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第三十九話 マナちゃんと羽布団

「パパはふりんじゃなかったの?」


「そうよ。パパは不倫じゃなかったわ」


「そっか、じゃあ一緒に寝れるね! ふりんだったらべっきょしなくちゃいけないから!」


 そんな話になっているのか『アブナイ女教師2 ライバルは子供先生!?編』は……、ちょっと気になるが、手を出すのはやめておこう。これ以上パパの尊厳を危険にさらすわけにはいかない。


「パパ、あたしもグウェンお姉ちゃんみたいに羽のお布団で寝てみたい。ダメ?」


「ダメじゃないよ。ほら、羽を生やしたから触っていいよ」


「うわぁ、ふわふわであったかーい! ママ、パパの羽、すっごいよ!」


「そうね。じゃあ今日はパパの羽で一緒に寝るのね。明日はママと一緒に寝ようね」


「え? 違うよママ。パパとママは一緒に寝なくちゃいけないんだよ? だから、パパが真ん中で、あたしとママがパパの横で寝るんだよ?」


 おっとぉ! それも『アブナイ女教師2 ライバルは子供先生!?編』に載ってたのかな!?


「そうね。じゃあ3人で一緒に寝ようね」


「ママ、無理はしないでくださいね」


「いえ、問題ありませんよ。ここはマナちゃんの言う通りにしましょう。それに羽のお布団にも興味がありますし」


 俺が気にし過ぎているだけなのか? 俺の姿が小さいマー君スタイルであることも要因なのだろうか、一緒に寝ることについてセレナさんはさほど気にしていないようだ。


「お姉ちゃんも一緒に寝ますわよ。マナちゃんの隣ですわ」


「うん、いいよ! えへへ、これでみんな一緒だね!」


「フィーネ。いくらマナちゃんと私が小さいとはいえ、さすがに4人で寝るにはベッドが小さいですよ」


「大丈夫ですわ、マー君。こんなこともあろうかと、スペシャルサイズベッドをリリーナに用意してもらっていますわ」


 寝室に1つだけ置かれたベッドが消えたと思ったら、元の4倍ほどの大きさのベッドが現れた。なるほど確かにこれなら4人でもまだまだ余裕がある。というか、こんなこともあろうかとってどんな状況を想定していたんだか。


「すごーい! お姉ちゃん、おっきいね!」


「これなら全員乗っても大丈夫ですわ」


「パパ、早く早く! こっち、ここがパパの場所ね!」


 早速ベッドへと這い上がったマナちゃんが、真ん中の辺りをぽふぽふと叩いて俺を急かす。マナちゃんなりの可愛いこだわりに、素直に従うとしよう。


「ここだね」


「ママはパパの隣のここ!」


「ふふっ、ここね」


「お姉ちゃんはこっち! あたしの隣ね!」


 マナちゃんの指示通り全員がベッドへと上がり、これで寝る準備が整った。


「後ろからマナちゃんを抱きしめますわ。マー君は羽でくるんでくださいまし」


「はいはい。ママも羽で包みますね」


「これは……、皇帝陛下が所望するのも肯けますね」


「パパのお布団気持ちいいー!」


 人数が多いので、グウェンのときよりも羽のサイズを大きくしてある。俺の右側で横になっているマナちゃんとフィーネは2枚の羽で2人まとめて包んで、俺の左側のセレナさんと俺の分でちょうど4枚だ。


「これから毎日このお布団で眠るのですわ」


「いいですけど、フィーネは自分でも生やせるでしょう?」


「自分で生やしても意味がありませんわ。マー君の羽だからいいんじゃありませんの」


「そうだよ。パパの羽だからいいんだよ。ねー」


「ねー、ですわ」


 精霊には何か感じるものがあるのかもしれない。魔力的な何かなのかな? 変な匂いとかはしていないと思う。


「さあ、もう寝ましょう。あまり遅くなると、明日の朝に起きれなくなっちゃうわよ」


「はーい、ママ。おやすみなさい。パパとお姉ちゃんもおやすみなさい」


「おやすみなさいマナちゃん」


「おやすみですわ」


「おやすみ」


 ぴったりと脇腹にくっつくマナちゃんが、寝息を立て始めるのにそれほど時間はかからなかった。マナちゃんのぽかぽかと温かい体は、俺の体だけでなく心まで温かくさせる。これが父性か。


「ふふっ、もう眠ってしまいましたね」


「そうですね。とても可愛いです。それはそうと、セレナさんにはフィーネのテキトーな発言で迷惑をかけてしまいましたね」


「そんなことはありませんよ。少し接しただけですが、マナちゃんはとても良い子ですし、普通では考えられない貴重な体験をさせてもらっています」


「そうですわ。私はセレナに色々な体験をしてほしかったんですわ」


「またフィーネはテキトーなことを」


「ぐーぐー、すぴー、ですわ」


「まったく」


「ふふっ、マーリン様が来てから、本当に毎日が新鮮で。私が魔法を使うなんて思ってもみませんでした」


「私は逆に科学の発展した世界が新鮮でしたね」


「お互い様というわけですね。とにかく、迷惑をかけられたとは欠片も思っていません。マナちゃんの親として一緒に頑張りましょうね、パパ」


「ありがとうございます、ママ」


「私の思った通りですわ。むにゃむにゃ」



 ◇    ◇    ◇



 翌朝、いつものようにフィーネのほわにょんが襲ってくることはなく、久しぶりにエアーコントロール不要の目覚めだった。


 その代わりと言っては何だが、体の上にはマナちゃんが乗っかって、右腕はフィーネに捕らえられ、ついでに左腕もセレナさんに捕まっていた。


 羽は消えていないので、全員まとめてひと塊だ。


「んっ、うぅん……」


「おはようございます、セレナさん」


「マーリン様、おはようございます……。ああ、お恥ずかしい。少し寝すぎてしまいました。この羽は魔性の羽ですね」


「そうですね。私も初めて試しましたが、これは睡眠の質が全然違いますね」


「私は起きて着替えますが、マーリン様はまだマナちゃんを寝かせておいてあげてください」


「ええ、わかりました」


「ぅぅん、ママ?」


 セレナさんが抜け出したことで余った羽をマナちゃんにかぶせてあげたところ、マナちゃんを起こしてしまった。余計なことをしてしまったかな?


「マナちゃん、もう少し寝ていてもいいよ」


「パパ、ん、ふわぁ、あたし起きるよ。おはよう、パパ」


「おはようマナちゃん」


「起きたのねマナちゃん。おはよう。こっちに来てママと着替えましょうね」


「ママおはよう。うん、着替える」


「パパが起こしてあげるね」


 体の上にのったマナちゃんを抱えてベッドを降りる。羽はフィーネの分だけを分離して、他はまとめて消した。


「はい、マナちゃん。パパは向こうで着替えるから、ママに可愛くしてもらってね」


「はぁい」


 まだ寝ぼけ眼なマナちゃんをセレナさんにまかせて、俺は俺で着替えをすませた。


 精霊は肉体を魔力によって構成しているのは前に話した通りなんだが、それは服にも当てはまる。マナちゃんもやろうと思えば、自由とは言わずもある程度の服は自分で出せる。実際に俺が召喚した際には、シンプルなワンピース――貫頭衣ともいう――を着ていた。


 ただ、それだとあまりにも質素だという意見の一致を経て、マナちゃん用の服飾が用意された。


 フィーネはというと、こちらは自分で服を自由にできる方が良いらしく、実際の服は用意されていない。その代わり様々な服のデータをもらって、毎日好きな服装をしている。


 今日のマナちゃんの服装は、さわやかなレモンイエローのワンピース。胸元に髪の色と同じ色のリボンと、髪にもウサギのヘアピンが留められていて可愛さがプラスされている。


「可愛くなったね」


「えへへ。うん、ママとお揃いなの!」


「どうしてもとお願いされまして」


 マナちゃんが言う通り、セレナさんもよく似た装いになっている。いつもは落ち着いた服が多いセレナさんにしては珍しい。ウサギのヘアピンもお揃いだ。マナちゃんの可愛いお願いにセレナさんが折れた形だな。


「さあ、準備ができたので朝ごはんに行きましょう。マナちゃん、手をつなぎましょうね」


「朝ごはん何かなー?」


「何だろうね。楽しみだね」


「うん!」


 そうしてフィーネをベッドに残して俺たちは朝ごはんに向かった。いや、なんか、誰も触れないし、流れでね?


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