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どうも、この世界の神です。  作者: 瀬戸内 優
4/5

どうも、始まり街です。

ソフィはすでに寝息を立てていた。

朝まで現実世界でいても良かったのだが、こんな可愛い子と一夜を過ごせるとなるとみんなならどうする?

無論俺と同じワンチャンを狙う考えのはずだ。

俺は期待を胸に戻ってきたが寝ている姿を見ると、そんな考えは一蹴された。

昼間来ていた防具は脱がれ、着替えられていた。

これではあの膨よかな胸が拝めない。

結局何事もなく夜が明けるのであった。


「おはよー」

「おはようってもう昼だぞ」

「え?そう?急ぐこともないんだしゆっくりしたら良いじゃない」

「まぁそれもそうだな。少し遅いが朝ごはん食べに行かないか?」

「そうね、食べながら今日の動き考えましょう」


そういうとソフィは着替え始めた。


「え?ちょ俺いるんだぞ。隠れて着替えたりしないのか?」

「何かまずいの?」

「いやまずくはないが」

どうやら男だの女だの言う割にはそういった恥じらいはないようだ。

俺からすればラッキーだったのだが

「俺向こう向いてるから」

とっさに紳士ぶってしまい見るチャンスを逃してしまった。


「はぁ」

「急に元気なくなったわね。何かあった?」

「何も」

見れなかった事が残念だったと俺のプライドが口が裂けても言わせなかった。

「ねぇねぇこの店にしましょうよ!ちゃんとお金は作った?」

そこは昨日とは違ってレンガ調の建物だった。

お洒落なレストランと言った感じだ。

「ちゃんと持ってるよ」


「いっらっしゃいませ。2名様ですか?」

「はい、そうです」

「こちらへどうぞ」

メニュー表を見るが昨日の酒場と同じく現実世界でのメニューと同じであった。

「ねぇこれって何?」

昨日と同じでソフィはこの世界のことは分からないらしく質問が飛んでくる。


「私このハンバーグって言うが食べてみたい!」

「俺も同じものにしよう」


注文をし出てくるのを待っている間に今日の予定を考える。

「俺的にだけど集会所に行ってみないか?」

「なんで?」

「集会所は俺の考えが正しければ冒険者がたくさんいると思うんだ。俺たちこの世界のことについて全く知らないし情報収集には打ってつけじゃないか?」

「なるほど、良いわね。じゃ集会所に決定ね!」

「自分が魔王の娘って言うのは秘密にしておけよ」

「あんたに言われなくても分かってるわよ!」

「なら良い」


注文していたハンバーグが出てきた。

「わぁこれがハンバーグ」

ソフィが目を輝かせた。

この顔を見るだけでこっちまで嬉しい気持ちになる。


「ええっと集会所はと。すみません、この街の集会所にはどうやって行けば良いですか?」

思ったよりも近くにあった。

酒場と同じく木造の古い感じの建物だった。

中には昨日の酒場同様見るからに冒険者とわかる風貌の人たちと受付の方がいる。


「すみません、俺たちこの街に来たばっかりなんですが、ここってどう言った街なんでしょうか?」

「初めての方?ようこそエヴァンスへ!ここは始まりの街よ。」

どうやらこの街はエヴァンスと言う名前で、冒険者はここから旅立って行くようだった。

「冒険者の方?初めてなんだったら登録はまだよね?」

「はい。」

「じゃこっちに来て登録して」

登録するつもりは無かったのだか流されてしまい登録するはめになってしまった。

「登録するとどうなるんですか?」

「登録するとあなたの情報が各地にある集会所で共有されます。そして依頼を受ける事ができるようになって他の冒険者の方と協力することも可能になります。

どこの誰かも分からない人にはお願いするのは怖いでしょう?

だから身分の証明にもなるのよ。あと功績に応じてランクも上がって行くからより難易度の高い依頼を受ける事や信用の上昇にも繋がりますよ」

「なるほど・・・」

「この書類に必要事項を記入して、この魔法石を握ってね。そうすると石がギルドカードに変化するから」


「握るだけで良いんですか?」

「そうよ」

握った拳の中から光が漏れ出す。

情報を読み取っているんだろう。

石がカードに変わって項目が書かれている。

ステータスと言うものだう。

「なにこれ?」

受付の方が不思議そうにしている。

俺もすぐにその理由がわかった。

「全てのステータスが空白だなんて」

こんなことはそうそうないだろう。


「じゃあさ私のは?」

隣で登録していたソフィが入ってきた。

「あなたのは・・・全てが平均以下だわ」

「え?」

「特に魔力なんて今まで見た中で1番低いわ」

あぁ今クリティカルヒットしたな

「まぁ伸びしろがあるって事よね」

強がってはいるが、すでに涙目なっていて今にも泣き出しそうだ。

「もちろんそうよ。あ、あのこういうタイプはた、大器晩成って言ってこ、後半で化けるだからっ」

受付の方もソフィの心理状態をすぐさま察知したかのようにフォローに回る。

さすが受付接客は手慣れたもんだ。

ただこいつは魔王の娘、今後魔界の魔力が集中してくるのだから確かに後半は化け物になる。

「うわーん。優しくしないでよー、泣いちゃうじゃない」

受付に頭を下げ、泣いているソフィを連れていく。


「もう泣くなよ」

「だってそりゃ自分が弱いのは知ってたけど、全部よ?全部平均以下って言われたのよ」

「今はそうだけどさ。お前昨日言ってたじゃんか、いずれは強くなるって。それに最初弱いやつの方が伸びるの早いんだぜ」

「ほんと?」

「ほんと」

「じゃあ頑張る」

「そのいきだ!この街でさもう1人仲間増やさないか?」

「どうしてよ?私が弱いから?」

「違う違う。2人でもこの先は進めるけど敵はどんどん強くなる。その時に作っても大丈夫だと思うけど信頼ってものはすぐにはできない。だから早い段階で信頼のできる仲間を作っておきたいんだ」

「あんたにしてはちゃんと考えてるじゃない」

「なんでたまに上から目線なんだよ」

「いずれは王になる私よ。上からに決まってるじゃない」

俺は神なんだがと言いたかったが、こらえた。

俺が入れば仲間は必要ない。その気になれば今から魔界に乗り込んで魔王を倒す事もできる。

ステータスを最弱にしてこの街に連れてきて成り立ての冒険者に倒させることだって可能だ。

ただ俺はずっとこの世界で過ごすはずもなく現実世界に帰らなければならない。

そうなるとソフィがまた1人になってしまう。

そうなるよりは序盤から心置ける仲間を作って置いたほうが安心だ。

急に切ない気持ちになった。


「やっぱり仲間にするんだったら強い方が良いわよね?」

「まぁそれに越した事はないけど始まりの街だぞ。そう簡単には見つからないだろ?」

「あいつなんて強そうじゃない?」

そういうとソフィは俺の気も知らず、そそくさと歩いて行った。


「あんたに私の仲間にしてあげるわ!感謝しなさい」

どこか聞いたことのある誘い文句だった。

「はぁ?お前誰だよ」

これから旅立つって言うような風貌ではない、盗賊のボスだと言われても納得してしまうような屈強な男だった。

「すいませんでした。」

俺はソフィの頭を手で押さえて脇に抱えて逃げ去った。


「お前相手見て誘えよ」

「仲間にするなら強そうな奴が良いでしょ」

「そうだけど、言い方ってもんがあるでしょうが。ちなみに俺の時も誘い方あれだったからな」

「でもあんたは仲間になったじゃない」

「あの誘い方でなったんじゃねーよ」

「まぁあんたはゆっくりしてなさい!私が探して来るから」


大丈夫か?と心配しつつも勧誘を続ける彼女を遠くから見守っていた。


「全然仲間にならないわ。あいつら何考えてるのかしら」

数人に声を掛けたが相手にされずに戻ってきたソフィは何故か怒っていた。

理由なんて一目瞭然だ。

あんな上から目線で言われたら誰でも怒る。


「あの仲間募集してたみたいですけど、僕仲間に入れてもらえませんか?」

声をかけて来たのは何処にでもいるような平凡な男だった。

クラスでいたら目立つような事もなく、忘れられている事もなく只々普通と言う言葉がしっくり来るような青年だった。

「はぁあんた見たいのは願いさ」

ソフィが言い切る前に

「もちろん!」

俺は遮った。

こいつは断るつもりだったのだろう。

最後の言葉は『げ』のはずだ。


「とりあえず登録は終わらせた?」

「登録?ごめんなさい!この街に来たのは初めてで何をしたら良いのか分からなくて」

「向こうで登録できるから。俺たちはここで待ってるからしておいで」

「はい!すみません!」


すごく丁寧な青年で話していてこちらも気持ちが良い。

あれが普通なんだろうが、こいつの性格が悪いのか良く感じる。

「ヤマト本気であんなやつ仲間にするつもり?」

「お前に任せたらいつまで経っても仲間なんて増えやしないと思う」

「あんなやつすぐに逃げだすに決まってるわ。それに私より弱そうだったわ」

「全てのステータスが平均以下のお前が言うな」

「なっ!」

ソフィが言い返し始めると同時に向こうで歓声があがった。

あの青年のカードを見ようと群衆が出来上がっていた。


「勇者だ!」

「勇者様の誕生だわ!」

勇者と言うワードが多く聞こえる。

「『金色のカード現るとき魔王の脅威は去る』この始まりの地に伝わる伝説です。

このカードの色はまさにそれよ!数値だって私が見た中でトップクラスのものばかり!」

歓声はどんどん増していた。


「俺とチーム組んでくれよ!」

「いやいや私の仲間に入らない!」

「こんな人たちとだと不安でしょ?お姉さんと一緒に世界を周りましょ?」

カードを見るや人々の見る目が変わり勧誘の嵐だった。


「すみません!僕約束した人たちがいるんで!すみません!」

謝りながら手でごめんの仕草をしながら群衆をかき分けこっちまで来た。


「すみません。お待たせしました。なんか僕勇者みたいです。」

「・・・あ、そう勇者ね。了解!」

簡単な受け答えしか出来なかった俺の隣でポカーン口を開いているソフィがいた。


最悪の組み合わせができてしまった。

将来の魔王と勇者が同じパーティになった日だった。

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