どうも、この世界の神になりました。
いつからだっただろうか。
1番古い記憶では「赤ずきん」の絵本に入っていて狼が怖く1人で泣いていたのを覚えている。
小学生低学年までは誰でも出来ると思っていた。
友達を誘いドン引きさせて以来、この力の事は誰にも話さないようになった。
中学生になってからは漫画の世界がメインの遊び場だった。
思春期の男子がどんな漫画を選んだのか世の男性諸君なら分かってもらえるだろう。
この能力にはいくつか制限のようなものがある。
①本に手を置かなければ入れない。
②人物には触れない、話せない。
③結末を変えることはできない。
④本の中で過ごした1日は現実では1時間である。
⑤入っている間は現実からはいなくなる
つまり少年誌で読者サービスなどのエッチな描写はただ間近でいろんな角度で眺めることしかできない。
初めは興奮するが、慣れてくると物足りなくなる。
まぁそんなことより・・・。
ある日疑問が浮かんだ。
今までは絵本や漫画や小説など誰かが執筆し完結している作品にのみに力を使ってきたが、まだ始まってもない物語ならどうなるか。
教科書で試してみたが、あれは苦痛でしかなかった。
白紙のノートならどうだろう。
用意してみた。
いつものように手を置き中に入る。
真っ白の世界だ。
どこまで限りなく続いている。
空も床も境が見えない。
「へぇーこうなるんだ。」
独り言を呟いた。
「空が白いってなんか違和感がある。青空のイメージだわ」
そう思うと今まで真っ白だった空が青に変わった。
あれ?おかしい。今までの経験だと中の世界でイメージしても世界に影響を与えることはなかった。
「そうか、今までは誰かが仕上げていた作品だったから変えることができなかったんだ。今回は白紙、つまり自分でこれから作ることができるのか」
中の世界から現実に戻ってきた。
ノートを見て驚いた。
そこには『青い空の下』と文字が浮かび上がっていた。
なるほど本の世界を変えるとノート記録されるのか
では逆はどうだ?
ノートに書き込んだ状態で中に入るとどうなる?
早速『青い空の下』の後に『草原の上で』と書き込み、入り込んでみた。
「予想通りだ!人の作品の場合もあらかじめ書いてある情景が反映されてるんだから、自分で書き込んだ場合も同様なのか」
では自分で書き込んだ内容はどうだろうか
おそらく無理だろう
イメージしてみる。
青い空を白い天井に
草原を地面に
白い天井は無理だったが、草原は地面に変わることができた。
なぜ?
もう1度現実に戻りノートを見る
『青い空の下、草原の上で』の文字の後に『草原が枯れ地面があらわになった。』が追加されていた。
おそらく関係性の無いものは不可能だが、自然に変化する物については変えることができるようだ。
1度初めからやり直そうとしたがノートに書かれた文字は消すことが出来なかった。
1つの世界として確立されているのだろうか。
となると新しいノートで始めるしかない。
さぁどんな世界を作ろうか。あらかじめ世界観を考えノートに記入して、後は中で修正していけば良いだろう。
テーマは何が良いか?
やっぱり異世界系だろ!もともと漫画が好きでゲームも好き。うってつけのジャンルだ。
次は舞台設定だな。
未来都市、魔界、外国、いろいろあるが
定番の中世のヨーロッパの雰囲気の作品にしよう
そして冒険も必須だな
ある程度固まるとノートに書き記す。
『魔王の脅威が迫るなか冒険者たちは魔物を倒しながら世界を守っていた。
お城があり、木造の建築が多い。中世のヨーロッパのような雰囲気だ』
「うん、こんなもので良いか」
俺って才能あり?とか自画自賛していた。
「あとは入って作りますかっ」
手を置き中に入る。
広々とした平野に立っていた。
草が生えている所や地面が剥き出しになっている所。
遠くには雪化粧をしている山脈。
モン・サン・ミシェルのような城もあり。
周りを塀で囲まれた街まである。
「おーこれは中々!
思った以上のできではないか?
向こうには街もあるし、お城まで見える!
ん?待てよ。この世界観でこの服はおかしいな」
現実世界での服装が反映されるため
この世界観とは合わない
空を作った時のように、草原の作った時のようにイメージした。
瞬時にイメージ通りの服装に変わる。
ベージュのシャツに黒色のパンツ。
村人のような服装に変えた。
「この服なら大丈夫だろう。
イメージするだけで空も地面も服も変えれるって
俺ってこの世界じゃ神になるんじゃない?」
「自己紹介の練習しないとな
どうもヤマトです。この世界の神です。
なんか違う?
俺ヤマト!よろしくな!
ちなみに神です。
これもしっくり来ないなー」
1人ぽつんと平野の上で端たから見ると奇妙な動きしている。
「キャァァァ!」
悲鳴が聞こえきた。
「なんだ?」
周囲を見渡してみると遠くで女性がゴブリンに追われている。
「そういやノートに魔物って書いたな
ってそんなこと言ってる場合じゃないな
せっかくこの世界に来たんだから戦ってみたい!
あれくらいなら俺でもなんとかなりそうだな」
女性とゴブリンの方に走りだし、走りながら頭でイメージ。
「何にしようか・・・そうだ剣にしよう」
右手には剣が現れた。
ただ海外の剣ではなく、日本刀だった。
「かぁーなんで日本刀イメージしちゃったかな」
女性はつまずきスライディングと言うより転がると言う方が合うほど豪快に転けた。
「間に合うか」
ジャンプしてゴブリンの頭を後ろからスイカ割りの要領で一刀両断した。
「うっゲームだとそうでもないけど、実際切ると内臓とか血とかグロいな」
剣で空を切り刃についた血液を飛ばす。
真っ二つになったゴブリンの影から女性の姿が見えた。
遠くからは見えなかったが、この距離で見るとかなり可愛い。
現実の世界だったなら間違いなく付き合いたいと思っただろう。
「大丈夫?」
「大丈夫よっ」
なぜかどことなく怒っている様子だ。
肩に付くか付かないかくらいの黒髪のミディアムヘア。
黒色の光沢のある鎧の胸上から見える谷間。
「DかEはあるな」と心の中で思いながら
全身をくまなく・・・いや怪我がないか確認するためにチラッと全身を確認した。
「余計な事してないで」
「余計な事って君今ゴブリンに殺されかけてたじゃないか」
「殺されかけてないし、倒す隙を探してたんだし」
「そうは見えなかったけど」
「あんた何様のつもり?」
ここで神様と言える自分が欲しい。
初対面で命の恩人にもなり得る自分にこうもガツガツ言ってくるこの女性に怖気付いてしまい
「ぼっ僕は、いや俺はヤマト
お前こそ何様のつもりだよ」
向こうのペースに持って行かれてしまいそうだったが何とか持ち堪えた。そして神様と言うのを言いそびれた。
「私を知らないの?」
「知るわけないだろう」
「はぁ~とんだ世間知らずね
よく聞きなさい。私はソフィ!魔王よ!」
え?今なんて?