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第16話「嫌ならやめるけど?(チラッ)」 「じゃあ今すぐやめてください(素)」

 その夜、俺たちは宿に一泊した。


 気を利かせてくれたのだろう、俺とアリスベルは同室で、フィオナは隣の部屋という部屋割りだった。


「ご飯は美味しいし、お風呂は近くの温泉から引っ張った熱々の源泉かけ流しだったし。いい宿だなぁ」


 俺のつぶやきに、


「どう考えてもおにーさんが勇者だから、フィオナさんが奮発していい宿をとってくれたよね」


 アリスベルが苦笑しながら答えてくれた。


「やっぱりそう思った?」


「魔王を討伐した勇者相手に下手は打てないって感じかな? 発言する時も、フィオナさんはおにーさんにすごくへりくだってるし」


「勇者って別にそんなにかしこまる存在でもないんだけどな。魔獣討伐は勇者としての責務みたいなもんだし、旅が長いから野宿するのにも慣れてるしさ。パサパサで味気ない携帯食だって食べ慣れてるし。それこそアリスベルみたいに適当にゆるーく接してくれても全然いいのにな」


「適当って……それ褒めてる?」


「めちゃくちゃ褒めてるぞ? アリスベルと一緒にいると自然体でいられるし、なによりすごく幸せな気持ちになれるからな」


「はいはい、今日もおにーさんは口が達者だね。もしかして誰にでもそういうこと言ってたりする?」


「そんなまさか、俺はアリスベルに一筋だよ。なんてったって俺の命と腰の恩人だからな」


「はいはい、そういうことにしとくね」


「あと可愛い顔とキュートな声がすごく好みだ」


「あっそ、ふーん……でもほら、やっぱり庶民と騎士じゃやっぱり認識も違うんじゃないかな? それにアタシの中のおにーさんって勇者ってよりも、行き倒れてた腰痛の患者さんって感じだし」


「本当に、あの時アリスベルが通りかからなかったら、俺はあのままあそこで野垂れ死んでたよ。俺が今生きていられるのも全部アリスベルのおかげだ、一生大事にするからな」


「さらっと結婚する前提みたいに発言だし……」


「嫌ならやめるけど?(チラッ)」

「じゃあ今すぐやめてください(素)」


「ふぁ~あ、そろそろ眠くなってきたな」


 俺はさらっと流して聞かなかったことにした。


「もう、おにーさんってば都合の悪いことは全然聞く気ないんだから」

「勇者スキル『都合のいい耳』だ。聞きたいことしか聞けないんだ」


「アタシ嘘つく人は嫌いなんだけど」

「アリスベルと結婚したいのは本当だ」


「ま、おにーさんのことは悪くないかなーとは思ってるんだけどね。でも結婚ってなるとやっぱり人生の一大イベントだし、しっかりと考えたいんだよね」


「そんなもんか? もう当たり前のように一緒の部屋で寝たり、えっちしてるってのにさ」


「そんなもんだよ? ……あ、そうだ、せっかく一緒の部屋なんだし腰のマッサージしておこう?」


「腰なら何の問題ないぞ? あれ以来すごく快調だし」


 まるで今までの腰痛が嘘だったみたいに、俺の腰は劇的に良くなっている。

 今はもうわずかな違和感すら感じなくなっていた。


「んーと、おにーさんの腰は悪い状態が長すぎたから、悪い状態を正常だって身体が勘違いしちゃってるんだよね。だからもうしばらくは定期的に腰の整体をした方がいいと思うの」


「ってことは、俺はまだまだアリスベルと一緒にいないといけないわけだな。ああそうか、つまり今のはずっと俺と一緒に居たいっていう、アリスベルなりの遠回しなプロポーズだったわけか」


「なんでそーなる!? 発想が飛躍し過ぎだし! はい、アホなこと言ってないで早く横になって」

 アリスベルにペシペシ叩かれた俺は、布団にゴロンと横になった。


「俺と、俺の腰をよろしく頼むな」

「はいはい」


 ベッドに寝転がった俺に、呆れたように言いながらアリスベルが慣れた手つきでマッサージをはじめた。



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