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悪いのは誰?  作者: 茶樺ん
第一章 バルとラーラ
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交渉の行方

 ルモの部屋から戻って、ラーラは「どうでしたか?」と四人に尋ねた。


「利発そうな子だったわね」


 バルの母リルデが感想を述べ、バルの父ガダは小首を傾げる。


「しかし、ラーラが言うメリットが分からない。ルモの命を助ける事で、どんなメリットがコードナ家にあるのだ?」

「ルモは将来有望だと思いませんか?」


 ラーラの言葉にガダは顎に手を当てた。


「そうは思うが、ルモをコードナ家で雇えと言う事か?」

「はい」

「しかし雇ったとしても、メリットと言える程の何かがあるとは思えないな」

「それは教育次第です」


 リルデも小首を傾げる。


「教育次第なら、他の子でも良いのではない?」

「そうだな。犯罪を犯した子を選ぶ理由はない」

「ルモは神殿に食料を送る事や先程の子供達の面倒を見る事で、コードナ家に恩を感じる筈です。自分の命が助かる事にも感じるでしょう。コードナ家に強い忠誠心を持つ使用人になる筈です」

「その可能性はあるでしょうけれど」

「それも育て方次第なのではないか?」

「そうよね」


 その会話にラーラのお父ちゃん事ガロンが「あの」と口を挟む。


「意見を述べたさせて頂けないでしょうか?」

「なんだガロン?言ってみろ」

「もしルモを助けるのでしたら、ルモの教育を私と妻に命じて頂けないでしょうか?」


 ラーラが小さく「え?」と漏らした。


「妻は今、先程の二人の面倒を見ております。夜は私も手伝っております」

「夜?一緒に寝起きをしているのか?」

「はい。私達の部屋で寝かせています。子供達も馴れて来ておりますし、私達もこのまま続けて世話を見させて頂きたいと思っております」

「それではマイはラーラに付けないのではないか?」

「ラーラ様のお世話は侍女の方達がなさっています。今はマイでなければ出来ない事はございません」

「でも・・・」


 ラーラは反論しようとするけれど、言葉が出て来ない。


「もしルモを処刑させないとしても、王都にはいさせられない。マイ一人で3人の世話をするのは大変ではないか?」

「ルモがあの二人の世話もしてくれると思いますので、二人より3人の方が楽だとは思いますが、その際には私も職を辞して付いて行きます」

「それはダメよ!」

「ラーラの護衛はどうするのだ?」

「今回の事もありますので、ラーラ様とミリ様の護衛は強化なさるべきではありませんか?」

「そうだな。だがそれならガロンは辞めるべきではないだろう?」

「貴族の方が出ていらした場合、私では押し切られてしまう危険があります。コードナ家の本職の護衛に任せた方が安全だと考えます」

「貴族云々は分からなくもないが、ガロンも本職だろう?」

「私は行商時の自衛の為に剣を覚えました。護衛役として行商に付いて行く様になっても、自分の事は行商人と思っておりました。ラーラ様に触れられる者がいませんでしたので、専属護衛を務めましたが、今のラーラ様はコードナ家の護衛女性でも大丈夫です。私より彼女達の方が余程頼りになります」

「そんな!おと!ガロンも頼りになります!」

「ラーラ様にそう言って頂けるのは光栄ですが、私では付いていけない場所もあります。その為の女性の護衛を別に付けるなら、最初からその者に任せる方が良いのです」

「しかし」

「護衛の交替は隙に繋がります。交替タイミングを減らせば、安全性が上がります」

「でも」

「護衛を辞めて収入はどうするのだ?」

「妻とも相談しなければなりませんが、商売を始めようかと思います。子供達を移動させても良い様でしたら、子供達を連れて行商を再開しようかと」

「相談と言うなら、子供達を引き取るかどうかもマイと相談してからだろう?」

「あの二人は引き取りたいと妻と話しておりました」

「それってつまり、ルモを引き取らなくても二人は引き取って、マイは私のメイドを辞める積もりだったって事?」

「マイもラーラ様に触れられたので専属のメイドとなりましたが、やはり私と同じく、根は行商人なのです」

「そんな、そんなのって」

「ラーラ」


 リルデがミリをラーラに差し出しながら、声を掛けた。


「ガロンとマイがあなたの育ての親なのは知っていますし、結婚当時のあなたが特殊な状況だったので二人には付いてきて貰ったけれど、本来女性が嫁ぐ時には家族と離れるものなのよ」

「それは、分かっている積もりですけれど」


 そう返しながらラーラはミリを受け取った。


「ミリがお嫁に行く時に、ラーラは付いて行く積もり?」

「付いて行きたいですけれど」

「ミリは嫁に行かせない」

「え?もうミリに縁談が来ているの?」


 その時部屋に入って来たパノは、バルのその宣言に驚ろいて、挨拶より先にそう疑問を口にした。

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