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第111話「はぁ!? べ、別に必死なんかじゃないし! 変なこと言わないでくれる!?」

「あれ……? おかしいなぁ……? 術式の連鎖が止まらずに暴走しちゃってる……?」


 地上にチラリと視線を向けるとリヨンが小首をかしげていた。

 よく見ると引きつった顔をしていて、頬に冷や汗を垂らしている。


「り、リヨンさん!? おにーさんが激しい爆裂に巻き込まれてるよ!? なんか止まらないみたいなんだけど! っていうかどんどん激しくなっているような!?」


 必死こいたアリスベルがリヨンの肩をガクガクと揺さぶった。


「あーうん、なんていうかその、ね? 変換術式のほうは上手くいったんだけど、制御術式をちょっとミスったかも……的な?」


「えええっ!? おにーさんは大丈夫なの!?」


「あー、えー、うん? まぁちょっと大丈夫じゃないかも……?」


「ええええっっっ!!?? ちょ、ちょっとリヨンさん!?」


「だ、だって! いくら天才の呼び声高い私でも、勇者の力を変換するのはやっぱり難しいのよ! だって勇者の力よ!? 世界最強の力なのよ!?」


「そ、それはそうだけどぉー」


「それをたったの2日で変換できるようになっただけでも、私って超すごくない!? だからちょっとくらい制御が効かなくなっちゃっても仕方ないわよね!?」


 アリスベルに両肩を掴まれてがくがく揺さぶられながら、リヨンがぶっちゃけた。

 術式が未完成だったことをぶっちゃけやがった。


「たしかにリヨンさんの言うとおりかもしれませんね。あれだけ強大な勇者様の力に干渉するだけでも、さぞ大変なことだったでしょう」


 フィオナの冷静な状況分析を聞いて、


「でしょう!?」

 我が意を得たりといった様子のリヨン。


「それでリヨンさん、なんとかアレを止める方法はないのでしょうか? このままでは勇者様の身が危険です」


「か、完全に暴走しちゃってるから、後はもう偶然、連鎖が止まってくれたらいいなぁって……」


「り、リヨンさーん~~。ううっ、おにーさん~~! どうか無事でいて~~!!」

 アリスベルが涙声で叫んだ時だった。


「ふおっふぉっふおっ、ようやっとワシの出番が来たようじゃのう」

 いつもの奇妙な笑い声とともに、屋上庭園に今度はストラスブールが現れた。


「ストラスブールさん!? どうしてここに!?」

「どうもお久しぶりですストラスブールさん」

「ちょっとストラスブール、なんであなたがここにいるのよ?」


「ふぉっふぉっふぉ。備えあれば患いなしと言うからの。じゃがワシも年じゃ。若者たちが仲良く心と力を合わせて事に対処しようとしておるのを邪魔をせぬよう、隠れて様子をうかがっておったのじゃよ」


「のぞき見なんて相変わらず趣味が悪いわね。あと別に私はクロウと仲良くなんてしていないからね?」


「照れるでないリヨン殿。クロウとリヨン殿のお楽しみの時間を邪魔するつもりなんぞワシにはサラサラないのじゃ。事が終わればまた楽しく話をすればよい」


「はぁ? クロウと話して楽しいなんて感じたことはないんだけど? さっきから意味不明なこと言わないでくれない?」


「ふぉっふぉっふぉ、それは失礼したのぅ。全部ワシの勘違いだったようじゃ、許すがよい」

「ちっ……、このタヌキ爺さんめ……」


「で、ですがこれで勇者パーティのメンバーが久しぶりに勢ぞろいというわけですね!」


 いきなり険悪なやり取りを始めた2人の間に割って入ったフィオナの言うとおり。

 死んだダグラスを除けば俺、リヨン、ストラスブールとかつての勇者パーティのメンバーが、世界の危機に久しぶりに勢ぞろいしたことになる。


「では改めて現状確認といくかのぅ。リヨン殿よ、クロウの持つ勇者の力を爆裂系統に変換できたはいいものの、連鎖が止まらなくなってしまったわけじゃな?」


「まぁそういうことになるかしらね」

「相変わらず詰めが甘いぞリヨン殿」


 つららのように長い白ひげを右手でしごきながら、ストラスブールが状況を要約する。


「う、うるさいわね! 徹夜で眠かったし、なにより時間がなかったんだからしょうがないでしょ!? これ作るために2徹したのよ私!」


「もちろんリヨン殿がクロウの窮地を助けるために、必死の努力をしたことは言わずとも分かっておるとも」


「はぁ!? べ、別に必死なんかじゃないし! 変なこと言わないでくれる!?」


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