第4話 裏路地にて
「本当に何でもいいんだよね?」
「え、ええ。……まさか貴方、私にハレンチな事を!?」
俺の予想外の食いつきにリベルタ様は変な勘違いをしている。
「命の恩人であろうとそのような事はさせない!」
雰囲気を察したディアナさんが杖を構えてくる。
近くでダニエルも「これはない……」と呟いていた。
「そうじゃないですよ! 私はただ職を斡旋して欲しいだけです」
魔法大学を受験するのは成り行きだが、元々は職を探して帝国に来ている。
大学に通いながら魔導師の仕事を出来たら楽しそうと思っただけだ。
「そ、それなら早く言ってください」
「全くです、あの台詞では勘違いされても仕方ありません」
顔を赤くさせて怒っているリベルタ様と息を深く吐いて杖を下ろしたディアナさんに俺は凄い咎められていた。
「クラトス様ほどでしたらきっと引っ張りだこだと思いますよ。それに高給職もあります」
帝国の魔導師事情に詳しいディアナさんがそう説明してくれた。
ならば勝負をするまでも無いような気がするが、リベルタ様はこちらの都合はお構いなしだろう。
「とりあえず、私とリベルタ殿下で魔法大学の入試試験の点数で勝負をするという事でよろしいですね?」
「ええ、いくら貴方がドラゴンを倒せるほどの実力でも入試試験は別ですから」
彼女が自信たっぷりなのはきっと理由があるだろう。
俺はまだ魔法大学の入試試験の内容を把握していない。
これでもアトラス王国で色々と勉強をしてきた身だから基礎知識はあるが、帝国の試験に通用するかは微妙なところ。
勝負の内容を決めた俺たちはすぐに帝都に向かうため馬車に乗り込んだ。
◇
帝都について彼女達は王城へ向かっていった。
俺たちは合同馬車を降りてから一度宿屋に向かおうとしていたところ。
「どうせクラトスは宿も取ってないんだろ?」
「はい、その通りです……」
職を探して来ただけに何の準備もしていない。
幸いにもお金はあるから宿に泊まるのは苦では無いが、泊まれるかすら怪しいとの事。
「この時期は帝国中から魔法大学へ受験しにくるから宿屋は一杯になるんだよ」
「まじかー。何処か他に宿泊施設か何か無いの?」
最悪野宿を覚悟していた俺にダニエルは最高の提案をしてくれた。
「ウチこいよ、宿代は要らないからその代わりに魔法教えてくれ」
ダニエルは辺境とはいえ貴族の子息で、帝都にも屋敷を保有しているそうだ。
そこに泊まっていい代わりに先ほどドラゴンを倒した魔法を教える。
「それくらいでいいならお願いしたいな」
思いがけない幸運に恵まれたおかげで俺は宿を手に入れた。
貴族の屋敷と言ってもあまり大きくは無いそうで、期待はするなとの事。
「この辺りからは少し遠いから早く行こうぜ」
合同馬車が止まったところは平民街でダニエルの屋敷は端ではあるが貴族街にあるそうだ。
距離があるからとの事で俺たちは先を急ぐ。
活気に満ちたメイン通りを歩いていく。
アトラス王国も十分賑わっていたが、帝国はそれ以上だ。
「クラトス、こっちからいくぞ」
「裏路地? 大丈夫なのか?」
メイン通りを進んでいたら人が多すぎてたどり着くまで時間がかかる。
だから近道をするために裏路地に入るとの事。
「野郎二人じゃ襲われても問題ないだろ?」
「まぁ確かに一理あるな」
お互い魔導師だし大抵の敵なら倒せる。
裏路地でカツアゲをするような輩に俺の師匠みたいな超人がいるとも考えられない。
ダニエルに連れられ俺は裏路地へ入っていく。
先ほどのメイン通りとは打って変わってジメジメとした暗い印象を受ける。
向こうが光ならここは闇だろう。
「なぁ姉ちゃん達、こんなところで何してんの?」
後方から声がしたが、予想はしていたので驚きはしない。
どこかのゴロツキがカツアゲをして来たのだろう。
「あれ?姉ちゃん?」
どこからどう見ても俺らは男だし間違える要素はない。
だけど彼らは姉ちゃんと言った。
「クラトス、どうする?」
「どうするって……ねぇ」
振り返れば女性2人が男性達5人に囲まれていた。
きっと俺たちが入っていくのを見てついていけば安心とか思ったのかも知れない。
「まぁクラトスが助けないって言っても俺はやるけどな」
「別に助けないとは言ってないだろ」
杖を抜き俺たちはその現場の方に向かって歩いていく。
「お楽しみのところ悪いんですけどちょっといいですか?」
ニコニコと笑顔のままダニエルが声をかけた。
こちらに気がついたゴロツキの男性が睨みつけてくる。
「お前達には用はないから去りな 大方魔法大学を受けに来た田舎もんだろ」
大正解だわ。このゴロツキ頭もキレるよ。
そんなことを思っていたらダニエルが容赦無く魔法を使い攻撃を開始する。
「田舎っていうなあああ!」
風魔法で女性達を傷つけないよう狙っていたのだが――
「これくらいの魔法で無理すんな」
ゴロツキ達が杖もなく魔法障壁を展開しダニエルの攻撃を無力化してしまった。
「まさかの実力者かよ」
口を大きく開けて驚くダニエルをよそに俺は感心していた。
魔法は選ばれしものしか使えないはずが、裏路地で屯しているゴロツキにも使える。
それ程帝国は人材が豊富なんだろう。
ダニエルとゴロツキの攻防を見守っていた時――
「隣の人も見てないで助けてよ!」
襲われかけていた女性から名指しで助けを求められてしまった。
言われるや否や俺は杖を構え攻撃準備に入る。
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