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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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その当時の事

「ミリ?私に取っては女性はお母様だけだよ?」

「はい。それは先程聞きましたし、私もそれは信じています」

「では、何が?何が、そうでしょうか、なんだい?」


 バルに質問されてしまった事に付いて、ミリは少し失敗したと思った。話がずれてしまいそうだ。

 取り敢えず、バルをはぐらかせながら、先を目指す。


「お母様の気持ちの方です」

「お母様の気持ち?」

「ええ、お父様。それについてですけれど、お母様?」

「え?ええ」

「お母様はお父様との結婚をごねましたよね?」

「ごねてなんていないわ」

「お母様がごねたと、先程お父様も認めていらっしゃっていましたし、別ルートでもその様な話は良く聞きます」

「え?良く聞くって誰から?」

「誰とは限りませんけれど、それは問題ではありません。お母様はお父様との結婚を拒否していませんでしたか?」

「拒否って言うか、拒否じゃなくて、私にはお父様と結婚する資格がないと思ったから」

「でも結婚をしましたよね?」

「ええ。この通りね」

「資格うんぬんは、その当時、お母様がお父様を信じられなかったからではありませんか?」

「信じられないなんて、そんな訳、無いでしょう?」

「結婚前からお父様は特別だったのですよね?」

「もちろんよ」

「それならあるいは、ご自分に自信が無かったからでしょうか?」

「自信なんて有るわけ無いでしょう?」

「その話を教えて下さい。なぜ自信がなかったのですか?」

「だって、私は平民だし、体は汚されていたし」

「誘拐前はどうだったのですか?誘拐前も自信がなかったのですか?」

「それはそうよ。お父様には好きな方がいらっしゃったし」

「俺はラーラを好きになっていたって言ったろう?」


 バルの発言にミリはうんうんと肯いた。


「つまり、勘違いだったのですよね?」

「勘違いって、だって」

「ミリ?私がお母様と交際を始める時には、私に好きな少女がいる前提だったんだ」

「知っています。ですがお父様はお母様を好きになって、始めて女性を好きになる事を理解したと仰っていましたよね?」

「ああ。その通りだよ」

「つまり、お父様がその少女を好きだったと言うのは、勘違いと言う事ですよね?」

「え?勘違いって私の方かい?」

「はい。先ずはお父様の方です。そしてそれを信じたお母様も勘違いしていた訳ですよね?」

「そう言う風に言われれば、そうだけれど」


 ミリはもう一度うんうんと肯く。


「それで、お母様が勘違いをしていた頃、お父様はお母様を好きだと気付いてから、積極的にお母様にアプローチをしたと聞いています」

「・・・そんな事も知っているのか」

「はい。それなのにお母様は全然、気付かなかったのですよね?」

「だって」

「それはその頃にはまだ、お父様を好きでは無かったからですか?」

「いいえ、違うわ。お父様を好きになったのはもっと前だもの」

「本当かい?」

「そうなのですね。お父様より先にお母様が好きになったのですか?」

「ええ、多分」

「いや、そんな事は無いよ。私の方が先にお母様を好きになった筈だ」

「そんな訳、無いでしょう?私はバルが草原に連れて行ってくれた時には既に、バルを好きだったわよ?」

「え?俺の前で寝っ転がろうとしていたのに?意識している男の前でそんな事する?」

「だから、しなかったでしょう?それは私の方が先にバルを好きになっていたからよ」

「俺も草原の時には既に、ラーラに好意を寄せていたよ。そうでなければあの草原に、一緒に行こうなんて思わないさ」


 今は思い出を上書き出来てはいるけれど、その草原は、バルがリリ・コーカデスに初めて振られた場所だった。


「私は観劇の時にはもう、かなりの好意をバルに抱いていたわよ?そうでなければあんなに解説したりはしていないわ」

「あの解説はラーラの趣味じゃなかったのか?」

「そうだけれど、かなり心を許してないと、あんな風にはしゃべらないし、あんなに楽しまないわよ」

「それは俺もだな。ラーラに好意を感じてなければ、いくら姉上に勧められたからって、劇場には行かなかったかもしれない」

「バルは劇中は私と喋らなくても済むって言っていたじゃない」

「それを正直に話したのは、隠して置けないくらいにラーラに好意があったからだよ。それに緊張するから話せないかもと思ったのだって、既にラーラに気があったからさ」

「そうかしら?」

「初めてのデートの港町でだって、俺はラーラの事を凄いなと尊敬もしたけれど、船員達と親しそうなのを見て、けっこう妬いていたし」

「え?そうなの?バルこそ港の女の子達にモテていて、私は気が気では無かったわ。それにそもそも、好意を持っていない相手と交際するわけはないでしょう?きっと私はバルに一目惚れだったのよ」

「それを言ったら俺だって、好意のない子に声を掛けたりはしない。つまり俺はラーラの後ろ姿に既に一目惚れしていたんだな。ラーラより先に」

「え?なんでわざわざ先になんて言うの?そこは私と一緒で良いじゃない?」

「いや、譲れない。俺の方が先にラーラを好きになった」

「でもその時のバルの私への好きは、他の女の子への好きと一緒よね?私はバルだけだったのに」

「そんな事はないよ。俺が最後に声を掛けたのはラーラだ。それまでの子達の様に、ラーラに声を掛けた後に、他の子に声を掛けた事なんてなかったろう?それだけでも、俺に取ってラーラが最初から特別だったって事だよ」

「・・・バル」

「ラーラ・・・」


 言いたい事は頭に色々浮かぶけれど、ラーラとバルの表情を見て、二人が良いなら良いか、とミリは思った。

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