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第22話 ギガントグリズリー討伐戦(上)

 森の中から現れた巨大な魔獣――それはグレートタイガーよりもさらに一回り大きな、巨大な熊の魔獣だった。


「何度か見たことあるな。たしかギガントグリズリーって言ったか? でもここまででかいのを見るのは初めてだぞ。大物だな、立ったら7メートルはあるんじゃないか?」


 グルルルルルルルルルルル――――ッッ!!


 『破邪の聖剣』を構える俺に向かって、ギガントグリズリーが威嚇するように唸る。

 その目は完全に俺だけを捉えていた。

 怒りに染まった真っ赤な瞳が、俺を射殺さんとばかりに強烈に睨みつけてくる。


「『破邪の聖剣』は高位の魔獣をイラつかせる嫌な波動を出してるらしいからな。グレートタイガーとの戦いで力を使った時に反応して引き寄せられたってわけだ。ま、俺を狙ってくれるのは楽なんだけどな」


 少なくとも俺が相手をしている限り、アリスベルとフィオナに危害が及ぶことはないだろう。


 互いに少し間合いを測っている間に、すぐにスキル『勇者スカウター』がギガントグリズリーの強さを測定してくれた。


「おいおい、まさかSSランクとはな。昔戦った魔王の四天王レベルじゃないか。しかしどういうことだ? こんなエルフの生活圏に近いところにいていいレベルの魔獣じゃないだろ」


 強い魔獣は危険なので、必ず討伐対象になる。

 それがSSランクの魔獣ともなれば、勇者パーティや軍団規模の騎士団が対処に当たるレベルなので、当然放っておかれるはずはなかった。


 しかしフィオナはギガントグリズリーについては一言も言っていなかった。

 一泊した町でもギガントグリズリーが出るなんて話は全く聞いていない。


 つまりこの魔獣はごくごく最近この辺りにやってきたのだ。


 そもそもさっき倒したグレートタイガーにしても、この前倒したキングウルフにしても、最近急に出るようになったとアリスベルは言っていた。


「魔王が現れると、魔王に影響されて魔獣が活性化し、サイズも強さも強大化するって話があったけど、まさかな?」


 魔王はあの最終決戦の時に俺が確実に討伐した。

 だから魔王の影響ではないはずだ。

 だとしたら――?


「ま、それについては今考えても仕方はないか。まずは目の前にいるこのSSランクのギガントグリズリーを倒すのが先決だ。面倒ごとはさっさと片付けるに限る」


 俺は足に膨大な勇者パワーを込めると、ほとんど予備動作もせずに一気に踏み込んで間合いを詰めた。

 そして『破邪の聖剣』をギガントグリズリーの胸へと叩き込む!


 電光石火の強烈な先制攻撃。

 グレートタイガーなら今ので上半身が爆散して吹っ飛ぶであろう、激烈なる一撃はしかし、


 ガキン!


「くっそ、硬いな!?」

 ギガントグリズリーの鋼のように硬い剛毛によって、弾き返されてしまっていた。


 グルゥァァッッ!


 今度はお返しとばかりに、ギガントグリズリーが巨大な爪を振り下ろしてくる。

 俺はそれをギリギリで回避しつつ、もう一度『破邪の聖剣』で斬りかかった。


 ガギン!


 しかしその攻撃も、再び同じように剛毛によって弾き返されてしまう。


 その後、俺は機動力で有利な状況を作りつつ、隙を見ては何度もギガントグリズリーに攻撃を打ちこんだもののの、


「SSランクだもんな、やっぱこれくらいの通常攻撃だとさっぱり通らないか」


 いまだにほとんど効果的なダメージを与えられないでいた。


 俺が完全に手詰まりになったと見て取ったのだろう、ギガントグリズリーの攻撃が激しく苛烈になりはじめた。

 俺の攻撃では防御を貫通できないとわかり、防御を捨てて攻撃一本鎗で強引に攻め込んできたのだ。


 その嵐のような攻撃を俺は『破邪の聖剣』で必死にしのぐ。


「この野郎、調子に乗りやがって……アリスベルが見てるってのに……俺は今かなり怒ってるからな!」


 俺はアリスベルの前でこうも苦戦させられてしまい、これ以上なく怒り心頭だった。

 このクマ野郎だけは絶対に許さないと強く心に決意していた。



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