火の粉が飛ばないかと不安を感じる。バレてはいない筈だから、余計な心配なのだけれど、ミリは少し、握った手に汗をかいた。


 パノはラーラが言葉に詰まったら、後を引き継いでフェリに話し掛ける準備をしていた。フェリもパノには丁寧に接するので、ラーラが話を繋げ直せるまで、継ぐのは出来るとパノは考えている。


「それなら今日も護衛を付けたって構わないよ」

「そう言う問題じゃないわよ」

「そう言う問題さ。ただし、ミリをどこに連れて行ったかは、護衛にも連絡させないけどね」

「何言ってんのよ。それじゃダメじゃない」

「連絡取れなくたって、あんたのとこの護衛はちゃんとミリを守んだろ?」

「だから、そう言う話じゃないでしょ?」


 ラーラは呆れを声に出した。フェリが少しずつ自分の都合の良い様に話をずらして行くけれど、ラーラはその手には乗らない積もりだ。


「行き先はソウサ商会じゃないんでしょ?」

「それは教えらんないって言ってるだろう?」

「だからそれがなんでなのよ?」

「ミリ!」


 バルがドアから顔を出すと共に、室内に向かってミリの名を叫んだ。


「なんだい?もう追い付いて来たのかい?」


 フェリがバルを一睨みして、そう呟いた。バルはその声を拾って答える。


「追い付いたじゃないですよ、フェリさん。なんてスピードですか?」

「お帰りバル。どうしたの?」


 ラーラが声を掛けると、パノもミリも「お帰り」「お帰りなさい、お父様」とバルに声を掛けた。


「ただいま、みんな。どうしたもこうしたも、フェリさんがスカートのまま馬に乗ってウチに来たんだ」

「え?スカートで?」


 パノは驚きの声を上げる。確かにフェリはスカート姿だ。

 でも、自分でもスカートで乗る事もあったラーラも、スカートでの騎馬をソウサ家で練習しているミリも、バルとパノの驚きポイントに共感出来ていなかった。


「ラーラ、あんた、バルが帰って来る迄の時間を稼ぐとは、やるようになったじゃないか」

「そんな積もりじゃないわよ。そうじゃなくて、お祖母ちゃんが何を言ってるのか本当に分からないから、確認していただけじゃない」

「そうかい。まあ、バルとラーラからミリを隠すのは一緒だから、構わないさ。ほら、ミリ、行くよ」


 ラーラの後のミリにフェリが手を差し出すと、今度はバルがその手をふせぐ。


「フェリさん?何を言ってるんですか?行かせませんよ」

「バル。あなたこそ何を言ってんだい?ミリはバルからしばらく離れなきゃダメだよ」

「お祖母ちゃん?だからそれはなんなの?」


 フェリはラーラの質問に、またあからまさに溜め息を吐いた。


「だからなんなのよ?その溜め息?」

「バルはミリに結婚をさせない、仕事もさせないって言ってんだろ?結婚をしなくても良い、仕事をしなくても良いじゃなくて?」

「それは、そうだけど」

「だからフェリさん。それは我が家の問題なので、フェリさんにあれこれ指摘される筋合いの話ではないのですよ」

「そう言うと思って今まで我慢をしてきたけどね。もう、そうはいかないんだよ、バル」

「え?どう言う事ですか?」

「これまではあなた達が、ミリの出自をミリに隠してたろう?」

「・・・それが何か?」

「ミリもバルを父親だって思ってると思ったから、これまでは口出ししなかったけど、バルが父親じゃないってバレてんなら、その限りじゃないって事だよ」

「曾お祖母ちゃん?確かにお父様とは血が繋がってないけど、お父様は私のお父さんなんだよ?」

「それは関係ないね」

「え?曾お祖母ちゃん?」

「関係ないって、そんな、フェリさん?」

「関係ない訳、ないでしょう?お祖母ちゃん?」

「戸籍上、バルがミリの父親なのは知ってるよ。でも、血は繋がってないんだ。バルにはミリの将来に口出しする権利なんて、ないさ」


 フェリのその断言に、バルもラーラもミリも言葉を失った。

 パノは自分の出番だと思ったけれど、なんて口を挟めば良いのか、直ぐには思い付かなかった。フェリの出したこの話題に対して準備していなかったのもあるけれど、予め準備していたとしてもパノには答を用意出来ていた自信は無かった。

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