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第五十五話 魔法金属

どうしてそんなことするの?


純粋な疑問だ。


見解の相違、報告漏れ、単なる暴走。様々な理由で、想定外の事態は発生する。


そんなとき、複雑な言葉など出てはこない。出てくるのは純粋な疑問だ。


「どうしてそんなことするの?」


リリーナ様の口から出たのも、そんな純粋な疑問だ。


「いや、そのぉ、やってみたらできたというか。単なる興味というか」


「どうして隠れてやらないの……。こんなの目にしちゃったら、こうなるってわかりきってたでしょ……」


召喚魔法で召喚できる召喚体は、大きく2つにわけられる。戦闘向きのものと、生産向きのものだ。ちなみに小妖精のアリスやロップ(ウサギ型小妖精)は立派な戦闘向き召喚体だ。


MFOでの生産というと、主に魔法陣と魔法の装備の作製となるわけだが、当然その素材を得る必要がある。


その手段のひとつが、生産向き召喚体だ。


例えば、妖精のコボルト。こいつは手先が器用で、ある種の金属インゴットを消費して魔法金属のインゴットを作製できる。ミスリルやアダマンタイトなどだ。


他にも、魔石を餌にして糸や布を作製するアラクネや、薬草からポーションを作製するドライアドなんかもいる。


そして今回やらかしたのは、


「クゥーン……」


「ああ、別にコボちゃんを責めているわけじゃないのよ。悪いのはマーリンよ」


「ワン!」


コボルトのコボちゃんだ。


いや違う、コボルトのコボちゃんを召喚し、銀インゴットからミスリルインゴットを作るようお願いした俺だ。はい、俺が悪いです。


ちなみにコボちゃん、女の子だ。二足歩行の豆柴のような見た目で、身長は100cmくらい。ブレザーとプリーツスカートを着こなしている。胸元の大きなリボンがおしゃれさんポイント高いね。


「ふおおお! 銀インゴットからミスリル! どうやって変化したんですか! 他にも作れるんですか!」


「興味深いわ。コボ君の加工技術を科学的に再現できれば、銀以外の金属にも適用できるのかしら。いえ、そもそも金属だけとは限らないわね」


「こうなったら魔力検知器の開発が進まないじゃない……」


「誠に申し訳ありません」


どうしてこんなことになってしまったのか。


早い話が、治験の後のデータ取りの間、暇になってしまったからだ。


四肢欠損の治療はつつがなく終了したが、それだけで治験は終わらない。経過観察が必要だ。


そしてその間、俺には特にすることがなかった。だからつい魔が差してしまった。反省はしている。


一応考えもあったんだ。魔法金属はMFO時代に集めた俺の在庫があるにはあるが、この世界で確保できるようにしておいた方がいい。


そこでコボちゃんの出番というわけだな。


幸いにも、コボルトが魔法金属を作る際に消費するのは、元になる金属インゴットと召喚者のMPだけだ。失敗してもMPが少し減るだけ、それもすぐに回復する。


軽い気持ちでコボちゃんを召喚し、ミスリルインゴットを作ってもらった所を、カエデとタティアナさんの研究組2人に見つかった。


あとは御覧の通りのお祭り騒ぎである。


「このミスリルインゴットは没収よ。カエデとタティアナは魔力検知器の改良に戻ること。マーリンは後でセレナからお説教よ。逃げないように」


「「「どうしてそんなことするの!?」」」




目の前に吊り下げられたニンジン、もとい、ミスリルインゴットwithコボちゃんによって、カエデとタティアナさんは、瞬く間に魔力検知器の持ち運び化に成功した。これで、この世界に魔法的な素材や地域が無いかを探索できる。


グウェンに依頼していた探索のための人手は、サイオンジ星系に来ていた調査官をそのまま回すことになった。行く行くは魔法研究所に取り込む予定になっているが、今は魔法のことは知らせずに調査だけしてもらう。


その辺りの人の運用は、リリーナ様とグウェンとの間で決めている。俺に話を振られても、正直答えられる気がしない。効率的な組織運用のノウハウなんてないし。


こってりとセレナさんに絞られた俺は、治験の結果をまとめて報告書にし、ようやく解放された。あとは長期的な経過観察をサイオンジ家主導でやってもらう。


「ついに、この時が来たよ! コボ君!」


「楽しみだわ」


「ワン!」


ようやく時間が取れた俺たち三人とコボちゃんは、魔法金属作製のために集まった。


「それでは私が持っている魔法金属を出しますね」


インベントリから、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンのインゴットを取り出した。ミスリル自体はすでに見せたことがある。


「コボちゃん。アダマンタイトとオリハルコンも作れるか?」


「ゥー……、ワン!」


「そうかそうか。作れるか」


しげしげとインゴットを確認したあと一鳴きしたコボちゃん。どうやら問題なく作れるようだ。アダマンタイトとオリハルコンの元となる金属は、それぞれチタンとプラチナだ。


「折角なので、アダマンタイトとオリハルコンも作ってみましょうか」


「やっちゃおうやっちゃおう!」


「ぜひお願いするわ」


「よし、コボちゃん頼む」


「ゥワン! ワンワン!」


コボちゃんはチタンインゴットを両手で持ってこねこねし始めた。両手が発光し、インゴットがどんどん丸くなっていく。さらにこねこねが激しくなり、こねこねこねこねーっとひと際大きく発光した後、真っ黒なアダマンタイトインゴットが完成した。


「ワォーン!」


「ふおおお! これがアダマンタイト!」


「だめね。魔力の動きが複雑すぎて、もう少し解像度がないと再現は難しそうよ」


できあがったアダマンタイトは、こねこね途中の球形とは異なり、角ばった延べ板状になっている。不思議だなぁ。


やらない理由もないので、再びのこねこねタイムでオリハルコンも完成した。こちらは光を当てると虹色に輝いている。


「こっちがオリハルコン! 構造色でもないのに虹色になっているよ!」


「これは、魔力が三次元空間に干渉しているわ。魔石に近しい特性を持っている……。いえ、ドラゴンのうろこに近いのかしら」


「私が知っている特性を共有しておきますね」


MFOでどのような特性が知られていたのか、どのように使われていたのか共有しておこう。


まずはミスリル。言わずと知れた有名魔法金属だな。別名魔法銀とも呼ばれている。


その最も特徴的な特性は、魔法・魔力との親和性の高さだ。


主な使用用途は、魔法の装備――特に杖の芯材――や魔法陣の素材。


金属としての特性は鋼鉄よりやや強い程度であったので、そのままで剣や鎧を作るというのはあまりない。俺の装備で言えば、機械翼はミスリルを主に使用している。


次にアダマンタイト。これも有名だろう。特徴は硬い、とにかく硬い。それなのに粘りもある。


物理的な特性を期待して武器や防具に使われることが多い。ただし、かなりの重量があるので、総アダマンタイトで鎧を作るなどは結構むちゃだ。


ミスリルの芯材にアダマンタイトの刃を付けた魔法剣が、MFOプレイヤーには人気であった。


最後にオリハルコン。これは単体ではそれほどの性能はない。魔法・魔力の親和性はミスリルに劣り、金属としての性能はアダマンタイトに劣る。


ではなにが優れているのか。それは魔物素材との親和性の高さだ。オリハルコンは、魔物素材と合わせて使うことでその真価を発揮する。


それは、特性の付与とでも言うべき現象で、例えば、魔物の爪と合わせると切れ味が上昇したり、魔物の鱗と合わせると防御力が向上したりする。


目的に合わせてどういう組み合わせにするかが重要な魔法金属がオリハルコンなのだ。


「へぇー、なかなか面白いですね!」


「そうね。けれど、魔物素材が必要となるとオリハルコンは少し使いづらいわね。アダマンタイトは金属的性質だけなら代替するものがあるし、ミスリルが一番気になるかしら」


「でも合金にするとまた特性が変わるかもしれません! 合金特性をシミュレーションするために、いくつかやってみましょう!」


「いいわね。マーリン君、各インゴットをもう2つずつ作ってくれないかしら?」


「わかりました。コボちゃん、作れる?」


「ワンワン!」


こねこねこねこねこね!


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