ラーラの見解
ミリは、ラーラがバルと甘い雰囲気を醸し出している間、微笑みを浮かべてその様子を見ながら、この後の展開を考えていた。
「お母様?」
ミリの呼び掛けに、ラーラは再び警戒する。
硬い声でラーラはミリに返した。
「ええ。何かしら?」
「今度はお母様のご意見を伺わせて下さい」
ミリの微笑みにラーラはますます警戒をする。
「お父様はお母様を汚れていないと思っていらっしゃいますけれど、お母様はご自分が汚れていると仰るのですね?」
「・・・ええ」
「それは、誘拐事件に関した事をお母様は仰っていますか?」
「・・・ええ、そうよ」
ラーラは警戒しながら、一言一言を口にした。
「誘拐事件がなければ、お母様の汚れはなかったのですよね?」
「ええ、そうね」
ラーラの返事にミリは肯いた。
「お母様に触れても、ガロンさんやマイさんやパノ姉様は汚れないのですよね?」
「そうだけれど、でも・・・」
「でも?」
「・・・そうだけれど・・・」
「でもと言うのはお母様、ガロンさんとマイさんとパノ姉様は汚れないけれど、でも、お父様は汚れると仰りたいのですね?」
「違うわ。でも、お父様に触れて頂く訳にはいかないのよ」
「お母様がお父様に触れて頂く訳にはいかないと言うのは、汚れと関係がありますか?それとも汚れとは関係のない、他の理由ですか?」
「他の理由なんて、ないけれど」
「お母様?お母様はお父様が特別な男性なのですよね?」
「それは、ええ。そうよ」
「お母様はお父様に触れて頂く訳にはいかないと仰いましたけれど、一般の男性に触れられるのも嫌なのですよね?」
「嫌だし、考えるのも怖いわ」
「それでは、お父様に触れられるのは嫌だけれど、怖くはありませんか?」
「ええ。え?あ!いいえ!嫌じゃない!嫌じゃないわよ?」
ミリは頭の中のリストにチェックを付ける。
取り敢えず、お父様に触られるのは嫌じゃない、まで来た。
「お父様に触れられるのは、嫌じゃないし怖くない。それはお父様が特別だからですか?」
「そう・・・じゃないわ。いいえ。特別だからではなく、お父様だからよ。お父様だから触れられるのは嫌じゃないし、怖くないけれど、それは特別だからではなくてお父様だからなの」
「一般の男性は嫌だし怖い。お父様は嫌じゃないし怖くない。そうすると、嫌じゃないし怖くないから、お父様は特別なのですか?」
「え?ちょっと待って?ええと・・・」
ミリは、「特別」が手掛かりになるかな?と思う。
「お父様は嫌じゃないわ。お父様は怖くないし。でもそれとは別に、お父様は私に取って特別なのよ」
「お母様はガロンさんも嫌じゃないし怖くありませんよね?」
「え?・・・それは、そうではあるけれども」
「ガロンさんも特別ですか?」
「特別は特別だけれど、ガロンは血は繋がっていないけれど、私の育ての父なのよ?」
「なるほど。知っています」
「ミリにもお父様は特別でしょう?」
「はい。私に取って、血が繋がっていなくても、お父様は特別です」
「それと一緒なのよ、ガロンは、私に取って」
「つまりガロンさんはお母様の家族だと言う事ですね?お母様に取って家族だから、ガロンさんは特別だと?」
「そう。そうなのよ」
「お父様はどうですか?お父様はお母様に取って家族ですか?」
「え?当たり前じゃない」
「つまり、お父様もお母様に取って、家族だから特別なのですね?」
「え?・・・いいえ違うわ。お父様はお父様だから、私に取って特別なの」
「もしかして、家族になる前から特別だったのですか?」
「そうね。確かに、お父様と結婚する前から、お父様は特別だったわ」
お母様は結婚イコール家族なのかも?とミリは心のメモに注意書きする。
「お母様に取って男性はお父様だけだと仰っていましたけれど、お父様が唯一の男性だから特別なのですか?それともお父様が特別だからお父様は唯一の男性なのですか?それともこの二つは無関係なのですか?」
「色々違うわ。お父様は私に取って特別なの。それは揺るがないの。そしてそれとは別にお父様は家族だし、また別でお父様は怖くないし、また別にお父様は私に取って唯一の男性なの」
「多面的と言う事ですね?」
「え?ええ。そうね」
ラーラの返しにミリは肯いた。
取り敢えず、お父様は特別だから特別なのね、とミリは心に留める。
「お母様はさっき、お父様と別れると言っていましたね?」
「え?そんな事、言わないわよ」
「私が異母弟妹を欲しがった時です」
「ああ、あれはたとえでしょう?でもお父様が私以外の女性を選ぶなら、そうするしかないわ」
「ラーラ」
「もちろん、そんな事はないってバルを信じているわよ?」
「ああ。そんな事はあり得ないよ」
「本当にそうでしょうか?」
その言葉にラーラとバルが、目を見開いてミリを見る。
その二人の顔がそっくりで、ミリは笑いそうになったけれど、真面目な表情を取り繕った。




