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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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しつこい

「強引だった私達の結婚だって、みんなが賛成してくれたから、こうやって暮らしていけるのでしょう?とにかく私の考えをミリに伝えさせて」


 ラーラはそう言うとミリの体を引き寄せた。


「ミリ?」

「はい、お母様」

「私はあなたに味方をする。でもその為にはあなたが何を望むのか、知らないとならないでしょう?」

「それは、はい」

「今は結婚なんて考えられないのよね?」

「はい」

「でも結婚したくないとも思っていないのよね?」

「それは、お父様のご命令に従おうと思っています」

「ご命令って、お父様と私とで、言う事が違ったら、どうするの?」

「お父様のご命令に従います」

「なぜ?」

「え?なぜ?」

「あなたは自分で考える事が出来るでしょう?それなのにお父様の命令に従うと言うのはなぜなの?」

「それは、お母様の命令に従わないのはなぜか、と言う質問ですか?」

「いいえ、違うわ。自分の事なのに、なぜ自分で考えないの?」

「それは、でも、私はお父様が働いて稼いだお金で育てて頂きましたし、お父様は貴族ですので、ご命令に従うべきだと考えるからです」

「私は平民の出だから、私の命令はきかないって言う事?」


 やっぱりそれが訊きたいのよね?とミリは思った。


「お父様とお母様のご命令が矛盾するなら、お父様のご命令に従いますけれど、そうでなければお母様のご命令に従います」

「ミリは自分では考えないって事?」

「お父様のご命令に従うと言うのは、私の考えです」

「違うでしょ?自分の人生なのよ?」

「私の人生でも、私が好き勝手には決められません」

「だからその好き勝手を教えてって言っているの」

「でも私がお父様のご命令に従うって言う事さえ、お母様は許さないのですよね?」

「そうじゃないの。そうじゃないのよ」


 ラーラはミリの頭を抱いた。


「バル。ミリの考えは正しいと思う?」

「え?いや、だけど」

「バルは自分の言う通りになるミリを望んでいるのよね?」

「いや、違う」


 ラーラはミリの頭を放す。


「ミリ?」

「はい、お母様」

「お父様がミリの好きに生きろって言ったら、あなたはそうするの?」

「お母様?」

「どうなの?」

「お母様はお父様が間違えているとお考えなのですか?」

「そうではないけれど」

「私はお父様もお母様も、私の為の最善を選んで下さると思っています」

「もちろんその積もりだけれど、あなたが一所懸命学んでいるのは何の為なの?自分で考える為では無いの?」

「自分で考えた時に間違えない為に、色々と学ばされているのだと思っています」

「学ばされている?学ばされなければ、自分では学ばないって事?」

「学ぶと思いますし、学ばされていると言いましたけれど、私に必要な事を皆様が与えて下さっていると思っています。学ぶ機会さえ与えられない子供もいますから、私は幸せだと思っています」

「ミリ。それはあなたの考え?それとも私やお父様を喜ばせる為にそう言っているの?」

「私の考えですけれど、それはそれとして、お父様にもお母様にも喜んで頂きたいとは思っています。本当です」


 そう言って見上げてくるミリから、ラーラは目を逸らしてバルを見た。


「バル?どう思う?」

「・・・うん」

「うんって何よ?」

「ミリ?」


 ミリはバルを振り向いた。


「はい、お父様」

「ミリが私やお母様を喜ばそうと思っているのは信じるよ」


 またバルが自分を「私」と言っているから、言葉を作っているとミリは思ったけれど、ミリは小さく肯いた。


「はい。ありがとうございます」

「私もよ?それは私も信じているわよ?ミリ?」


 ミリはラーラを振り向く。


「ありがとうございます、お母様」

「それでね、ミリ?」


 ミリはまたバルを振り向いた。


「はい、お父様」

「ミリがそう考えてくれるのも嬉しい。ラーラもだよね?」


 ミリはまたラーラを振り向く。


「ええ。私も嬉しいわよ?」

「はい」

「でも、私達の命令を全て、何でもかんでも言う事をきいて欲しい訳ではないんだ」


 またまたミリはバルを振り向いた。


「それは、絶対と言われた命令だけ言う事をきく、とかでしょうか?」

「いいや、そうじゃなくて、私もお母様もミリも、人間だから間違える時がある」

「はい」

「その時に命令だからって、ただ言う事をきいていたらダメだろう?」

「ですがその時でさえ、お父様もお母様も私の為に良かれと思って命令なさるのですよね?」


 そう言ってミリはバルから視線をラーラに一旦移して、またバルを見る。


「それはそうだよ。もちろん、それはそうなんだけれどね?でも、ミリが知っている情報を私が知らなくて、知らないからこそ間違える事もあるだろう?」

「はい」

「そう言う時には、間違った命令をするかも知れないじゃないか?」

「それは、お父様が知らない情報があれば、私が気付いてお伝えしますから、問題ありません」

「そうだけど、うん、そうだよね?そうなんだけれどね?」

「はい」

「じゃあ例えば、さっきお母様が言っていたみたいに、私もお母様も周りのみんなも、ミリの好きに生きなさいと命令したらどうする?」

「今まで通りに生きます」

「あ、うん。そうか。それでは、結婚してもしなくても良いって言われたら?」

「しません」

「う~ん、それはミリは結婚したくないからかい?今、していないから、今まで通りと言う事かい?」

「お父様が私の結婚を望まないからです」

「いや、そうだけれど、ミリがどうしたいのかが知りたいんだよ」

「お父様とお母様が望む様にしたいと思います」

「好きに生きて良いんだよ?」

「はい。なので、お父様とお母様の望む様にしても良いのですよね?」

「そうだね」


 バルは肩を落として苦笑いを浮かべ、視線をミリからラーラに移すと、眉尻を下げた。

 ラーラも同じ表情をしていたけれど、小さく肯いてミリに向く。


「ミリ?」

「はい、お母様」

「私の命令もきくのよね?」

「はい」

「それでは命令です。パサンドと結婚した時のミリのメリットを教えなさい」

「え、でも」

「誤魔化しは無しで」


 ミリはラーラがまだ忘れていなかった事に、やっぱりしつこい、と思った。

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