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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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血の繋がりと噂

 ラーラは顎に拳を当てて、ミリの秘密について考えた。


「船員達のお使いをしたりしていたわね?それとアクセサリーを売り買いしていたとの報告もあったわ」


 ラーラの言葉にミリは微笑みを返す。

 使用人や護衛達から報告が行っている事には、ミリも気が付いていた。


「どうやら当たりみたいね。でもそれでは大した投資額にならないのではない?」

「どこで金を稼いだのかなんて、どうでも良いだろう?」


 ラーラの推察をバルが遮る。


「どうでも良くはないわよ」

「それより、子供を産むって方が問題だろう?」

「お金が足りなければ子供は産めないわ。それをミリに分からせなければダメよ。いざとなったら周りが助けてくれる、なんて思っていたら問題じゃない」

「問題なのは、結婚もしないで子供を産もうとする事だろう?」


 バルはラーラからミリに視線を移した。


「ミリ。そんな状況で産んでも、子供は幸せにならないよ?不幸になるのが目に見えているのに、子供を作る事には賛成出来ない」

「お父様。それは、片親だと子供は幸せになれないと、仰っているのですか?」

「それもあるが、周りから祝福されなければ、その子が可哀想じゃないか」

「その分は私が祝福しますし、二親(ふたおや)分を私が愛します」

「いや、そう言う事ではないよ」

「お父様が心配なさっているのは、もしかして噂に付いてですか?」


 ミリの質問にバルは言葉を失い、ラーラが「噂?」と呟いた。


「ミリ?噂って何の事?」

「いや、ラーラが気にする話じゃないよ。ミリ。その話は()めなさい」


 ラーラが一睨みするのをバルは感じたけれど、バルはラーラに視線を向けない。


「ミリ。話しなさい」

「ラーラ」


 今度はバルがラーラに顔を向けるけれど、ラーラの方が視線を合わせない。


「ミリ?お父様が私に聞かせない様にしている理由は、ミリは分かるの?」

「はい」

「つまりあなたはお父様が()めるのを分かっていて、わざと話に出したのね?」

「え?」


 バルはミリを振り返った。

 ミリは少し躊躇(ためら)ってから、ラーラに向けて小さく「はい」と肯く。


「そうなのかい?ミリ?」

「はい」


 ミリの返事を聞いて、バルはソファにドサリと座った。

 バルの様子を横目で見てから、ラーラはミリに視線を戻す。


「ミリも座りなさい。座って話しましょう」


 ミリにそう促すと、ラーラは腰を下ろした。

 ソファの後ろに立っていたミリは、「はい」と肯いて回り込み、二人の向かいのソファに座る。


 ミリは、噂の存在を自分が口にした理由に付いて、ラーラが感付いたかも知れないと思う。


「ミリ?どんな噂なの?」

「ラーラ。俺から話すよ」

「え?そう?どんな噂?」

「後で、二人きりの時に話す」


 それではミリの思惑が外れる。


「お父様。今、話をさせて下さい」

「いや、しかし」

「お願いします」


 頭を下げるミリを苦い表情でバルは見詰めた。

 そんなバルをラーラが見詰める。


 バルが何とも反応しないので、ミリは顔を上げた。


「お父様?もったい振るとお母様が誤解なさいます」

「いや、そうだけれど」

「お母様?事実無根な噂ですし、私は大した話ではないと思っています」

「それではミリ、二人で話しましょうか?」

「いや、待ってくれ。話すよ。話すから」

「お父様。私からの方が、お母様にはよろしいかと思いますよ?」

「しかし、ミリの口から言わせるのは」

「お父様の言葉として聞くよりは、私からの方がお母様にはショックが少ないです」

「つまり、私がショックを受けるような噂なのね?」

「お父様の言葉でしたら。私が話せばそれほどでもありません」

「なんなのミリ?教えて」

「はい。お父様が私をお母様の代わりにしているとの噂です」

「代わりって、まさか?」

「はい。男女の営みのですね」

「充分、ショックだわ。誰なの?そんな事を言っているのは?」

「誰かは分かりませんけれど、私がお母様にそっくりなのが理由の様です。そっくりですし、お父様と血が繋がっていませんので、お母様の代わりをさせているって推測したのでしょう」

「そんな邪推、有り得ないでしょう?」

「そうですけれど、それなのでお父様は、私が妊娠するのはダメと仰っているのです。私の子の父親がはっきりしないと、その噂と紐付けられますから」

「それだからダメな訳じゃないよ。その噂がなくてもダメだ」

「え?そうですか?」

「そうだろう?」


 バルは項垂れて、首を振った。


「それなら異母弟妹でも良いですよ?」


 ミリの言葉にバルは「え?」と顔を上げる。


「それなら?それならってどう言う意味だい?」

「異母弟妹が生まれれば、お父様が大人の女性をお相手に出来る証明になります」

「そんな事の為に、他の女性を相手にする訳ないだろう?それなら今の噂の方がマシだ」

「バル?マシな訳ないでしょう?」

「いや良い訳はないよ?良い訳はないけれどさ」

「それは異母弟妹もダメだし、私が赤ちゃんを産むのもダメだと言う事ですよね?」

「もちろんだよ」

「それならお母様に異父弟妹を産んで頂くしか」

()めなさい!そんな訳、ないだろう?」


 バルはミリを睨むけれど、ミリには全然効いていない。


「ねえ、ミリ?」

「はい、お母様」

「異父弟妹は絶対に無理よ。考えただけで、おかしくなりそうだわ」

「え?・・・ごめんなさい」


 ラーラの顔から血の気が見る見る引いて行くのを見て、ミリは慌てて頭を下げた。


「分かって貰えて良かったわ。それでね?異母弟妹って言うけれど、お父様とあなたは血が繋がっていないのよ?」

「はい」

「そうしたら、その子もあなたとは血が繋がらないじゃない」

「はい」

「はいって、分かっていて言っていたの?」

「はい」

「それでも良いの?」

「はい。血が繋がらなくても、お父様が私を愛してくれる様に、私もお父様の子なら兄弟として愛せると思います」

「そう。その子のお母様も、あなたはお母様として慕えるのね?」

「え?」

「私はお父様が他の女性と過ごすのなんて耐えられないから、あなたが異母弟妹を欲しいなら、私はお父様と別れるしかないわ」

「なぜですか?」

「なぜって、そんな状況、耐えられる訳ないじゃない」

「お父様と別れれば、耐えられるのですか?」

「え?・・・そんな訳、ないけれど」

「そうですよね?もっと辛いですよね?」

「だからって、どうすれば良いのよ?」

「一番は、お父様とお母様が、本当の夫婦になる事だと思います」

「本当のって」

「今はかりそめの夫婦ですよね?私を産んで育てる為に、お父様とお母様は結婚なさったのでしょう?」

「え?いえ」

「母親一人で子供を産んで育てるのは、経済的に大変なのですよね?お母様?」

「それは、そうだけれど」


 ミリはバルに目を移す。


「結婚しないで子供を産む事自体、大変なんですよね?お父様?」

「あ、いや、確かにそうだけれど」



 ミリは交互に二人を見ながら、やはり正面から話す方が二人に挟まれて話すより楽だな、と考えていた。

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