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第78話 アフターストーリー2 第二王妃フィオナ(2)

「これはこれはフィオナ様、本日はお日柄もよく、相も変わらず壮健なご様子でなによりでございます」


 フィオナの少し手前で壁際に寄って道を開けた農林水産大臣が、挨拶の口上とともに深々とお辞儀をする。


「ありがとうございます大臣、あなたもお元気そうで何よりですね」


 フィオナはちょっと王妃っぽい口調でそれに答えた。


「あたたかいお言葉、心に染み入るばかりにございます。それはそうとして、先だっては季節外れの大型台風が来ることを予知していただき、誠にありがとうございました」


「あの情報はお役に立ったでしょうか?」


「それはもうもちろんですとも!」


「は、はい!」


 大きな声で食い気味に言われたフィオナは少しびっくりして目を見開いた。


 縁側で日向ぼっこする好々爺のような穏やかな物腰の農林水産大臣が、こんな風に感情を露わにするのを見るのは初めてだったからだ。


「これは大変失礼をいたしてしまい、申し訳ありませんでした、フィオナ様。つい大きな声を出して驚かせてしまいました」


「いえ、どうぞお気になさらず」


 かつて騎士として何度も戦いの場に出たフィオナは、大きな声には割と慣れている。

 むしろ戦場では聞き間違いがないように、大声で怒鳴るように指示をしたり会話をするのが当たり前だ。


 ただちょっと、物静かな農林水産大臣が大声を出したからびっくりしたのだった。


「フィオナ様の予知のおかげで今年の田植えの時期を遅らせることができ、そのおかげで苗が洪水で流されて無駄になることがなく済んだのです。それもこれもフィオナ様の素晴らしき未来予知の賜物です。私だけでなく、民はみな喜んでおりましたぞ」


「それは良かったですね」


 言ってフィオナはにっこりとほほ笑んだ。


 王宮に来てしばらくの間は肩身の狭い思いをしてきたフィオナとしては、こうやって自分の力を誰かに褒められるのはとても嬉しいことだった。


「私だけでなく、改修が間に合っていない暴れ川に台風に先んじて土嚢を積み上げて臨時の堤防とすることで、街への被害を最小限に抑えられたと国土建設大臣も感謝しておりました。彼に代わって改めて感謝の意を述べさせていただきます。ありがとうございました」


「そうは言っても所詮は急場しのぎなので、秋の本格的な台風シーズン前までに河川の改修が間に合えばいいですね」


「まことフィオナ様のおっしゃる通りです。国土建設大臣に聞いた話では先日クロウ王の承認も下りたとのことなので、王都の復旧にある程度目途がつき次第、同時並行して改修作業も行っていく計画とのことのようですぞ」


「それはなによりですね。ところで勇者――えっとクロウ王に用事があったのでは?」


 フィオナは勇者様と言いかけて、すぐにクロウ王と言いなおした。

 クロウと2人きりの時は昔ながらに勇者様と呼ぶが、対外的にはクロウ王もしくは陛下と呼んでいる。


 ちなみにアリスベルは今でも人前でも平気で「おにーさん」と呼んでいるが、根が小心者のフィオナには、なかなかそこまで自然体でいるのは難しかった。


「おっと、これは少々長話が過ぎましたな。お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。それと、もしまたなにか未来を予知されることがありましたら、どうか我々にもお教えいただけましたらこれに勝る幸せはございません」


「はい、また何か予知したら伝えますね」



 などと、農林水産大臣とそんな立ち話をしてからフィオナは再び自室に向かって歩き出した。



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