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第31話 新たなる討伐依頼(上)

 翌日から数日の間。

 アリスベルが整体のお仕事をしているのを、俺は何をするでもなくボーっと部屋のすみっこで眺めていた。


 愛するアリスベルのために最初はなにか手伝おうと思ったんだけど、素人の俺には手伝えることが何にもなかったんだよな。

 むしろ余計なことするほうが邪魔だったというか。


「まあ腰痛で追放されて森で行き倒れて。アリスベルに腰を治してもらったと思ったらキングウルフにグレートタイガー、さらにはギガントグリズリーと連戦続きだったわけだし。ならこうやって少しゆっくり過ごすのもありだよな……」


 俺は自分で淹れたお茶を飲みながら、笑顔でお仕事をするアリスベルを眺める。

 好きな女の子を見ていると、それだけで幸せな気持ちになれるよね。


 俺は追放されて以来初めて、心身ともにゆっくりと休まるのどかな時間を過ごしていたのだった。


 そんなまったりとスローライフを満喫する俺の前で、腰が痛くて痛くてたまらないという近所のお婆ちゃん患者の腰を、アリスベルがグギャァ!と捻る。


「あqwせdrftgyふじこlp;!?」


 お婆ちゃん患者はこの世のものとは思えない悲鳴をあげた。


「さすがに大丈夫かこれ? 勇者の俺と違って相手は高齢のお婆ちゃんだよ? 骨も脆いだろうし、下手したらショック死とかしないのか!?」


 しかし俺の不安をよそにお婆ちゃん患者はすっかり腰が良くなったみたいで、元気な足取りで帰って行ったのだった。

 来るときは杖をついて片足を引きずっていたっいてうのに、やっぱりすごいなアリスベルの整体術は。


 俺の腰もすこぶる快調だし。

 そんなことを考えていると、


「お忙しいところ失礼いたします、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


 もうすっかり顔なじみとなった女騎士のフィオナがやって来た。

 仲良くなっても相も変わらずの丁寧な言葉づかいで、そしていつも通りに軽装の騎士鎧をつけているから十中八九、仕事中なのだろう。

 

 そして真面目なフィオナがサボるわけはないので、なにかしら用があるはずだ。

 当然用があるのはアリスベルではなく俺だろうから、また討伐の依頼でも持ってきたのかな?


 ちょうどアリスベルも最後の患者に整体し終わったようで、患者を笑顔で玄関まで見送ると、


「フィオナさんこんにちは~、どうぞゆっくりしてってね」


 明るく挨拶をしながら玄関の営業中の看板を裏返して休業中にし、ガチャリと施錠すると、俺たちのところにとてとてとやって来た。


「実は勇者様に討伐の依頼があって参りました。森の東端の辺りで上級の魔獣が多数出没しており、それを討伐していただきたいのです」


 やはり俺の見立て通り、フィオナがやってきたのは魔獣の討伐依頼のためだったか。


「なるほどね、了解だ、引き受けよう。森の東の端ってことは、エルフ自治領とセントフィリア王国の境目らへんだよな?」


 俺が追放されてエルフ自治領に流れてきた時に通った森を通る街道が、たしか位置的にちょうどそのあたりのはずだ。


「左様にございます。現在私の所属する東部管区・特務警護騎士団・第1軍団から編成された討伐部隊が先行して周辺に展開。当該地域の安全を確保しつつ情報収集をしております。皆きっと勇者様の到着を心待ちにしていることでしょう」


「エルフ自治領に被害が出てて、隣接するセントフィリア王国には魔獣の被害は出てないのかな?」


 俺は特に深い意味もなく、ただ状況を確認するために尋ねたんだけど、


「それがここ最近セントフィリア王国の情報統制が厳しくなっておりまして、エルフ自治領にはほとんど情報が入ってこないんです」


 フィオナからは驚くような答えが返ってきた。


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