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第9話 入試試験

 帝都に来てから約1ヶ月。


 リシア魔法大学に願書も提出してからと言うもの、ダニエルの屋敷でひたすら受験勉強をしてきた。


『クラトスがいくら強くても魔法大学の入試試験は座学の方が割合高いからな』


 リベルタ様が自信満々だった理由はきっとこの事が原因だろう。

 実技試験はさほど重視されないので、いくらドラゴンを倒せたとしても考慮はされない。


 だから俺は朝から晩まで机にかじり付き参考書を読み漁る生活を続けていたが、それも今日でおしまい。


「忘れ物はないか?」


「ああ、準備万端だよ」


 俺たちは身支度を済ませ、魔法大学へ向かう。

 今日は待ちに待った受験日当日だ。


 ダニエルの屋敷を出て馬車を使い魔法大学までやってくる。

 帝都の中央は皇帝の住うお城があり、そこから北のほうに魔法大学がある。


「2度目だけどやっぱりすごいな……」


 願書を提出する際に一度訪れたがその時も驚かされた。

 アトラス王国の王城なんかよりも敷地が広く、迷子になってしまいそうなくらいだ。


「ボサっとしないで早く教室へ行くぞ」


「ああ、すまん」


 ダニエルは特に驚くことはないみたいで少し恥ずかしくなる。

 周りを見ても驚いている人はほとんどいないし、俺が田舎者過ぎたようだ。


「ダニエル、あそこに見えるのって」


「シャーロットさんとエレノアさんだな」


 遠くを見ると参考書を読みながら歩いている2人を見つけた。

 声をかけようかと一歩踏み出した所――


「やめておけ、邪魔したら悪いだろ?」


「それもそうだな、終わってから話しかければいいか」


 受験前に集中している相手を邪魔するのは妨害行為とも捉えかねない。

 終わった後に会う事があればその時でいいだろう。


「あら、そのお姿は」


 突如後ろから天使の囁きのような声がする。

 振り返ると――


「リベルタ様ですか、余裕そうですね。ディアナさんもお久しぶりです」


「先日はありがとうございました」


 ディアナさんを連れた皇女殿下――リベルタ様が佇んでいた。

 彼女も今年受験するのだからいてもおかしくはない。


「勝負の事は覚えていまして? 約束は守っていただきますからね?」


「もちろんですよ。その為に必死に勉強をしたんですから」


 合格するだけなら自前の知識でもギリギリ合格しただろう。

 しかし勝負をするとなると満点を狙う勢いが必要となる。


「結果が発表されるのが楽しみですね、それではご機嫌よう」


「クラトス様、ダニエル様、頑張ってくださいね」


 2人は俺たちと受ける専攻が違うのでここでお別れだ。


「なんと言うか嵐のようなお方だな……」


 ダニエルが同意を求めてくるが俺にもそうとしか思えなく「そうだな」としか言えない。


 受験前に一悶着はあったが、俺たちはようやく教室へ入り座学試験を受けている。

 試験は午前と午後の少しを使って座学試験をして、最後に実技試験をする予定。


 魔法基礎の科目は本当の基礎から応用までと幅が広い。


 例えば一般的な魔導師が扱う魔法は何種類あるかなどだ。

 選択肢は4つほどあるが、この正解は3番の9種類。


 火・水・風・土・氷・雷・回復・浮遊・防御

 この9つだ。


 魔導師の中でごく稀に発現する固有能力を持つ者を何というか。

 この答えは――賢者。


 こんな感じのが初歩的な問題で、大抵の魔導師なら答えられるだろう。

 しかし後半に連れて応用問題は結構難しい。


 魔力が同等の者同士が戦った場合において、相手に勝つためにするべき行為は次のうちどれか。

 こういった問題は結構難しかった。


 ちなみにこの答えは2番の、魔力の節約をし持久戦に持ち込み相手の魔力を枯渇させるだ。

 何という不毛な戦いなんだ……


「どうだ?勝負には勝てそうか?」


「正直言って分からんが手応えはあるぞ?今の所順調さ」


 座学試験が終わったタイミングでダニエルが声をかけてくる。

 周りを見れば、実技試験の会場へすぐ移動する者や放心している者がいるなか、こいつは飄々としていた。


「俺か? そりゃもちろんバッチリだぜ?」


「聞いてないっての。でもそんな気がしてたよ」


 ニカっと笑い親指を立てるダニエルはそう答えた。

 こいつならきっと合格するだろうな。




 俺たちは闘技場へ移動してきた。

 ここでは魔法を実際に使い試験官に採点してもらう方式だ。


 具体的な試験方法魔法を使って指定された番号の的を当てる事。

 この時、威力は考慮されない。


 大学はあくまで魔法を学ぶ所であり、その中で成長していけばいいので威力は見ないが、その代わりコントロールだけは重視される。


 何故なら暴発や暴投して周りに怪我をさせるわけにはいかないからである。

 多少の魔法ならすぐに治療は出来るが、もし相手が高位の貴族であったら?


 治るから別にいいよね?では済まされないし、今年に至っては皇族が入学する。

 問題は絶対に起こせないだろう。


「次、232番の方!」


「はい」


 願書を提出した時俺とダニエルは一緒だったから受験番号も連番。

 まずはダニエルが実技試験を受ける。


「教えた通りにやれば大丈夫だからな!」


「おうよ!特訓の成果を見せてやるぜ!」


 俺はダニエルの屋敷に泊めてもらう代わりに魔法を教えていた。

 座学は出来ても実技に自信を持てなかった彼に俺はみっちり叩きこんだ。


「それではまず1番から順に当ててください」


 試験管に指示された通りにダニエルは狙う。

 最初の方は大きい的も後半になるにつれて小さくなる。


「それまで、20点中15点です」


 この点数が凄いかどうかって?

 俺が今日見てきた中では最高点だよ。

 平均して10点くらいだし、ダニエルは才能に溢れた若者だ。


「クラトス!見たかこの俺の実力を!」


「流石だな、これなら合格間違いないだろうね」


 他にも実技試験はあるが、この調子なら大丈夫だろう。

 そしてついにこの時がやってくる。


「次、233番の方!」


「はい!」


 俺はゆっくりと前に出て行った。 

 


 

 

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