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第24話 場の雰囲気

「おにーさん! すごい! 超カッコよかった!」


 ギガントグリズリーが消滅し、俺がカッコよく勝利宣言したのを見て、アリスベルが一目散に駆け寄ってきた。

 そのままダイブするように抱きついてくる。


「だろ? 俺も結構いい感じの勝利の決めゼリフだったと思うんだよな」


 ドヤ顔で言った俺に、


「あーえっと、最後のあれはカッコつけすぎで微妙だったかも? 特に髪をかき上げるところは若干ちょっと痛々しかったかなって……」


 アリスベルが困ったように小さく言った。


「あ、そう……痛々しかったか……」


「でもでも! 戦ってる時はすごくカッコよかったよ。攻撃が効かなくても全然諦めなくて、しかも最後は超必殺技を3連発して有無を言わさぬ大勝利! 惚れなおしちゃったかも」


「おっ、そんなにか! 俺も頑張ったかいがあったな。ま、あれくらいの相手なら俺なら余裕なんだけどな。こう見えて俺って魔王を討伐した勇者だから」


「今日は本当にそう思ったかも。おにーさん、お疲れさまでした」

 そう言ってアリスベルはちゅっとほほに口づけてくる。


 ふぅやれやれ。

 俺のアリスベルが可愛すぎる件について、誰かに語って聞かせたい気分だよ。


 今度フィオナにでも聞いてもらおうかな?

 フィオナならのろけ話を延々聞かせても、文句も言わずに最後まで聞いてくれそうだし。


 そのフィオナはというと、


「あれほど高威力の超必殺技を連発できるとは……このフィオナ、勇者さまのお力に心の底より感服いたしました」


 俺の前で片膝をついて騎士の礼を取ると、目をうるませながら俺を見上げていた。


「うむうむ苦しゅうないぞ、もっと褒めてくれ。あ、あと立ってくれていいよ。背筋を伸ばしながら見上げる姿勢はしんどいし、俺はあまり偉そうにするのは好きじゃないから」


 でもアリスベルが見ているからね。

 ここぞとばかりに褒めに褒めて褒めちぎってくれたまえ。


「つきましてはぜひともエルフ自治政府の行政長官と、エルフ自治領統括総合騎士団長にお会いしていただきたく思うのですが、いかがでしょうか?」


 フィオナは立ちあがるとそんな提案を出してきた。


「自治政府の行政長官と統括総合騎士団長に? 名前から察するにエルフ自治領の行政トップと軍部トップだよな?」


「左様にございます。これほどの力を持った勇者様を市井(しせい)に放っておいたとなれば、エルフは末代まで笑いものになることでしょう。ぜひともエルフ自治領の軍事と行政のツートップにお会いしていただきたく」


「まぁ俺は市井に放っておかれたどころか、セントフィリア王国を追放されたんだけどな……追放されて行く当てがなくなって、実質独立国家と変わらないエルフ自治領まで流れてきたんだし」


「ここまで私なりに勇者さまの人となりを見ておりましたが、とても追放されるような方とは思えませんでした。いったいなにがあったのかお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「話せば長くなるんで短くまとめるけど」


「はい」

 ごくりとフィオナが喉を鳴らした。


「腰痛が悪化して追い出された」

「はい」


「……」

「……えっとそれでその後はどういう経緯があったのでしょうか?」


「いやそれで終わりだけど」

「そ、そうですか……」


 フィオナがなんとも微妙な表情になった。


「ちなみに腰痛の方はアリスベルに治してもらって、今はすこぶる快調で何の問題もない。ただ、身体が悪い時の状態を記憶しちゃってるらしくて、しばらくは定期的に腰のメンテナンスをしてもらわないといけないそうだけどな」


「アリスベルさんがですか?」

 フィオナがアリスベルに視線を向ける。


「アリスベルは近所でも評判の整体師なんだよ。追放された俺が森で行き倒れていたところに偶然通りかかったアリスベルが、その場で診察して治してくれたんだ。だからアリスベルは俺の命と腰の恩人なんだ」


「なんと! アリスベルさんは勇者様の命を救ったお方だったのですね! 勇者様がこうまでアリスベルさんに入れ込まれるのにも納得です。ぜひともアリスベルさんも勇者様と一緒に、行政長官と統括総合騎士団長にお会いしていただければと」


「って話なんだけど、アリスベルはどう思う?」


「ここでアタシに振る!? 超偉い人と会うとか会わないとか、そんな話をアタシに聞かれてもわかんないんだけど」


「もう俺とアリスベルは既に運命共同体だからな。ここはアリスベルの判断に従うよ」


「またさらっと既成事実化してるし! しかも運命共同体とかなんとか、さらに進んじゃってるし!?」


「それでアリスベルさんとしては、先ほどの提案はいかがでしょうか?」

 俺の言葉を受けたフィオナがアリスベルに問いかけた。


「ええっと……」

 俺とフィオナの視線がアリスベルに集中する。

 アリスベルはフラフラと少し視線をさまよわせた後、言った。


「じゃあ会うってことで……」


 相変わらず場の雰囲気に流されやすいアリスベルなのだった。


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