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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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同席

 ミリ・コードナとレント・コーカデスは、向かい合って見詰め合っていた。

 もちろん色めいた状況などではなく、お互いに言葉が出なかっただけだ。


 レントが第三回サニン王子の友達を探す会に招待されている事は、ミリも分かっていた。貴族各家の人員構成の情報から、今回の招待客の条件にレントも当て嵌まる事に気付いていたからだ。

 しかし困窮するコーカデス伯爵領の情報から、レントが参加しない可能性を考えていた。

 そして会場に来てみれば、自分より背の高い少年はいない。レントはミリより学年は一つ上なので、ミリは自分より背の高いレントを想像していた。

 ところがいま目の前にいるレントは、自分より年下にしか見えない。身長もそうだが体が細すぎる。



「ミリ姉上、どうしたの?」


 見詰め合う二人の横から声を掛けたのは、ミリの従弟のジゴ・コードナだった。


「コーカデス殿、申し訳ありません」


 ミリはレントに頭を下げてから、ジゴを振り向いた。


「ジゴ、会話に割って入るのは失礼でしょう?」

「見詰め合っていただけで、会話して無かったじゃないか」

「していたわよ」

「そう?コーカデス殿、ごめんね?俺、ジゴ・コードナ」

「あ、はい」

「わたくし、でしょう?」

「はいはい。わたくしはコードナ侯爵ガダの長男ラゴの長男ジゴです。お名前を教えて頂けますか?」

「わたくしはコーカデス伯爵スルトの長男レントと申します」

「ありがとう、コーカデス殿。ミリ姉上、どう?やれば出来るだろう?」

「良く出来たけれど、出来るなら最初からやりなさいよ」

「良く出来たってところまでで良いのに。後半はいらないよ?」

「ジゴが褒める事を催促していなければそうしたわ」


 そう言われたのを聞いているのかいないのか、ジゴは自分で椅子を引いて、レントがミリの為に引いた椅子の隣の席に着いた。


「どうしたの?二人は座らないの?給仕の人を困らせてるよ?」


 ミリはジゴを一睨みしてから、レントに顔を向けた。


「既に注目を集めてしまった様ですし、良ければお話をさせて頂けませんか?折角のご縁ですし」


 今後話す機会を作れるかどうか分からないと思いながらそう言って、ミリは椅子を手で指し示す。


「・・・分かりました。同席させて頂きます」


 レントはそう返し、ミリの椅子の後ろに立った。

 ミリが椅子に座るのを助けたら、レントも隣の席に着く。

 ジゴは選んだお菓子を既に食べ始めていた。隣に座ってはいるが、ミリとレントの会話に参加する気はなさそうに見える。


 ミリは給仕にビスケットとケーキとジュースを頼み、レントはビスケットとジュースを頼んだ。

 ミリの前にはビスケットが2枚と数種類の果物が使われたケーキが、レントの前には何種類ものビスケットが1枚ずつ用意された。

 レントのビスケットを見ながら、ミリが尋ねる。


「ビスケットがとてもお好きなのですね?」

「あ、いえ。どれか分からなかったので、1枚ずつ頼んだのです。こんなに種類があるとは思っていませんでした」

「お目当てがあったのですか?」

「はい。王都で伝統的なビスケットがあると聞いていたので、それを食べる様にと」

「どなたかのアドバイスがあったのですね?」

「ええ、まあ。しかしどれがそうなのか」

「これですね」


 ミリは自分が頼んだビスケットをレントに見せた。2色の生地で模様が付けられている。


「コーカデス殿のお皿にも載っている、ええ、それですね」


 レントが摘まみ上げた1枚を見て、ミリは肯いた。


「ミリ姉上、1枚頂戴」


 ジゴがミリの皿に手を伸ばしす。


「自分で頼みなさいよ」


 そう言いながらもミリは、ビスケットの載った皿をジゴの傍に移動させる。

 ジゴは「優しいミリ姉上、ありがとう」と言ってビスケットを摘まむと口に入れた。

 その様子を見ていたミリとレントもビスケットを食べる。


「これが伝統のビスケットですか」


 レントが感慨深げに言葉を漏らした。

 ジゴが首を傾げながら「うん?」と小さく唸る。


「いつものと違うよね?」

「そう言う事は言わないの」


 ジゴの言葉をミリが小声で窘める。

 その声をレントが拾った。


「何か違うのですか?」

「そうかも知れませんね。工夫が加えられているのかも」

「つまり伝統とは違うと?」

「改良されたのかも知れません」

「よろしければ、どう違うのか教えて頂けませんか?」

「そうですね。詳しくお知りになりたいのなら、給仕に尋ねるべきかと思いますよ?」

「教えて上げれば良いのに」


 ジゴに向けて「余計な事は言わないで」とミリは小声でまた窘める。


「コードナ様の意見で結構ですので、教えて下さい」


 その声に振り向くと、レントが真剣な顔でミリを見ていた。

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