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第22話 解決

昨日は更新1つですみませんでした。

 リシア魔法大学では毎年トーナメントが行われているため、設備は十分だ。

 客席に間違って攻撃が飛んでいっても障壁が展開される。


 つまり――遠慮はいらないと言うこと。


「死になさい!!」


 開始早々にテミスさんは多彩な攻撃を仕掛けてくる。


「……死になさい?」


 決闘で死人が出る事はごく稀にある。

 しかしそれらも事故であり、故意的に殺すなんて普通はあり得ない。


 彼女の攻撃を魔法障壁を展開し防御した。

 実力自体は年齢を考えれば、アトラス王国の宮廷魔導師を越えている。


「あの女子生徒嘘だろ!?」


「あれで魔導工学を専攻してるのかよ」


「トーナメントに出てこないで助かるな……」


 客席にいる魔導戦術を専攻している生徒は驚いたり、安堵したりと様々な反応を見せる。


「思ったよりやるわね。でもこれならどうかしら?」


 先ほどと違い、彼女は氷・風魔法を同時に展開し攻撃に移る。

 それぞれ単独で使用するのではなく二つを合わせた複合攻撃。


 竜巻の中に尖った氷を混ぜ、それで相手を飲み込む。

 実力が拮抗していれば障壁を効率よく削り、魔力切れを狙える。


「その年で複合魔法を使えるなんてすごい才能だね。今後が楽しみだ」


「これも効かないの!?」


 確かに凄いがそれはきっと学生の中ではの話。

 世の中には彼女の遥か上をいく魔導師が何人も存在している。


 その中に俺も入ってくるが、真の実力者はきっとミダス師匠だ。

 無限の魔力で手も足もでなかったのは苦い思い出だと振り返る。


「あの教師涼しい顔してるぞ……」


「化け物か……」


「どっちもハイレベルすぎんだろ」


 少しばかり物思いに耽っていたが、周囲の声で意識を戻す。

 テミスさんの攻撃も少し落ち着いてきたので、こちらも反撃だ。


「あんまり女性に手を出したくないんだけど仕方ないか」


 出来る限り傷が残らない方法で攻撃を仕掛ける。

 

「くっ!これくらいどうって事ないわよ!」


 少しだけ手加減が過ぎたか、全て障壁で守り切られてしまう。

 

「うん、この手にしよう」


 今の攻撃で彼女を傷つけないでかつ、勝利する方法を考えついた。

 それは相手の魔力切れを狙う事だ。


 彼女の攻撃を防御し続けるより、こちらが仕掛け障壁をどんどん展開させれば早い。

 

 思い立ったが吉日、いくつもの魔法を展開し攻撃を仕掛けた。


「きゃっ!」


「やばっ!?」


 やり過ぎたかと思い、一度攻撃を中止し様子を見る。

 流石に即死するほどの攻撃は仕掛けていないが、あたりどころが悪いと言う可能性も捨てきれない。


 彼女を中心に砂埃が舞っていてあまり様子が見れない為、少々危険だが近づいてみる。


 その時だった――


「油断したわねっ!」


 砂埃から勢いよく飛び出し、距離を詰められた。

 魔導師は基本的に中距離以上で戦うのが基本。


 距離を詰められると、攻撃の際に自分にも被害が出る。

 しかしそれは相手にも言える事。


「油断したのは君の方だけどね」


 至近距離で氷魔法を使ってきたが、それらを障壁で守りつつこちらもカウンターを入れる。


 テミスさんは反撃されるとは思ってもいないのか、障壁は展開されておらず、こちらの攻撃は簡単に届いた。


「きゃああああ!」


 今度は演技ではなく本当の悲鳴だろう。

 とは言っても身体が痺れて動けない程度の雷魔法で、後遺症どころか怪我もないはずだ。


 すっかり砂埃も晴れ、客席からも状況がよく見える様になった。

 テミスさんが床に倒れ、その近くで俺がたたずんでいる。


「そこまで!」


 どこからともなく女性の声が闘技場に響き渡った。

 声のする方へ視線を向けると、こちらに近づいてくる2人が映る。


「ディアナさんにリベルタ様……どうしてここに?」


「詳しい事は医務室でお話ししますので、テミスを回収させてもらいます」


 ディアナさんの言葉に頷くと、彼女はテミスさんを抱きかかえ闘技場から去っていく。


「何ボーッとしているのですか?貴方も来てください」


 リベルタ様に促され、俺も彼女達の後を追う。

 闘技場から出るまでの間、客席にいる生徒から拍手が送られていた。







「この度はテミスが――私の妹がご迷惑をおかけしました」


 テミスさんをベッドに寝かせた後、ディアナさんは俺に向き合い深く頭を下げた。


「いえ、気にしないでください。それにしてもテミスさんがディアナさんの妹だとは……だから見たことがあった様な気がしたんですね」


 2人を見比べると姉妹である事がよくわかるほど、似ていた。


「ちょっとお姉様!私は悪くないです!この人がリベルタ様を侮辱したから――」


「それはテミスの勘違いですよ。私がこの方に憤りを覚えたのは、リシア魔法大学をその場のノリで受験しようとした態度にです」


 そう言えばドラゴン退治の時にその様なやりとりをした気がした。

 リベルタ様を侮辱するような事は断じてしていない。


「え?じゃあ私の勘違い……なの?」


「テミスが勘違いしたのもあるけど私の伝達ミスも原因ね。クラトス様重ねて謝罪をさせてください」


 ディアナさんは再び頭を下げ謝罪をする。

 

「ディアナさん頭を上げてください。この件はこれで終わりにしましょう!」


「いいえ、まだやるべき事が残っていますよ」


 そう発言したのはリベルタ様。

 彼女の言うやるべき事というのは――


「テミスと貴方の勝負の際に賭けをしたそうですが、私との勝負はうやむやのままです。どちらもこの場で清算してこそ終わりと言えます」


 テミスさんとの賭けは問題ない。

 俺の勝ちで満場一致だ。


 それに俺が勝った場合は今後大人しくしてくれるだけ。

 誤解が解けた今、命令しなくとも落ち着きそうだ。


「それで、リベルタ様との賭けはどうしましょう?同点とのことで引き分け?」


「でしたらお互い勝った際の条件を飲むのはいかがでしょうか?」


 リベルタ様は引き分けを許してくれない様子。

 なので、俺は魔法大学を軽んじたことを頭を深く下げ誠心誠意謝罪した。


「もう貴方がこの大学を侮辱する事はないでしょうし、許します」


 謝罪を受け入れてもらい、こちらの一件は解決した。

 次はこちらの勝利した際、なんでも一つお願いを聞いてもらえる事。


「私の願いは既に叶っていますので保留と言う事でお願いします」


「分かりました、機会が来ればその際に言ってください。で・す・が!ハレンチな願いだけは絶対に却下ですからね!!」


 リベルタ様が声を荒げながら念を押してくる。

 皇族を相手にそんな事ができる人間なんて馬鹿しかいない。


 俺は自分の命が惜しいのでそんな命令はする気はさらさらない。


 ひとまずテミスさんの一件は解決した。

 まだゼミ生の事や勇者と思われる人物の捜索などやる事が山積みだ。


 一つ一つ解決していこう。

面白かった・続きが読みたいと思って頂ければブックマークと下の方にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から好きなように評価して頂けると嬉しく思います。


次話は明日の7時台に投稿予定で、内容はマルローの方になります。

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