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第94話「――というわけだったのさ!」(キリッ!

「――というわけだったのさ!」


 王宮に帰るなりアリスベルとフィオナの前に引っ立てられた俺は、巨悪を正した今日の課外勇者活動について自信満々にキリリと報告した――んだけど。


「勝手に王宮を抜け出して散々みんなに心配かけたあげくに、おにーさんはいったい何をやってるのかな……」

「勇者様は可愛い女の子と見ると本当に見境なしですね……」


 なぜかアリスベルもフィオナもあきれ顔だった。


「いやだから、正義の課外活動をしてたんだけど……?」


 あれれ~、おかしいな~?

 反応がやけに淡白なんだけど?


「あのね、おにーさん。ボリフェノール侯爵とエチゴ屋については最近かなりきな臭い噂があったから、近々大々的な強制捜査をする予定だったの。この前、査察部が出してきた報告書にそう書いてあったでしょ?」


「査察部の報告書……なにそれ?」

「読了箱に入れたあったのに、もしかして読まずに入れてたの?」


 アリスベルがジト目で睨んでくる。


「……あ、はい。その、実は読んでおりませんでした……」


 うげぇっ!?

 報告書を読まずに読了箱にポイっとしていたことが、なぜかこのタイミングで盛大にバレてしまったんだが!?


「もう、どうせそんなことだろうと思ってたけど。アタシとフィオナさんで後から全部チェックしておいて良かったよ」


「アリスベルさんの予想していた通りでしたね」


「だっておにーさんだもん」

「ですよね」


「い、以後気を付けます……」


 俺の知らないところで手抜き仕事の後始末をさせてしまっていたことへの申し訳なさから、俺は2人に向かって深々と頭を下げた。


「まぁでも、こうやって解決したならいいんだけどね。そこは間違いなくおにーさんの手柄だし。ミズハさんも(ばあ)やも無事でよかった」


「ですね。さすがは勇者様です」


「だろ? ま、俺にかかればざっとこんなもんよ。なにせ勇者で国王だからな」

「あ、またすぐそうやって調子に乗るし」


「ですがアリスベルさん。調子に乗らなくなった勇者様は、それはもう勇者様とは言えないのではないでしょうか?」


「あ、たしかにそーだね。調子に乗らないおにーさんは、もうそれおにーさんじゃないよね」

「ですよね♪」


 アリスベルとフィオナが、俺のなんとも微妙な話題で盛り上がり始める。

 そんな2人の様子を見て、今回の報告が一段落したことを俺は感じ取っていた。


「じゃあ俺は一日外に出て汗をかいたし、風呂でも入ってこようかな――」


「いいけど、今日の仕事が全部終わったらね」

 笑顔一転、アリスベルがピシャリと告げた。


「……え?」


「だって今日のおにーさんの仕事、全部残ってるから。それが終わったらね」

「いや、もう暗くなってきたしお風呂に入りたいかなって……」


「今日中におにーさんの承認が必要な書類は先に取り分けておいたから、後はおにーさんが王印を押すだけ。お風呂に入ったらどうせ疲れたーとか言って寝ちゃうでしょ?」


「……」


 俺は人生の儚さをひしひしと感じていた。

 国家を二分する内乱の火種を消し止めたっていうのに、またハンコ押しかよ……。


「急に黙ってどうしたのおにーさん?」


「ぐすん、分かったよ……でも頑張ったら後でえっちしてくれる?」


 今から仕事なのはもう諦めた俺は、しかしタダでは転ばないとばかりにチラッと上目遣いで可愛くお願いをする。


「はいはい、頑張ったらね」

「マジか!」


「せっかくだし今日はフィオナさんと3人でお風呂で楽しんじゃおっか? そういうご褒美があれば、おにーさんも少しはやる気が出るよね?」


「ふははは、全てはこの俺に任せておけ! 俺はやる時はやる男だからな! 3人でお風呂と聞いて、俺の心は今熱く燃えたぎっているぞ!」


「はいはい、頑張ってね」



 そして仕事を全て終えた後。

 石鹸の泡々でふわふわにされた下半身を、お手てで優しくキュッキュされたり。

 身体全体を泡々にしたアリスベルとフィオナに、ぬるぬるにゅるにゅるサンドイッチされたり。


 今日もクロウとアリスベルとフィオナは、えっちっちな夜の勇者活動に精を出したのだった。



 またミズハは前王家の血を引いていることから、いつまた悪い奴らにその高貴な生まれが利用されるか分かったものではない。

 よって国王であるクロウ付きの上級メイドとして、身分を隠して婆やとともに王宮で過ごすことになった。



(―ミズハ編― 完)

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