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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第一章 バルとラーラ
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交渉の着地点

「ミリにはまだ縁談は来ていないわ。バルが勝手に言っているだけよ」


 バルの母リルデの説明にパノは「そうなのですね」と返した。


「ミリがお嫁に行く時には、ラーラも付いて行きたいなんて言うから」

「ラーラが付いて行くなら、バルも付いて行きそうですね」

「ミリは嫁にやらないってば」


 バルの言葉にリルデが小さく、パノは芝居掛かった大袈裟な動き付きで、溜め息を()いた。

 パノに向けてバルの祖母デドラが言う。


「今はコードナ家内部の話をしています。パノさんは部屋から出て下さい」

「デドラ様。その件に関わりそうな話を持って来たのですけれど、話はどこまで進んだのでしょうか?」

「ルモが優秀で、コードナ家の将来に役立つだろうと説明した」


 バルがパノに答えた。


「そうですね。会話をしている所を見て、確かに賢いだろうとは思いました。しかし嘘を吐いてまで、守る価値があるとは思えません」

「嘘を吐かなければ、守って育てられるよな?」


 バルの言葉にデドラもリルデも小首を傾げた。バルの祖父ゴバが口を開く。


「嘘を吐かないと言うのは、パノの持って来た話に関わるのか?」


 皆の視線がパノに向く。小さく肯くパノにバルの父ガダが尋ねる。


「関わりそうな話とは?」

「誘拐犯達の罰の選択肢を確認して来ました」

「死刑以外に選択肢が?」

「ええ。罰を被害者が選択出来る事は、今回の誘拐事件にも適用するそうです」

「ラーラが誘拐された時とは異なり、平民が貴族籍のミリを攫ったのだから、死刑一択ではないのか?」

「はい。他の選択肢もあります。王宮で確認して貰いました。こちらが王宮からの回答状になります」


 パノが差し出す書状をガダが受け取って読み、ゴバに回した。ゴバからデドラ、リルデと回る。

 その様子を見ながらバルがパノに微笑んだ。


「随分と早かったな」

「そこはコーハナル家の名があるからね」


 ゴバがパノの言葉に反応する。


「またルーゾに借りが出来たか」

「いえ。祖父の名は出していません。コーハナル家の名は冗談です。申し訳ありません」

「いや、謝る程ではない。だが、そうか」

「どちらかと言うとミリの誘拐を公表してしまった事で、王宮がコードナ侯爵家に借りを感じているからだと思います」

「なるほど、そうか」


 パノの言葉にゴバは小さく肯いた。

 皆が書状を確認したのを見て、バルが言う。


「話をすすめるけれど、コードナ侯爵家がルモの罰に死刑以外を選択すれば、子供を処刑したとの批判は上がらない」

「しかし罰を緩めるなど、付け込む隙を与える様なものだ」


 ガダの言葉にバルは首を左右に振る。


「主犯は死刑で良い。それなら隙にならないだろう?」

「今後は子供を実行犯に使われるぞ?」

「それは、しかし」

「いまコーハナル家に身を寄せている子供達が、犯罪者の手先として使われるかも知れない。隙を作らない為にも見せしめにする為にも、ルモは処刑すべきだと私は思う」


 ガダの意見にゴバが「そうだな」と肯いた。


「死刑以外を選択したところで、賠償金などは一生掛かってもルモには払いきれないだろう」

「それは、やりようだと思うし」

「私はルモを処刑しなくても良いと思います」


 そうリルデが言った。それに対してガダが訊く。


「理由は?」

「子供を処刑する事のリスクの方が、隙が出来たり付け込まれたりするリスクより高いと思うのよ。ルモを処刑すればきっと、いつまでも非難の声が消えないわ」

「付け込ませない為に余計なコストが掛かるぞ?」

「どちらにしても内部の子供を使った事が、今回の誘拐を成功させた要因と知られたわ。それに対して何の対策も取らない訳ではないのだから、追加のコストはそれほど掛からないわよ。それよりも領民や国民の信用を失うかも知れない事の方が、見過ごせないと思わない?」

「そうですね」


 デドラが小さく肯いた。


「ルモを助ける事で確かに隙は出来ますけれど、助ける事自体はコードナ家や領地の為になりそうです。そのプラスを数値には出来ないかも知れませんが、ルモの払いきれない慰謝料を上回る効果が出るでしょう」

「そうか。そうだな」


 ゴバが肯く。


「主犯達は処刑して実行犯は処刑しない理由を公表すれば、コードナ侯爵家のイメージは良くなるだろう」

「確かにイメージアップには良いチャンスだけれどね」


 ガダが片手で顔を隠しながら首を左右に振る。


「それなら、ルモは助けても良いんだな?」

「死刑以外の選択肢があるなら、それはミリの親であるバルとラーラが決めるのが正しいのだろうな」


 バルの問いにガダが肩を竦めながら答えた。


「ただし、ミリとは離す事。ルモだけではなく、他の子供達もだな」

「そうね。罪がなくなる訳ではないのだから、ルモはミリの傍に置いてはおけないわね。他の子達も利用されない為にはミリから離すべきね」


 リルデの言葉にゴバが肯く。


「全員領地に送るか」

「そうですね。ガロン」


 デドラに声を掛けられて、ラーラのお父ちゃん事ガロンは「はい」と応えた。


「ソウサ商会の行商には幼い子も連れて行くのですか?」

「はい。産んで直ぐに連れ歩きます。出先で子供を産む事もありますので」

「え?流産の危険とかは?」


 驚いたリルデの声が、少し大きくなる。


「流産した話は聞きません」

「妊娠中も荷物の積み卸しとかするの?」

「はい。ですが余り重い物は持たないと思います」

「そう。妊娠中も体を動かしているから、無事に産めるのかしら?」

「どうでしょう?」

「マイに聞いた方が良さそうね。分かったわ」

「はい」

「ソウサ商会に頼めば、小さい子でも領地に運んで貰えますか?」


 デドラの質問にガロンは「はい」と答える。


「問題ないかと思います」

「そうですか」

「では子供達の移送はソウサ商会と相談しよう」

「そうですね」


 こうしてルモの処遇が決まった。



 誘拐の主犯二人は死罪となった。ルモを含めた共犯者達には賠償金の支払いが請求される。

 ルモ以外の共犯者からの賠償金請求はソウサ商会が請け負った。

 ルモはコードナ侯爵家に勤め、給与から賠償金が天引きされる事になる。


 名誉棄損の罪の信徒会の信徒達は、ラーラとバルとミリへの賠償金の支払いが命じられた。

 コードナ侯爵家とコーハナル侯爵家への名誉棄損罪に付いては罰の執行が保留とされ、ラーラ達への支払いが完了したら改めて罰の選択と執行が実施される。

 信徒達への賠償金請求もソウサ商会が請け負った。


 信徒会の信徒達は、ソウサ商会に雇われる事になる。

 勤務先は他国。他国の港でソウサ商会の支部の立ち上げを手伝う仕事をする。

 海外進出事業はラーラの次兄ワールが担当する。ワールの担当していた犯罪被害者サポート事業はラーラの父ダンが、ダンが名目上の責任者だった職業訓練と人材育成はバルが、それぞれ担当責任者になった。



 ルモは他の子供達と共に、コードナ侯爵領に向かった。

 コードナ侯爵領で勉強や仕事を行うのだ。


 コードナ侯爵領に向かう子供達には、コードナ侯爵家の護衛とソウサ商会の従業員が同行する。

 その中にはガロンとマイの姿もあった。ガロンとマイはコードナ侯爵家の使用人を辞め、ソウサ商会の従業員になっていた。


 ルモと幼い二人の子供は、ガロンとマイと暮らす。

 ルモの休みの日には5人で、コードナ領都周辺の街に行商に行く予定だ。



 ルモを助けて欲しいと言った手前、ラーラはガロンとマイに行くなとは言えなかった。

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