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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第二章 ミリとレント
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コーカデス伯爵領

いいわけ回です。

後書きに粗筋を書きます。

 コーカデス家は爵位を落とし、侯爵から伯爵になっていた。


 コーカデス領はソウサ商会が撤退した後、景気は低迷して物価は上がり、治安は悪化し、領民は他領に流出していた。

 税収は減り、公共事業は縮小し、領地は荒れて行く。


 レント・コーカデスの祖父リートは、領民の流出を止める為の対策を実施した。

 それは税収が減った理由が不正申告が行われている所為だとし、その調査を名目にして全領民の他領への移動を禁止する事だった。

 完全な禁止では無く、2年分の税金を預ければ他領に移動できる。もちろんコーカデス領に戻って来たら、預かり金は返却した。


 これを受けて、コーカデス領に見切りを付けた富裕層は、2年分の税金を捨てる覚悟で他領に移った。

 リートは即座に預かり金を税金3年分に増額して、流出を止めようとした。しかしそれは人々に、今後更に預かり金が増額される可能性を気付かせる。これが移動を躊躇っていた人達の背中を押す事になり、流出者は増えた。


 人が減って食料等の消費が減ったので、上がっていた物価が下がり始める。


 高額納税者が流出したので、コーカデス領の税収は更に減る事が決まる。

 税収が減っても人件費等の固定費があるので、領政の為の支出は直ぐには減らない。

 手元に預かり金はあるが領民が戻って来たら返す必要があるので、本来の収税年度が来るまでは勝手に使う事は出来ない。

 そこでリートは増税を行った。


 これを切っ掛けに、それまで預かり金を払え無かった領民の移動が始まる。

 家も畑も財産も売って子供や孫の分だけ預かり金を払い、他領に送り出す者が現れたのだ。領地に残るのは老人だ。

 何もかも売り払った老人達に収入のあてはなく、当然支払える税金も無い。

 直ぐに老人達の病死や事故死や餓死が広まり、人のいない村も増えて行く。


 家や土地は売ろうとする人が多い為に値段が急激に下がった。

 市場(いちば)に食べ物を運んでも、客が減っているので売れ残る。持って帰らずに最後は捨て値で売ると、客はそれを待つ様になる。どの店もそうなれば、早目に安売りを始めないと売り切れない。その様に食料品の価格も下がって行った。

 昨日10個買えた金額で今日は11個買える。それなら10日後になら倍の数が買えるかも知れない。そう考えて買うのを控える客が増えて行く。買い控えが起これば売り値は更に下がる。


 売ろうとする人は多いが、買おうとする人は少ない。

 物の値段が下がると言うのは、お金の価値が上がると言う事になる。同じ金額でも昨日より多くの物が買えるなら、今日の方がお金の価値が上がったのだ。

 安くしても売ると言う事は、それだけお金を欲しがっている事にもなる。

 そして領主のところには、使えないで保管されている多量の預かり金がある。これも領内からお金を吸い上げている事になり、領内のお金不足を助長し、お金の価値を押し上げ、相対的に物価を押し下げた。

 この様にしてコーカデス領ではデフレが起こっていた。


 領民の収入は減っていた。お金の価値が上がったのだから、同じ商品や同じ労働で手に()れられる金額が減るのは当然だった。

 収入が減れば、それに比例して納める税金も減る。


 領民の数が減っている上に、一人当たりの納税額が減ったコーカデス領の財政は、急激に悪化する。

 それは侯爵領として国に納める税金を用意出来なくなる程だった。

 しかしこれ以上の増税が不可能な事は、リートにも分かっていた。


 こうして、所定の税金を納められなかったコーカデス家の爵位は、伯爵に降爵した。


 リートは責任を取って引退し、レントの父スルトがコーカデス伯爵となった。


 レントの母フレンは実家に帰り、フレンとスルトは離婚した。

 フレンの実家に限らず、それまでコーカデス家に(くみ)していた貴族家の殆どが、コーカデス家との縁を切った。残ったのは初代からコーカデス家を支えて来た家だけだ。



 スルトは領地の立て直しを図っているが、上手くは行っていない。


 他領への移動に預かり金を要求する事は廃止した。それが他領からコーカデス領へ人が入って来ない理由の一つになっている事に気付いたからだ。

 しかしそれだけでは領民は増えない。出て行った領民も新しい生活を送っているので、戻らせる為には廃止するのが遅過ぎた。


 低所得者に対して減税もした。当然税収は減るが、可処分所得を増やす事で経済の活性化を狙ったのだ。

 しかしこれは上位納税者に税の不公平の不満を与える事になった。

 上位納税者に領地を出て行かれるのも困るので、すぐに低所得者の税金を元に戻したが、今度は低所得者から不満が上がる。

 不満に押されて仕方なく、全体的な減税を実施する事になった。

 これにより、経済の活性化にはある程度成功した。しかし不満を口にする事で意志が通るものなのだと領民達は理解する。そして領主スルトは弱腰だとの評判になった。


 王宮に出していたミリ・コードナの母ラーラを貴族とは認めないとの訴えを取り下げ、広域事業者特別税も停止したが、ソウサ商会を呼び戻す事は出来ていなかった。


 コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家にも謝罪したが、関係の改善には至っていない。

 コーカデス領は物流も領民も税収も減って困窮し、爵位も侯爵から伯爵に降爵した。

 コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家に謝罪したけれどソウサ商会は戻らず、経済は低迷している。

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