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部署決め

約五ヶ月失踪していました。

今後もたびたび失踪すると思いますが気長に待っていただけると幸いです。

 魔王軍には現在四つの部署がある。とりあえず、近場から順に見て回る。ただ、人事部はどの部署に所属しようと必ず行くので、最後にしておく。


 総務部

 魔王軍内の備品や施設の改修・修繕など全般を取り仕切る。

 仕事部屋には様々な武具や素材が綺麗に並べられており、丁寧に扱われている事が分かる。

 一人の魔物が私に気付き、近寄ってくる。


「おい人間。すぐにここから出て行け。人間を見て良い気分になる奴はいないんだよ」


 彼の私を見る目は鋭く、明らかに敵対心を持っている。


「魔王様に勧誘されたらしいが、ここにお前の居場所はねぇから」


 当然ですが人間の私は敵と見なされていますね。人間が魔王軍に居ること自体異常ですし仕方ないでしょう。今後、少しずつ信頼関係を築いていきましょうか。

 そうして私はすぐに総務部を後にした。


 開発部

 罠や魔法、装備品などの開発を行う。専門的な知識と技術が必要なため、適任者が少ない。

 部屋を覗くと皆何かの開発に集中している。壁には設計図のような物が大量に貼り付けられている。

 また、部屋の入口には何故か開いたままのトラバサミが置いてある。そのままにしておくと危ないので、とりあえず解除しておく。

 罠の開発なら可能ですが、魔法の開発に関わる事が出来ませんし、この部署に私の仕事はなさそうですね。


 営業部

 魔王城の警備と外回り、作戦の実行を行う。最も所属人数が多い部署であり、魔王軍の主戦力。他部署と比べて圧倒的に死亡率が高い。その勤務内容ゆえ、血気盛んな者達が多く所属している。

 気付かれないように気配を殺して部屋を覗く。仕事部屋といっても書類作業はほとんど無いため、休憩時間のたまり場になっている。

 ここなら私の仕事もありますが、所属するだけでも問題になりそうなので止めておきましょう。


 人事部

 魔王軍内の書類の管理に給与計算や人事異動・拷問・処刑・組織内の揉め事調整を行う。また、金銭・財宝などの管理も行っている。それでいて所属人数が最も少ない部署であるため、勤務は常に多忙を極める。

 部屋には大量の書類が置かれ、皆忙しなく働いている。明らかに人数に対して仕事量が釣り合っていない。

 さっとペンを走らせ、登録用紙への記入を済ませる。そして部長と思われる人物に話しかける。


「お忙しいところすみません。登録用紙を提出しにきました」


 その女性は眼鏡をかけており、赤い瞳で長い黒髪を後ろで束ねていた。その慎ましい体に黒のスーツを身に纏い、手と首から上以外はほとんど肌が出ていない。彼女の額からは黒い角が一本生えている。その角以外は人間に非常に酷似していた。彼女はおそらく鬼だろう。


「はい。確かに受け取りました」


 そう言って渡された紙を見て、彼女は驚愕の表情を浮かべていた。


「本当に人事部で良いのですか? 後悔しますよ?」

「大丈夫です。見たところ人手も足りていないようですし、この部署が私の能力を最大限活かせると判断しました。では、私は一度魔王様の元へ戻らせていただきます」

「あ、少し待って下さい」


 そう言うと彼女は机の上に置かれていた書類を手渡してきた。


「魔王様に渡して下さい。まあ……渡したところで無意味でしょうけど……」


 彼女の言葉は後半になるにつれて重くなってゆき、見るからに疲れ切っている。


「ああ、自己紹介がまだでしたね。私は人事部長のベルナと申します」

「レイスと申します。では失礼します」


 その場を去ろうと向きを変え歩き出すと、ベルナさんの沈んだ声が聞こえてきた。


「これから新人の教育か……。しかも人間だから大勢から反感を買いそうだし、仕事も溜まる一方……。はあ、もうどうすれば……」


 人事部の現状は想像以上に危なそうですね。一刻も早く改善に取りかかるとしましょう。

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