三台目 [ガチャポン]
「……そろそろ潮時かねぇ」
最近口癖になってきた独り言を口にしながら、Bランク冒険者カルロは向かってきたゴブリンを長年の相棒である長剣で袈裟懸けにした。
一刀両断になったゴブリンを何の感慨もなく見つめながら、続く二匹目、三匹目を突きと横薙ぎの一閃で始末する。
手慣れた……Bランク冒険者の名にふさわしい腕前だが、ふとした拍子に考えるようになった。
もう十年来命を預けた、もはや腕の延長と言ってもいいほど馴染んでいた長剣を、『重い』と感じるようになったのはいつ頃からだろうか、と。
ゴブリンの十匹や二十匹相手にしたところで準備運動程度にしか感じられなかった自分の体が、ふと気を抜いた瞬間悲鳴を上げるようになった(特に肩や腰回り)のは、どれくらい前からだ?
『三十過ぎたらいきなりガックリ来るぞ。そのあとはまあ、わりあい平坦に衰えるだけだが……』
『悪いことは言わん。ヤバいと思ったら引退しろ』
『金は残しておけ。あぶく銭感覚で、酒や女や博奕なんぞに散在するのは馬鹿のするこった』
若い頃――自分がいつまでも若く、どこまでも上れると根拠もなく自惚れていた当時――ベテランの冒険者や元冒険者のオヤジ連中から言われて、「なに言ってやがる、終わった連中が」と、腹の中でせせら笑っていた言葉が、いまになってやたらと胸の中で木霊するようになった。
三十近くになってBランク冒険者になって八年――。
第一線で体を張って仕事をしてきたつもりだが、徐々に若い者たちに追い抜かされ、この調子では今年の冒険者ギルドの査定では、下手をすればCランクへの降格もあるかも知れない。
だが、それもいいかもしれない……と必死に、それこそ石に齧りつくようにして上り詰めたBランク冒険者としての地位に、さほど執着がなくなっているのも確かであった。
駄目なら駄目で仕方がない。俺の代わりはいくらでもいる。第一若い連中と競って前線で戦うのは疲れた……というのが、現在のカルロの心境であった。
そんな風に精神的にはセミリタイアしているカルロであったが、長年体になじんだ動きとベテランの技は健在で、その場からほとんど動かずに襲い掛かってきたゴブリン十匹あまりを、危なげなく斃していた。
「さすがですね、カルロさん。五分でゴブリン十匹なんて、鮮やか過ぎて見入ってしまいました!」
ダンジョン五階層の名物案内人、ハーフエルフのナウンが愛嬌のある笑顔を浮かべて、手放しでカルロの手際を称賛する。
「いや~、所詮はゴブリンだからねぇ。あいつらは初撃を外されると、次にどう動けばいいのかわからずに一瞬考え込む癖があるのよ。そこをカウンターで叩けばいいわけさ。――ああ、悪いけど魔石やドロップ品は拾っておいてね。オジサン、屈み込んで作業すると腰に来るのよ」
ダンジョンの魔物の常で、絶命すると死体が残らず、代わりに魔石とドロップ品(ゴブリンの爪や、ゴブリンの腰蓑といった二束三文の代物)が転がる床を一瞥して、飄々と剣を鞘に収めるカルロ。
促されて今回冒険者ギルドの研修の一環で、見学がてら初めて五階まで足を運んだEランクの初心者たちが、慌てて床に這いつくばるようにしてドロップ品などを手にする。
いまだ十代半ばにも達していない初々しい少年少女たち。
「――けっ、ロートルが偉そうに」
「ゴブリンなんて俺だって瞬殺だぜ。大した事ぁないな、Bランクなんていっても」
だが、中にははねっ返りがいるもので、突っ立ったまま聞こえよがしに大口を叩く。
「ッッ――テオ君、ライモンド君!」
「おっ、なかなか威勢がいいな。ま、確かにオッサンの助言なんざ疎ましく思うもんさ。若いうちは好きなようにやればいいさね。手取り足取り教わっても面白くないもんだ」
慌てて窘めようとしたナウンを制して、カルロが軽い口調で言い返す。
昔ならこの手のタイプの子供は徹底的に天狗の鼻をへし折ったものだが、いまとなって若さゆえの全能感と向上心を微笑ましく思えるだけである。
――まあどこまで突っ張れるか……賭けるものは自分や仲間の命だと、自覚できることをオジサンとしては祈るだけだねぇ。
そう胸の内で呟きながら、小馬鹿にした眼差しを向けてくる彼らに、へらへらした笑みを向けつつ踵を返して、カルロはナウンの先導で五階層を完走すべく歩みを進めるのだった。
「この先が安全地帯になります。今日は安全地帯で一夜を明かして、明日は皆さんにも戦闘に加わっていただいて帰還となります」
見えてきて五階層名物の安全地帯を前にして、カルロの一歩後ろを歩く、この場所の発見者でもあるナウンが、弾む口調で引率している初心者たちに伝える。
目に見えてほっと肩の力が抜ける彼ら・彼女たちを前に、
「冒険は最後の一歩までが冒険だよ」
軽く付け加えながら、天井から先ほど減らず口を叩いた少年たちの頭上へと落ちてきたスライムの核を、抜き打ち様一刀両断するカルロ。
「「――うひゃぁ!?」」
間一髪、ぼたりと目の前に落ちてきたスライムの飛沫を浴びて、思わず悲鳴をあげて腰を抜かす少年たち。
「さすがですね。一発でスライムの弱点である核を切り裂くなんて……」
「要は速度とタイミングだね。飛んでいるトンボを斬れるようになれば、これくらい誰でもできるよ~」
感心するナウンと素直に賛嘆の目を向ける初心者たちに対して、特に自慢することもなく剣の秘訣をさらりと開陳するカルロであった。
一方、大口をたたいて無様な失態を見せた少年たちは、いよいよもって敵意剥き出しの目でカルロを睨みつける。
集団の空気が悪くなったのを察したカルロが、世間話の口調でナウンに話しかけた。
「そーいや、ここの安全地帯にはコーラが買える箱があるんだよね~。頑張った皆のためにオジサンが奢るよ。もちろんナウンちゃんの分もね」
「わあっ、本当ですか!? ごちそうさまです!」
それに合わせて華やいだ声を放つナウン。後ろで聞いていた初心者たちも、話に聞くキンキンに冷えたコーラの味を想像して口元をほころばせるのだった。
◆
【ガチャ自動販売機(シークレット)】
カルロにとっては十階でもなじみのコーラの箱の隣に、やたら大きな――横幅だけでコーラの箱の倍ほどはある――白い箱が並んでいた。
全面ガラス張りのそこには、指輪や玩具、得体の知れない道具がずらりと並んでいる。
目を白黒させる初心者たち同様に、予想外の代物を前にして首を傾げたカルロが、代表をして案内人であるナウンに尋ねた。
「なんだいこれ?」
「ああ、ガチャガチャですね。五日ほど前に突然現れたのですが、わたしもよくわからないんですよね」
「……わからんってのは?」
「硬貨――銅貨一枚を入れれば商品が出てくるのは同じなのですが、毎回、出てくるものが違うんです」
「なんだそりゃ!?」
「こう……黒いボールみたいなのに入って中身は見れないのですけど、手に取って二つに割ることができて、それで初めて中身が確認できるのですが、いまのところ笛とか、車輪の付いた変な車とか、飴玉の詰め合わせとか、ほとんどしょうもないものばかりで……」
ナウンの説明に、そりゃ確かにしょうもないなと納得するカルロ。
銅貨一枚といえば、ちょっといい食堂で飯が食える金額である。それを使って欲しくもないガラクタを手に入れるとか罰ゲームもいいところだろう。
「――あ、でも一度白いボールが出た例があるのですが、その時には中身が『対毒+1』の効果が付与されたネックレスでした」
マジックアイテムが銅貨一枚で手に入ったと聞いて、途端にざわざわと色めき立つ初心者たち。
「ほう……」
対照的にカルロの反応は淡白なものである。確かにお得はお得だが、『対毒+1』ではせいぜい食中毒を回避できる程度の効果しかないだろう。ちょっと強い毒蛇や毒キノコ相手でも下手をすれば死ぬので、せいぜい気休め程度だな、というのがBランク冒険者としての偽らざる感想だった。
とはいえ口に出して場を白けさせない分別はある。それどころか初心者たちが浮足立って、気もそぞろに財布の中身と相談して、悩んでいる様子に微苦笑を浮かべて太っ腹な提案を口にした。
「なら、オジサンの奢りで一人一回で運試しと行こうか。なぁに、これもイベントの一環。遊びさね遊び」
途端、初心者の間からわっと歓声があがる。
「……いいんですか?」
「全然。それに冒険には緩急が必要だからねぇ。その辺を教えるのもオジサンの役目さ」
今回の護衛任務が銀貨五枚の格安で請け負わされている内情を知っているナウンが、こっそりとささやきかけるが、カルロは飄然としたものだった。
コーラそっちのけで『ガチャ』とやらに並ぶ初心者たち――例の反抗的な二人組もちゃっかり列の最後尾にいる――の調子のよさに破顔しながら、懐から銀貨を一枚取り出して箱の硬貨投入口へ放り込もうとするカルロ。
「一回銅貨一枚ってことだけど、銀貨は使えるんかね?」
「はい。銀貨と銅貨は使えます。けれど銀貨の場合は十回できるだけで、おつりとかは戻ってきません」
「……なかなかこすっからい箱だねぇ。ひいふう……ナウンちゃんも混ぜて八人か。じゃあまあ、とりあえず一回ずつってことで、残った二回はオジサンが引こうかねぇ。面白そうだし」
「えっ、わたしまで回していいんですか?!」
『回す』というナウンの言い回しに小首を傾げながらも、鷹揚に頷くカルロ。そのまま無造作に銀貨を投下する。
すると箱がやたら派手に輝きだした――が、一向に商品が出てこない。
困惑する一同を前にして、ナウンが箱の中央についている金属製のノブのようなものを指さした。
「そのノブみたいなのを、こうぐるりと回すんですよ」
言われて列の一番先頭に並んでいた少年が、その部分をそこそこの力を込めて回すと、箱の内部から『ガチャガチャ』という音がして、ノブのすぐ下にある四角い口のところに、握り拳ほどもあるガラスでもない、おかしな材質の奇麗な丸い球が転がり落ちてきた。
話に聞いた通り色は真っ黒である。
「「「「「「「おおおお~~っ」」」」」」」
期せずして湧き起る感嘆混じりの声。
「な、中身は?」
急き立てられて球をナウンの説明を聞きながらふたつに割ると(もともと分割できる構造になっているらしい)、中からポロリと白いものがこぼれ落ちた。
「……骸骨の標本」
掌に乗るほどの小さいが精巧な標本を手にして、微妙な表情になる少年。
「「「「「「…………」」」」」」
周りもいたたまれない表情で黙りこくった。
その後、ひとり一回ずつガチャを回した結果――。
「直立したカエルの人形」
「ベーゴマ?」
「寿司ストラップって、なんだこりゃ!?」
「お、小型の光るマジックアイテムだ。これは当たりかな」
ほとんどが黒い球ばかりで、中身もだいたいが他愛もないものばかりであった。
ただひとり白い球を出した少女がいたが、
「やった、神聖な護符だって! 効果は、えーと……『安産』――」
「「「「「「よかったじゃん、おめでとー(棒)」」」」」」
当面必要ないな、と思いながらどうでもいい口調で祝福する一同。
まあこんなものかと全員が肩透かしを食らったような、お互いにハズレ籤を引いた連帯感というか、図らずも親近感を覚えたその時――。
「やった! 金色の球だぜ! 中身は――ウオォオ、スキル『連撃』! やっぱ俺は持ってるぜっ!!」
一番最後に並んでいた生意気な、ナウンに『ライモンド』と呼ばれた少年が絶叫を上げた。
手にした金色の球を早速開けて、取り出した中身のスクロールを広げると、魔術呪文が起動してライモンドの体に入り込む。
「マジックスクロール!?」
信じられないとばかり目を剥くナウン。
修行や研鑽などを必要とせずに、スキルや魔術を覚えることのできるマジックスクロールは、最低でも金貨十枚は下らない代物である。それがまさか銅貨一枚(それも人からのオゴリ)で手に入れることができとは!
周囲の羨望と嫉妬の視線を逆に心地よげに、ニヤニヤと嗤いながら、新しいおもちゃを手に入れた子供そのものの挙動で、腰に下げている安物の剣を抜いたライモンド少年は、その場で覚えたばかりの『連撃』のスキルを、見せびらかすように試してみせる。
「『連撃』っ!」
途端、素人丸出しの構えから目にもとまらぬ速さで、斬撃が空中に放たれた。
「す、すげえ! これなら俺ら無敵じゃねぇか」
彼と一緒にカルロをこき下ろして敵視していたテオと呼ばれた少年(なお、こちらはハズレガチャのサイコロであった)が、破顔してライモンドの肩に手をやる。
「触んなよ、クズがっ」
その手を迷惑そうに叩き落とすライモンド。
「なっ――何をするんだ、ライモンド!?」
「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねーよ、俺はもうお前やこの場にいる連中とは違うんだ。スタートダッシュでスキルを手に入れた時点で、お前ら凡人とはすでに雲泥の差となっているのがわからないのか? いいか、俺はいずれはAランクやSランクになる選ばれた存在なんだ。Fランクのクズと馴れ合うつもりなんざ欠片もないって覚えておけ!」
そう傲然と言い放つライモンドだが、確かに攻撃スキルを持った剣士となれば、新人でも即戦力として有名パーティから引く手あまただろう。
あからさまに見下されたテオが反射的にライモンドに食って掛かろうとして、牽制でこれ見よがしに目と鼻の先で『連撃』を繰り出され、「ひっ!」と小さく悲鳴をあげて思わず尻もちをついた。
「無様だな」
せせら笑うライモンドの視線が、ただひとり平然としているように見えるカルロに向いた。
「おっさんの気持ちがよくわかったぜ。さっきはさぞかし腹の中で俺を嘲笑ってたんだろうな。だけどいまじゃ立場は逆だぜ。どうだい、おっさん。五分で追い越された気分は?」
「……五連撃か、まあまあだな」
他の者たちが勢いに飲まれて声も出ない中、カルロは気負った様子もなく変わらぬ調子で答える。
「しかしなぁ、地力がないうちからスキルに頼るのは危険だぞ。悪いことは言わんから、『連撃』はなるべく使わないようにした方がいいと、オジサンは助言するんだけどね」
「はン! やっかみか? ビビってるのかいおっさん?! 偉そうな口を叩くなら、口じゃなくて実力で黙らせてみろよ!」
言うや否や止める間もなくカルロに向かって『連撃』を放つライモンド。
無言で愛用の長剣を抜いたカルロが、凄まじい速度で放たれる五連撃をどうにか捌いた。
「はははっ、防御するだけで精一杯じゃねーか!」
さらに続けて『連撃』を放とうとしたライモンドの視界が、一瞬でぐるりと半回転をして天井が映った。
「……あ……?」
「足元がお留守だねぇ」
カルロによって軸足を刈られて背中向きに突っ転んだと理解する間もなく、本人の意思を無視して五連撃スキルが何もない上に向かって勝手に放たれる。
「付け焼刃のスキルはモーションからのコントロールができないから、使うんだったら相手が動けない状況までもっていって、最後のとどめに使うのが効果的さぁね。この状況だと、さっきのゴブリンと同じで、躱されたと同時に死んだも同然だね」
あくまで指導の一環という口調で、余裕綽々のままカルロは長剣の腹で倒れたライモンドの頭を思いっきり叩いて、
「ぎゃっ!」
気絶させるのだった。
「ま、ちょっと頭を冷やしたほうがよさそうだからね」
とはいえやりすぎたかな? という目線で問われたナウンは、とんでもない! とばかり首を何度も横に振って、
「さすがです! 凄いです、カルロさん。やっぱりカルロさんのようなベテランの冒険者がいるといないのでは大違いです! これからもこの調子でご指導お願いします!」
心からの称賛の言葉に同意するかのように、初心者冒険者たちが憧憬の眼差しをカルロに向けるのだった。
キラキラとしたその眼差しに、カルロは居心地悪げに視線を彷徨わせ、ふとまだガチャを回す回数が残っているのに気づいて、あからさまに話を変えた。
「あー、まあその辺は後にして、まだナウンちゃんの分が残っているので回したら?」
「はあ……」
促されてガチャを回したナウン。
お約束というか出てきたのは黒い球で、中身は――。
「〝方位磁石”と書かれています。もしかして、船で使われる羅針盤の小型のものでしょうか?」
ハズレながら案内人としては、かなり便利なものを手に入れて満足げな様子である。
「じゃあオジサンも残り二回回してみようかね~」
周囲から注がれるこそばゆい視線から逃れるために、何も考えずに二回連続でガチャを回したカルロ。
ろくすっぽ確認もしないで取り出した球の色は、
「…………金色と虹色」
「「「「「「「え、ええええええええええええっっ!!!!」」」」」」」
厄介ごとを伴った果てしなく嫌な予感を覚えるカルロ。できれば見ないふりをしたいところだが、どんな中身か期待する周りの圧に押されて、渋々開封せざるを得なかった。
「金色……スキル『自動回復』」
どうやら現在の健常な状態に体調を戻す効果のあるパッシブスキルのようだが、あくまで『現在の』であり、若返りとかの効果はないらしい。
つまり腰痛や肩こりとお友達になっている現状は変わらないということで、できればもうちょっとぴちぴちしていた年代の時に欲しかったなぁ、というのが偽らざるカルロの感想だった。
そしていよいよ、ナウンも見たことも聞いたこともないという虹色の球を開封した。その中身は――。
「〝神の祝福・勇者の紋章”」
球を開けた瞬間、光り輝く紋章が広がり、避ける間もなくカルロの額へと集約され、一つの紋章になった。
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」」」」」」」
目の前で伝説の勇者が誕生した瞬間に立ち会った初心者冒険者とナウンの口から、爆発したかのような感動の叫びが放たれる。
いつまでも続く周囲の喧騒のただ中で、密かに引退を考えていたカルロは、げんなりとした顔と口調でため息をつくのだった。
「……これ絶対に後に引けない状況だよねぇ。オジサン的にはいまさら面倒なんだけど……」
なぜこうなった? ともあれ今後は絶対にガチャには手を付けないようにしよう、と固く心に誓うカルロであった。
なお、このことはたちまち評判になり、二匹目のどじょうを狙う冒険者たちが次々とガチャに挑んでは、愚にもつかない雑貨や『スカ』と書かれた空っぽの球を大量に手にして破産する者が後を絶たなくなったことから(ごくごくまれにアタリが出ることもあったが、明らかに当初に比べて当たる確率が落ちていた)、冒険者ギルドで監視員を送り『一人当たり一分』と、砂時計で時間制限をかけるようにしたという。
また、その後のカルロは大司教や国王に謁見を許され、いいようにこき使われた挙句にちょいと行き遅れの王女様と結婚させられそうになったため尻に帆を掛けて王都を出奔し、適当に理由をつけて冒険者に復帰して、不本意ながら最前線で戦わざるを得なくなったとか。
「「兄貴っ! カルロの兄貴! 今日こそ二十階のボスを斃しましょう」」
そうして、今日も億劫そうにダンジョンに潜るそのあとには、勝手に舎弟となったライモンドとテオが付き従っていた。
おそるべし、物欲レーダー!
カルロは「悲しいけどこれ戦争なのよね」と、割り切るタイプです。