その1 異世界転生ってマジですか?
それはここから、とおくてちかい国。
たったひとりの少女が世界を救いました。彼女にはたくさんの仲間がいました。だけど、もう、仲間には会えません。これから、彼女を忘れてしまうから。
少女は指を組んで祈りを捧げました。
「みっちゃん……」
――どうかどうか、あなたが幸せでありますように。
ふわりと生まれた小さく淡い光が、まるで彼女の祈りが膨らむように大きな波になり、その世界を瞬く間に飲み込んでいきました。おめでとうございます。これで、世界は、救われました。
そうして、伝説の乙女のことをみんな忘れてしまいました。
■ ■ ■
眩い光を浴びて、目が覚めた。いま何時だっけ、と考えながら枕元に手を伸ばしても、目覚まし時計が近くにない。
「あれえ……?」
覚えている感覚より、お布団がふかふかしていて変な感じだ。(お泊まり先のホテルだっけ?)なんて考えてしぶしぶ目を覚ますと……急に豪華絢爛な部屋が飛び込んでくる。
バン!(お姫様のようなベッド!)
バン!(ロココ調みたいな家具!)
バン!(そして……なんだこの縦ロールは!?)
鏡に映り込んだ姿を見て、ハッと思い出す。この姿めちゃめちゃ見覚えがある。間違いない。
「ミシェル……悪役令嬢のミシェルだーーーっ!?」
そうして、ふっと、意識が飛んだ。
『ドリマジ!? 〜伝説の乙女〜』。
確か、そんな名前だった気がする。かつて……私がやっていた乙女ゲームの名前だ。
ヒロインは魔法力を見出されて入学した学園で伝説の乙女だと発覚。王国の命を受け、仲間たちとともに魔王を倒す。悪役令嬢のミシェルは、そのゲームに出てくるライバルキャラで、くるっくるの金髪縦ロールが自慢のテンプレキャラだった。多分。かなり記憶が曖昧なので自信がない。好きだったゲームとはいえ、そんなに細かく覚えてない。
夢のような魔法の使える世界観! と、いうものの、どうもうまくミシェルの記憶と前世の記憶が溶け合っていないらしく、全然しっくりきていない。
「……はー……マジか〜」
令嬢っぽくショックで失神し、ようやく2回目の目覚めをした私は、お姫様ベッドに横になったまま腕を組んで考え込んでいた。悪役令嬢。そして前世の存在。普通ならいろいろ思い出すところだと思うんだけど、前世のこと、全然覚えてない。「みっちゃん」って呼ばれていたような気はする。性別は女。乙女ゲーをやっていた。一般家庭で、わりと幸せに暮らしていた気はする。父と、母と、弟と……それから?
まだまだ考えることは山盛りだ。ため息をついたあたりで、控えめなノックの音が聞こえた。
『お嬢様、ミシェルお嬢様』
「何かしら。どうぞ」
『失礼いたします』
おお、悪役令嬢っぽい。記憶はともかく身体がしっかりお嬢様言葉を覚えていてくれたようで、一安心する。扉を丁寧に開けて部屋に入ってきたのは、なんともクラシカルな格好のメイドさんだった。
はじめまして!うっかりクリックしてくださってありがとうございます。
タイトル先行型の小説でどこまでいけるか分かりませんが、のんびり書ければと思います。
どうぞよろしくお願いいたします◎