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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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けんか

 ラーラはミリの戸惑いの表情を見て、やはりミリには恋愛話はまだ早いと考えた。自分がキロに感じていた様な、好意を感じる相手もミリにはまだいなそうだ、とラーラは思う。


「ミリ?」

「はい」

「好きとまではいかなくても、気になる人はいないの?」


 そう問われてミリの心に、レント・コーカデスの顔が浮かび上がる。

 しかしレントは、気になると言うよりは注意しなければならない相手、との考えが直ぐに浮かんで、ミリはレントを対象外にした。


 先日ミリを付けて来たから気絶させて、道端に転がした神殿関係の男の子は?あの後、無事だったかは気になるけれど、そう言う意味の気になるではないのはミリにも分かる。

 それを言ったら、転んだ子の怪我がどうなったのかも気になる。

 船員の一人がアシンメトリーな髪型をしていたのも、気になったは気になった。

 そう言えば、魚を分けてくれたお爺さん、釣り上げる時に腰を痛めたと言っていたけれど、どうしただろう?


「どう?いないの?」

「はい。お母様の仰る意味での気になる人は、いないと思います」

「そう。憧れている様な人でも良いわよ?」

「恋愛に繋がる様な憧れですよね?」

「ええ」


 ミリにも憧れる人はいるけれど、恋愛には繋がらないし、ラーラとバルに伝える訳にもいかない。

 なにせ相手はソウサ商会を脱走した時に知り合った、空き地の子のお姉さんだ。たまたま海で大物を釣り上げているのを見掛けたけれど、その時は空き地のただのミリではなく、ミリ・コードナだったので声を掛けられなかった。釣った魚をその場で捌く姿も凛々しかった。


「いません」


 ラーラは当てが外れた。

 自分がミリの年頃には、仲の良い女の子とコイバナをしたりしていた。好きとは言わないまでも、ほんのり憧れる人がいたりした事もある。


「そう」

「ミリにはまだ早い」


 とうとうバルが口を挟む。

 バルが続けようとするのをラーラは防いだ。


「バルはミリを結婚させない積もりなんでしょう?」

「もちろん、ミリはこの家で俺達と一緒に、ずっと暮らせば良いじゃないか」

「でも私は、バルと結婚出来て良かったと言ったでしょう?」

「それは俺も思っているけれど」

「それなのにミリには結婚させないの?」

「ラーラだって結婚だけが幸せではないって、言っていたろう?」

「そうだけれど、私はミリが望むなら応援したいわ」

「だってミリは望んでいないじゃないか」

「まだそう言う人が現れていないからでしょう?」

「現れなくて良いさ」

「なんでそんなの事言うのよ?」

「ミリがこの家にいつまでもいれば良いからだよ」

「じゃあ、ミリがお婿さんを迎えるなら良いの?」

「そんな事は言っていない」

「つまり結婚が反対なのね?」

「ミリは結婚しなくて良い」

「結婚しなければ良いのね?男の人を連れて来ても」

「そんな訳ないだろう!」

「だってバル、私と暮らせるなら結婚しなくても良いって言ってくれたじゃない!」


 ミリは頭の上で交わされる口論にドギマギしていた。

 人の頭の上でケンカしないで欲しいと思う。


「それは、俺達の場合はそうだったけれど」

「私でもバルと結婚出来たのだから、ミリにも幸せを選ばせたいわ。結婚ではなくても良いけれど、ミリが選ぶなら結婚でも良い」

「ラーラ、その話はまた後でしよう」

「いいえ。ミリがいるところでするべきよ」


 ミリとしては、いない所でして欲しかった。


「ミリ?」

「はい、お母様」

「私がミリとパサンドを結婚させる積もりがないのかって訊かれたけれど、ミリが望むなら結婚を応援するし、望まないなら結婚させない様にするわ」

「いや、しかし」

「バルはちょっと待ってて。バルはミリをとにもかくにも結婚させたくないのでしょう?」

「ああ、そうだ。ミリはずっと一緒にこの家で暮らせば良い」

「それはミリも分かっているわよね?」

「はい」

「ね?バルの気持ちはちゃんとミリが分かっているから、今度はミリに私の気持ちを分かって欲しいのよ」

「お母様の気持ち?」

「いや、しかし、ラーラ」

「なによ?私の事はミリが理解しなくても良いって、バルは思っているの?」

「いや、そんな事はないよ。もちろんそんな事はないけれど」

「それなら私にもミリに話をさせてよ」

「でも、俺が言う事とラーラが言う事が違ってたら、ミリが混乱するだろう?」

「混乱して何が悪いの?」

「え?いや、ダメだろう?ミリを混乱させたら」

「ミリの将来に関わる事なのだから、情報を与えられるだけ与えて、どれが正しい道なのか、ミリに選ばせるべきでしょう?」

「いや、しかし」

「その結果、ミリが結婚するもしないもバルの言う通りにするかも知れないし、バルの言う反対ばかり選ぶかも知れないけれど」

「いや、それはダメだろう?」

「なんで?」

「なんでって」

「私達だって、無理矢理結婚したじゃない」

「いや、そうだけれど」


 ミリはバルが「そうだけれど」と言っている時点で、ラーラの勝ちだと思った。

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