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第24話 マルローの災難②

 マルローが正式にアポイントを取れたのは到着してから1ヶ月が過ぎていた。

 しかし、それはあくまで魔法大学への立ち入りが許可されたに過ぎない。


「何故お前がついてくる?」


「何を当たり前の事をおっしゃるのですか? 監督係がいるのは当然でしょう」


 立ち入りの際、マルローを熨した警備の者が同行している。

 正式にアポイントを取ったと言っても、彼は信用に値する人物ではなかった。


「それで、どこにいけばいいのだ?」


 魔法大学について全く知らないマルローは仕方なく警備の者に尋ねる。

 目的の人材確保については既に知らせてあった。


「キャンパス内にあるキャリアセンターに行けばよろしいかと。そこでしたら就職先を探す学生が訪れているでしょう」


 リシア魔法大学の生徒はエリート中のエリートだ。

 だが、そんなエリートでも在学中に落ちこぼれてしまう者は少なからずいる。


 彼らの支援をするのが、今からいくキャリアセンター。

 成績・性格に少し癖のある人物が多いと言う事をマルローはまだ知らない。


「案内してくれ。それとできる限り優秀な人材を斡旋しろ」


 傲岸不遜な態度に不満を感じつつもおくびにもださない。

「分かりました」と返事をしつつ、スタスタとキャリアセンターへ向かった。




「魔法大学とはこれ程とは……」


 キャリアセンターについたマルローは就職活動中の生徒のプロフィールを閲覧していた。


 一番に驚くのは魔力量だ。

 アトラス王国では上限が999までしか測れないのに対して、リシア帝国は9999。

 

 プロフィールの時点で度肝を抜かれ歓喜に満ち溢れていた。

 そんな彼を見て警備の者はドン引きしている。


 確かに魔力量は多いが、成績が頗る悪いのだ。

 彼自身も魔法大学を卒業している身であるため、成績の平均は知っている。


 マルローが成績に触れる事なく喜んでいて理解ができなかった。

 むしろこの生徒を引き取ってくれるなら良いかもしれないとすら思い始めている。


「他の生徒も見ていいか?」


「え、ええ……構いませんよ」


 キャリアセンターの職員も若干引きつつ、今度も成績の悪い者を斡旋する。

 もちろんマルローは歓喜に満ち満ちていた。


「何と素晴らしいのだ! これなら陛下も大層喜ばれるだろう!」


 何としても彼らを雇うと決心したマルローは後日に彼らと面接をすることになった。

 






「おかしい……何故誰も頷かないのだ……」


 隣国とは言え宮廷魔導師の募集であるはずが、誰1人として条件を飲もうとしない。

 面接をしても給与面や待遇で文句を言い、結局のところうやむやになってばかり。


「マルロー殿、その待遇は本気だったのですね……てっきり冷やかしかと」


 警備の者が待遇について書かれた紙を拾い上げ確認する。

 そこに記されていたのは、低賃金・長時間労働を示唆する文。


 アトラス王国とリシア帝国では魔導師の扱いに差があり過ぎた。

 いくら落ちこぼれとは言え、ここまで酷い条件で働くならば実家に帰って田舎の街で魔導師をした方がマシだ。


「これのどこがおかしいと言うのだ! これでも譲歩しているのだ!」


 そう力説するマルローに内心で『えぇ……』とドン引きした。

 アトラス王国はこれ程まで魔導師を蔑ろにした国かと思うと、今までよく滅ぼされなかったとすら思う。


「他に人材はいないのか!」


「この条件を飲む人はこの大学にはいないかと……」


 バッサリと切り捨てられたマルローは舌打ちをしていた。

 帝国にはリシア魔法大学以外にも大学は存在するが、帝都にはない。


 警備の者は地方都市の大学を進めるかを躊躇う。

 ここより大分ランクが下がるところならば、条件を飲むかもしれない。


 しかし、隣国のためにそこまでしてやる義理はない。


「どいつもこいつも! やってられるかっ!」


 怒りがピークに達したマルローは立ち上がり、魔法大学から出ていこうとする。

 この時モノに当たったり人に当たったりしないのは前回のトラウマがあったからだ。


 正門を出て、宿に戻ろうとした時の事だった。


「貴方がアトラス王国の宮廷魔導師団長マルロー・グラナード様ですね?」


 背後より誰かに呼び止められ、マルローは振り向く。


「いかにも、お前は何ものだ?」


「貴方様にお願いがございましてお声がけさせていただきました。もちろん謝礼は致します。例えば――優秀な人材とか」


 全身をローブで纏った怪しい男は、マルローの目的を把握していた。


「何故それを知っている?」


「私は全てを把握しています。どうですか?興味がございましたらこちらに足を運ばれてはいかがでしょう」


 ローブの男は折り畳まれた紙をマルローの足下へ放り投げた。

 警戒しつつその紙を拾い上げると、中には地図が記されている。


「ふん! 興味が湧いたら行ってやる」


「ええ、お待ちしております」


 紙を懐にしたまったマルローは足早にその場をさる。

 残された男はと言うと――


「マルロー・グラナード、何とも哀れな人間だ。けれど見ていて不思議と飽きない。最後までボクを楽しませてくれたらいいな」


 そう言い残し、そのローブの男は一瞬にして姿を消した。

次話は明日の7時台になるかと思います!

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