サニン王子の友達を探す会
王宮で、ソロン王太子夫妻の一子、サニン王子の友人を選ぶ為の催しが開かれた。
目的は同世代の子供達から、将来の側近候補を集める事だ。
妃候補は公爵家がうるさく言うのが分かっているので探さないが、令嬢達も交流の為に招待される。
このサニン王子の友達を探す会には、幻と呼ばれる第一回があった。
第一回では対象者はサニン王子より後に生まれた子供とし、公爵家か侯爵家の子息令嬢に限った。
その結果、誰も出席しなかった。その意味での幻だ。
コウバ公爵家とコウゾ公爵家には、同世代の子供がまだいない。
コウグ公爵家は王都邸が放火に遭ったまま、まだ建て直されてはいない。そして領地収入の大赤字により、公爵家の体面を保ったまま王都まで子供を送るのは不可能だった。
侯爵家は揃って辞退した。コーハナル侯爵家以外は該当する子供がいたが、年齢制限をして招待された事を警戒したのだ。
第二回では対象を伯爵家子息令嬢まで広げ、旅費と王都の滞在費に付いては一定額を王宮が提供した。
侯爵家なら王宮の招待を断れても、伯爵家では難しい。
配下の伯爵家に相談されて、コーハナル侯爵家以外の各侯爵家も子供を参加させる事となった。コーハナル侯爵家配下の伯爵家子息令嬢は、ミリの従弟であるコードナ侯爵家のジゴ・コードナの元に集まった。
コウグ公爵家も子供を参加させた。
なお第二回に招待されたのも、サニン王子より後に生まれた子供となっていた。
そして今回、サニン王子の友達を探す会第三回が開かれた。
対象者が伯爵家以上の子息令嬢である事は変わりないが、年齢に関しては学院未就学児が条件となった。
新規に招待された子息令嬢は二人。
その内の一人はミリ・コードナだった。
開始直後の会場には、各家の派閥毎のグループが幾つも出来ていた。
ミリは今回が初参加だが、一緒に来た従弟のジゴは前回も参加している。それなのでコードナ侯爵家派とコーハナル侯爵家派のグループは、ジゴを中心に集まっていた。
しかしそれらのグループは直ぐにバラバラになる。
子供達の素の行動を見る為に、会場には様々な遊具や絵本などが用意されていた。
前回参加した時のお気に入りがある子供は、グループを抜け出して各々で遊び始める。
ミリは当然出遅れる。
周囲を見回すと、迷う素振りを見せる子達もいる。ミリはその子達に話し掛けたり、遊びたい遊具の列に並ばせて上げたり、なんだかんだと面倒を見始めた。
子供の頃は1歳違うと随分と差が出る。周囲にはミリより小さい子供ばかりなので、一緒に遊ぶと言うよりは子守をする様な状況をミリは送っていた。
子供達がそれぞれの遊びに集中し始めると、場が落ち着いて来る。
ミリはまた周囲を見回して、サニン王子らしき子供を探した。
サニン王子に用事があった訳ではなく、揉め事に巻き込まれない様にする用心の為だ。
しかし誰が誰だか分からない。
取り敢えずミリは、サニン王子と年齢が一致しそうな男の子の傍には近付かない事にした。
しばらくすると、テーブル席にお菓子とジュースを提供する用意がされた。
それに気付いた子供から、そちらに移動して行く。
その様子をミリは観察していた。サニン王子なら上座に座ると思ったからだ。
しかしテーブル席の上座に座った子は、サニン王子の年齢よりは幼く見えた。
小さい子が上座を分からずに間違えて座ったのかも知れない。しかし誰も注意しない。
ミリは取り敢えずその上座の子をサニン王子候補として、その容姿を覚えた。
お菓子やジュースに口を付けている子供達の所作を見ていると、ミリは腹が立って来る。どう見てもどの子も、ミリの養祖母ピナ・コーハナルの合格レベルには達していない。
ミリより年下なのだから仕方ないのかも知れない。でも自分があれくらいの時は、もっとやらされていたと思う。
そこで気付いてジゴを探した。ジゴは王都にいる時は、ジゴの祖母でミリの戸籍上の祖母のリルデ・コードナにも礼儀作法を習っている筈だ。
見るとジゴは周囲の子供に比べたらマシだが、ピナには不合格を出されるレベルだった。
今度ピナの礼儀作法の授業に、ジゴとリルデを招待してみようと思い立って、ミリは心の中でニヤリとした。
序でにサニン王子と同じ位の年齢に見える子供達を見付けて、ミリは一人一人を観察してみた。
しかしどの子もジゴより劣るとも勝らない。
サニン王子はミリと1歳近く違うけれど、学年で言えばミリと同じでジゴの一つ上。王族なのだし、厳しい教育も受けている筈。
もしかしたら、サニン王子はこの場にはいないのかも知れない。所作もそうだが、服装でもそれらしい子が見当たらない。
いるかいないか分からなくて見当たらないなら、気にするだけ損だ。
ミリはそう結論付けて、もうサニン王子を探すのは止めた。
ミリもテーブルに着いて、お菓子を食べる事にする。




