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第二十二話 騎士団掌握

 カエデの質問は夜遅くまで続いた。


 最終的にストッパーのセレナさんが中断させたので、まだ続いているとも言う。


 止められたカエデはというと、そのままオランティス様のところへ突撃していった。すさまじいバイタリティだ。


 あの勢いで突撃されるオランティス様には同情を禁じ得ない。


「マーリン殿、おはよう」


「おはよう、マーリン」


「おはようございます。アクリティオ様、リリーナ様」


「オランは少し遅れる。昨日は夜遅くまでカエデにつかまっていたらしいからな」


「それでは仕様がないですね」


 オランティス様が来るまでの間、情報共有をしておく。俺からは洗脳魔法の魔法陣について、アクリティオ様からはオランティス様と話し合った内容と副官から得られた追加情報について。


「マーリン殿が回収したものが神の瞳で間違いなさそうだ。副官によれば、あれ1個だけだというから、当面は新たに洗脳される者は増えないだろう」


「それは一安心ですね。そういえば、アクリティオ様にかけられていた魔法もサーレの仕業ですか?」


「そうらしい。副官とは別の部隊によって行われたため、詳しい情報は手に入らなかったが」


「ということはまだ警戒は必要というわけですね。魔法陣を起動させる神の涙については何か情報はありますか?」


「あれは相当希少なものらしい。今回持ってきていたものも、本来ならターブラで使う計画だったようだ」


 リリーナ様への襲撃と、アクリティオ様へのデバフ魔法が失敗したことで、サーレ神聖王国の計画は大幅な変更を余儀なくされた。


 副官は自身が持つ権限において、神の瞳をアクリティオ様に使うことを決定し、カミヤワンにやってきたというわけだ。


「話を聞いていると、私が来たタイミングは紙一重だったようですね」


「まさにその通りだ。サーレではないが、天の配剤だな」


「ええ。そうかもしれません」


 実際に、神様が俺をリリーナ様の下へと送ったので、天の配剤もとい神の配剤と言って間違いはない。


「そのサーレだが、今回のことで何らかの対処が必要になるだろう」


「当然でしょう」


 サイオンジ星系のトップが狙われたわけだからな。オアランティス様とリリーナ様も入れればスリーアウトだ。


「前段階としてサーレの影響力を排除する。詳しくはオランが来てからになるが、マーリン殿にもいくつか手伝ってもらいたいことがある」


「私も襲撃の被害者のようなものですからね。喜んで手を貸しましょう」


 サーレのカミヤワンを手にするという企みが成功することはもうないだろうが、余計なちょっかいを出されると、魔法に集中できない。


 敵が明確になっているのに放置するなど甘い対応をするつもりはない。


「すまない、遅くなった」


「揃ったな。まずは朝食にして、話はまた後にしよう」


「わかりました」



 ◇    ◇    ◇



「敵の位置をマーキングしました」


「これはすごい。すぐにでも騎士団に欲しいな」


「伯父様、マーリンは魔法研究所のものよ?」


「そう怒るな。心配せずとも無理やり連れて行ったりはしない」


 今俺たちがいるのは、サイオンジ家の宇宙港にほど近い場所に設置された指揮所だ。あと俺は誰のものでもない。


 サーレ神聖王国の影響力を排除するためにも、まずは騎士団に入り込んだ敵を排除しなければならない。


 そこで俺のマップ能力の出番だ。


 遠くからだと大雑把にしかわからないが、近づけば何の問題もない。一人一人の反応を確かめて、赤色の敵反応を示す者を戦術ディスプレイ上にマーキングしていけばよい。


 情報通り、オランティス様の船では乗員の半数程度、僚機の4機は数人が敵の反応であった。


「ここまでわかれば制圧するのは容易い。マーリン殿には魔法への対応をお願いする」


「まかせてください。施設全体をマジックジャマーで覆います。私と同程度の魔法使いがいなければ、まともに魔法を使えないでしょう」


 マジックジャマーはその名の通り魔法の発動を妨害する魔法だ。


 魔法を使うには魔力を集める必要があるが、マジックジャマーはそれを妨害する。対抗するにはジャマーの術者と同程度の魔力制御技術が必要だ。


 あとはジャマーの範囲は発動時に決まるので、範囲外に逃げる方法もある。まあそれはオランティス様が防いでくれるだろう。


「へえ、これがマジックジャマーなのね。私には影響がないようね」


「ほう。リリーナには何かが感じられたのか。私にはさっぱりわからん」


「伯父様はまだ魔法使いじゃないからよ。魔法を使われたら何もわからずにやられてしまうかもね」


「確かにその可能性はある。現に気が付かぬうちに洗脳されていたわけだからな……。そういえば、ここに来たのはマーリン殿の実力を確認するためだったな。いろいろあって忘れてしまっていた」


 しまった! リリーナ様の不注意な発言によって、オランティス様がここに来た(裏の)理由を思い出してしまった。


 いやもう十分実力を示したと思いますよ? 洗脳魔法を解いたし、副官も確保したし、今も敵と味方を区別したし。


「いや。実際に手を合わせることでわかることもある。これが終わったらよろしくお願いする」


 よろしくお願いされてしまった……。


「セレナが言うには、マーリンは強いらしいわ。ふふ、伯父様は手も足も出ないかもね」


「ほう、それは楽しみが増えた。サーレの馬鹿どもの排除などというつまらんことは、さっさと終わらせるぞ」


 オランティス様を煽るのをやめてくださいリリーナ様。


 当初アクリティオ様と考えていた予定では魔法なしでオランティス様と戦う予定だったが、色々な理由を付けて魔法ありでも戦わせられそうだ。それなら最初から魔法ありで戦った方が手っ取り早い。


「わかりました。後で時間をとりますから、今は目の前のことに集中してください」


「マーリン殿は話がわかるな。やはり騎士団が性に合っているのではないかな?」


「伯父様! もう!」


「冗談はこれくらいにして、行動を開始しよう。少数組は私からの命令ということで部屋に呼び出し、拘束する。私の船に乗るやつらは副官に誘導させ、まとめて無力化する」


「まさか副官に洗脳魔法がかけられているなんて思わないでしょうね」


「国外で独立行動を許可されるほどに信仰心に厚いらしいからな。裏切られるとは微塵も思わないだろう。よし、作戦開始だ」


 まずは僚機にいる少人数組の確保から。多少不審がりながらもオランティス様の命令通りに部屋へと移動していく。偽装のために敵以外にも移動命令を出したことが良かったのか。


 部屋へ通された敵は、問答無用で気絶させ、その後は武装解除と不審物が体内にないかの調査が行われた。テキパキと動く味方の騎士団からは慣れた様子が見て取れる。


 まさにプロの仕事という感じで大変良い。


 順調に僚機の敵は制圧が終了した。あとはオランティス様が乗ってきた旗艦だけだ。


 旗艦といってもあくまで移動のための船であるので、それほど大きいわけではない。全長100メートルほどで、乗員はオランティス様と副官2名を除いて32名。内15名が赤色の敵反応だ。


「副官を搭乗させる」


 2名の副官で、敵と味方を分けて誘導する。敵にとってはこれ以上ないほど明確な分け方で当然警戒心を増すだろう。


 それでも分けるのは、人質を警戒してだ。最悪の場合、敵を部屋ごと殲滅することになっている。こわい。


「誘導が完了した。あとは無力化だが……」


「一人おかしな動きをしていますね」


 15名もいれば目の届かない所も出てくる。曲がり角を利用して集団から離れていく反応があった。


「包囲班に対応させる。施設の外には出すな」


「何か嫌な予感がします。反応が過剰ですし、仲間が揃っているのにわざわざ一人だけ離れるでしょうか?」


「普通に考えれば単独行動は愚策だな。明確な目的があれば別だが、それも手段が伴ってこそだ」


「目的と手段があるってことかしら?」


「わかりませんが、何かさせる前に確保してしまいましょう」


 逃げる敵を確認する"目"はすでに放ってある。そう、いつものフローティングアイだね。


 俺もリリーナ様のように、フローティングアイに名前を付けようかな? アイちゃんなんてどうだろうか。安直? ……いいじゃないか。


「少し行ってきます。ショートテレポート!」


 アイちゃんの視界を頼りに、敵の背後へとテレポートした。こちらに気付く前に洗脳魔法をかけ確保終了。邪魔にならないよう部屋に待機させ、包囲班に見張らせる。


「ただいま戻りました」


「はぁ……。戻りましたじゃないわよ。何してるのよ」


「逃げ出した敵を確保してきただけですが?」


「これは俺では相手にならんかもな」


 テレポートできるとはリリーナ様に伝えてあったはず。オランティス様は別として、こんなに呆れられる謂れはないはずだ。


「まったく非常識よ」


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