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署名の効果

 私は現行制度の確認と書類を提出する必要もあり、再び人事部を訪れた。ベルナさんを探すため周囲を見回す。やはり人事部は激務らしく、皆疲れ切っているようだった。

 私が近づいていくと向こうも気が付いたようで、こちらに向き直って話しかけてきた。


「戻りましたか。どうせ署名してもらえませんでしたよね……。はは……いつものことですよ」


 ベルナさんは過労とストレスからか、目が虚ろになっている。


「いえ、少々強引にではありますが魔王様から署名をもらってきました。ご確認下さい」


 そう言って書類を手渡す。その紙を見たベルナさんの目が大きく見開かれ、信じられないといった様子で私を見つめてくる。


「魔王様が署名するなんて……魔王軍始まって以来初めてですよ」


 魔王様はどれだけ働いていなかったのでしょうか。魔王軍は太古の昔から存在していたはずですが。


「これなら即戦力として十分過ぎるほどです。早速仕事に取りかかってもらいましょう」

「はい。それと一つしなければならない事があるのですが、大丈夫でしょうか」

「何ですか? 何でも言ってください」

「魔王軍の法整備を行いたいので、一週間だけ通常業務の量を減らしていただきたいです」

「……はい?」


 ベルナさんはその言葉を聞いて固まってしまった。少しして内容を飲み込めたのか口を開く。


「つまりあなたは通常業務をしながら魔王軍の法を整備し職場環境を改善させる、ということを一週間でやろうとしているのですか?」

「はい」


 再びベルナさんが口を閉ざし、暫しの間沈黙が流れる。


「わかりました。私も全力で協力します。具体的には、あなたが人間だからと取り合ってもらえない事が無いように根回ししておきます。私は魔王軍の中ではかなり影響力を持っていますので」

「信用して協力してくれてありがとうございます」

「いえ、魔王様に署名させたのですから信用するのは当たり前です。それにこんな職場が変わるのであれば協力は惜しみません。困ったことがあったら何でも言って下さい」


 新人の人間に寄せる信頼具合ではありませんね。多少強引にでも魔王様の署名をもらったのは正解でしたね。これでかなり動きやすくなります。


「法改正をするにあたって投票で過半数の賛成を得る必要がありますが、ここで働いているのであれば反対するはずありませんから安心して下さい。むしろ施行後にしっかりと法を守るかという所が心配です。……主に魔王様の」

「法というのはそう簡単に犯して良い物ではありません。それに軍内にパワハラ等は許されないものとの認識が広まれば、魔王様も堂々とする事は出来ないでしょう。そもそも私は全ての人が必ず法を守るとは思っていません。それよりも皆さんが声を上げることの出来る環境を作るべきだと考えています」

「私はあなたの成功を願っています。頑張って下さい」

「ありがとうございます」


 さて、まずは聞き込みからですね。魔王軍全員に現行制度についての意見を聞いた後、改善案を作りそれを公表そして投票をする。期日は一週間。忙しくなりそうですね。

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