どうも、この世界の魔王です。
今なんて言った?魔王?
この子が?ゴブリンから逃げてたこの子が?
いやいや無い無い
確かに魔王って書いたよ、確かに書いた。
「へぇー」
「何よ人を疑ったような目は?」
「だって俺の知ってる魔王ってのは
魔物を従えて自分は城にいる
城に侵入してきた冒険者と戦う
そんなキャラクターじゃないか
魔物に襲われるなんて聞いたことない。」
「キャラクター?何それ?
それはあんたの勝手な思い込みじゃない?」
「それに転ぶようなドジは踏まないと思う。」
ソフィの目に涙が浮かんできた。
「うっさいわね!転んだしゴブリンに追われてたけど正真正銘の魔王なのよ!
そんなに信じられないんだったら、魔王にしか使えない暗黒魔法を見せてやろうじゃない!」
こいつ本当に魔王なのが?少し気になってきた。
「この魔法は命を奪うことが目的だから、悪いけどあんたに使わせてもらうわよ
私の正体を知ってすぐに死んじゃうなんてかわいそうな子」
ソフィの体から紫色のオーラが滲み出始めた。
「どう?今ならまだ間に合うけど
止める?」
「いや、本当に魔王なのか気になりだした所だ。
続けてくれ!」
ワクワクしている自分がいる。
「そんなに死にたいようね
行くわよ。
契約によって混沌よりまいれ暗黒の力『バゼル』」
ソフィの体が溢れ出たオーラの勢いが増し、こちらに向けた手のひらから紫色のエネルギーのようなものが射出された。
反射的に目をつむってしまう。
もしこの世界で死んだらどうなるんだ?
あれ?痛くない。
「もう終わりなのか?全然痛くなかったんだけど」
ソフィはポカーンしている。
「あれ?おかしいな?いつもならこの一帯火の海になるんだけどなぁ」
そう言うと繰り返し魔法を打ち込んできた。
初めは目を閉じてしまったが、怖くないと知ってしまうと目を閉じなくてもすむ。
手のひらから射出されたエネルギーは始めこそ勢いが良いのだから進むにつれて細くなり波打ちながら消えていた。
「なぁ、お前本当に魔王なのか?」
「だからさっきからそう言ってるじゃない」
「なんか俺のイメージと全然違うんだよな」
言い返せなくなり、涙目のソフィ
「もう俺行くわ!この世界いろいろ回って見たらたいし。じゃあなソフィ!気をつけて魔界とやらに帰るんだぞ!」
「さようなら。こっちはあんたと二度会いたくないんだらか」
俺は街の方へ向かって歩き出した。
ソフィも俺とは反対側へ歩き出したようで音が聞こえた。
今から俺の冒険が始まる!とワクワクしながら向かっていると、後ろの森が騒がしくなった。
「次はなんだ?」
「ギョェェェー!」
ソフィが泣きながらこっちに向かって走って来ている。
後ろにはゴブリンの大群が。
「ちょっとヤマト助けなさいよ」
そう言いながら俺を追い越した。
俺も身の危険を感じ街へと走る。
「助けろって言ってもお前、魔王だろ?
自分でなんとかしろよ!」
「むりむり~あんな大群絶対無理よ」
「さっきまで強気だったお前はどこに行ったんだ。」
「あんた女の私に盾になれって言うの?」
「盾っていうか、自分の部下ではないのか?」
「もう、うるさい。黙って走りなさい!もうあなたの事は無視するから」
「自分勝手なやつだな」
街の入り口が目の前まで近づいた時だった。
頭上を1本の矢が通り過ぎたのが見えた。
1本から2本、どんどん増えていく矢はゴブリンの大群に向けて雨のように降り注いだ。
「助かった。さすがにあの数は無理ある」
「お互い助かって良かったわね」
「お前がこっち来なければ、災難に会うことはなかったんだよ」
「男のくせに女の1人も守れないの?情けない。」
「魔王って言ったり女って言ったりどっちなんだよ」
「しょうがない。あんた私の仲間にしてあげるわ
感謝しなさい!」
「お断りします」
「は?即答?意味わかんない。この私が仲間にしてあげるって言ってるの分かりやすく言うと強くしてあげるって言ってるの、それでも断るつもり?」
「はいそうです。僕は1人でこの世界を探索したいのです。魔王なんだったら人間とパーティーを組むより魔物と組めば良いじゃないか」
「うっ・・・だってしょうがないじゃない魔物は懐かないし、1人だと怖くて冒険どころじゃないもん
あなたが私を守ってよぉ」
女の涙は武器とはよく言ったものだ。
ましてこんなにタイプの子はの涙はクリティカルヒットした。
「分かった、分かったから」
「そう?ならこれからよろしくね!」
「え?嘘泣き・・・」
「じゃまずはこの街を探索しましょ!
ほら行くわよ」
こうして魔王(自称)との旅が始まった。