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異世界酒場交流記  作者: じんぐ
2/7

異世界人と神と宅飲み その2

異空間での異世界人と神との宅飲みが始まった。


「二人とも手に持ってるものをこの卓の上に乗せてもらえるかい?」


ジャーウスはそう言って大きく手を広げる。

俺は2つのビニール袋に入っているものすべてを袋から出し、テーブルにどんどん置いていく。

缶ビール6缶パック、缶チューハイ、缶のハイボール、

ポテトチップ、柿ピー、チータラなどなど、

あっという間にこちら側のテーブルにはスペースがなくなっていく。


カラリナさんは一升瓶ほどのビン、紙に包まれた何かと小さな紙袋をテーブルに置く。


「あ……お酒を入れる器がありません……」


カラリナさんはハッとした表情でつぶやく。


「その程度のこと、気にせずともよいぞ」


というとジャーウスは指をパチンと鳴らす。

指がパチンと鳴ると同時にテーブルの上に3つの陶器製と思わしきコップほどの器が出現する。

ニヤリと笑うとこちらを向き、片手を差し出してこう言った。

「サカイ君、ワシには缶ビールをもらえるかい?」

「はい、どうぞ」

6缶パックから1本を抜き出し、ジャーウスに手渡す。

異世界の酒が気になる俺はカラリナさんにどんな酒なのか尋ねる。


「カラリナさん、そのお酒はどんなお酒なんですか?」

「これは『エプル』という果実から作られた『エプルエル』というお酒です。

甘みと酸味がほどよい感じの飲みやすいお酒ですよ」


さすが異世界のお酒。地球にはない果実から作られた酒には興味が沸く。

「1杯もらえますか?」


カラリナさんは器にエプルエルを注ぎ、手渡してくれる。


「カラリナさんは何飲みますか?

この『ビール』というお酒は苦みのあるシュワシュワのお酒、

この『缶チューハイ』は酸味のある果実の果汁を使ったお酒です。

『ハイボール』はアルコール分の高いお酒をシュワシュワの水で薄めたものです」


俺は言葉を選びながら、カラリナさんにそれぞれがどのような酒かを伝える。


「それでは『缶チューハイ』をいただけますか?」


カラリナさんに缶チューハイのプルタブを開け手渡す。


「これはこのまま飲むのですか?」

「そうですね、容器兼器となっているので、そのまま飲んで大丈夫ですよ。

違和感があるなら器に注ぎましょうか?」

「いえ、そうであればそちらの世界に従いこのままいきましょう」

そう言ってカラリナさんは缶を両手で持ち、口に運ぼうとする。


「カラリナ君、飲むのはちょっと待った。

サカイ君、地球で飲み会を始めるあの言葉お願いできるかい?」

ジャーウスは缶ビールを片手に俺を見ながらニヤニヤしながら言葉をかける。


「そんなことよく知ってますね……」

「ワシは2つの世界の管理者だからな」

「そうでしたね。カラリナさん、私の住む地域には飲み会のスタートの合図があります。

それぞれ手にしたお酒の入った容器を軽くぶつけながら『乾杯』と言うんですよ」

そう言って軽く掲げた器を前に突き出すような動作をしてみせる。


「そのような合図があるんですね……

わかりました、サカイさんお願いいたします」


ジャーウス、カラリナさんにお願いされ、俺は手に持った器を軽く掲げる。


「それではいきますよ……『乾杯!』」

「「乾杯!」」

缶と陶器製と思われる器が触れ、カチンと音を立てる。


俺は『エプルエル』を口に含む。

リンゴのような甘みと酸味が鼻から抜け、そのあとにくるアルコール感。

そこまでアルコール度数は高くないと思われるが、

飲みやすく、万人受けしそうなお酒であるような気がする。


ジャーウスは缶ビールをゴクゴクと喉に流し入れ、クゥゥゥゥーーーといういかにもCMにあるような声を出す。

一方、カラリナさんは缶チューハイを一口飲み、ふぅと一息つく。


「どうですか?俺の世界のお酒は?」

「果実を使ったお酒の割りに、甘みがほとんどなく、ほぼ酸味だけですが、

この酸味がお酒である感じを和らげてくれるのかかなり飲みやすいですね。

エプルエルと同様女性に受け入れられそうな感じがします」

「それは果実が原料なのではなくて、お酒と果汁を混ぜて作ってるんですよ」

「そのような作り方のお酒もあるのですね……エプルエルはいかがですか?」

「果実が原料のお酒はこっちの世界もありますが、

渋みもなく、ほどよい甘さと酸味がちょうどいいですね」


お互いに異世界の酒に関しての感想を言い合う。

異世界の酒に対し、不安もあったが一口飲んだことでそれも払しょくされた。

カラリナさんも同様のようだ。


「いやぁ、久しぶりに飲む酒はやっぱりうまいな!

ちょっとつまみたいのだが、開けてもいいかね?」


ジャーウスがポテトチップの袋とカラリナさんが持ってきた紙の包みをを指さしながら俺とカラリナさんに提案する。


「そうですね。お酒だけでは体に悪いといいますもんね。開けますか」

「どうぞどうぞ、おいしいお酒と料理は合わせなきゃ損ですものね」


俺はポテトチップの袋をパーティ開けし、カラリナさん、ジャーウスがつまみやすい位置に置く。

カラリナさんも自分で持ってきた紙の包みを開けつつも、こちらの袋が気になっているようだ。


「これはなんですか?」

「ポテトチップという、ジャガイモという芋を薄切りにして油で揚げて、塩をまぶしたものです。

お菓子の一種なんですが、お酒とも合うんですよ」


そんな解説をカラリナさんにしている間にジャーウスは数枚を摘み、パリパリといい音をさせ口にしている。

カラリナさんも1枚摘まみ口に入れ、缶チューハイを流し込む。

1枚を口に入れ、缶チューハイを一口、また1枚と缶チューハイを一口と手が止まらないようだ。

そんな様子を見ている俺に気づいたのか、少し恥ずかしそうにこちらをにらむ。


「ポテトチップどうですか?」

「あまりお芋の味はしませんが、油と塩の味とパリパリという食感でおいしいですね。

なぜか手が止まらなくなる……クセになりますね……」

「それはよかった。」


俺も何か摘まもうとカラリナさんの開いた包みを見ると、薄切りの肉が乗っていた。


「それはお肉ですか?」

「はい、最近開店したお店の『ブブルク』という料理です。

堅いお肉を長時間焼くことで柔らかく食べやすくしているようです。

焼くときに付けるタレの材料を独自に考えたみたいですよ」

「いただいてもいいですか?」

「どうぞどうぞ。お口に合うかはわかりませんが」


ブブルクを一切れ摘まみ、口に入れる。

日本で食べるような脂の甘みは感じられないが、これぞ肉!という感じの肉々しさ、

表面に塗ってあるほんの少しだけ酸味と甘みを感じる濃いめのタレのコンビネーションが

酒のつまみだけでなく、普通の食事としてもイケるぐらいの味付けだ。


「うまい!肉を食べているという感じがしますね!

それに、この肉に塗ってあるタレも濃いんですけど、複雑な味を肉に付けてていいですね!」

「最近開店したお店ですが、侍女たちの中でおいしいと話題になっていたんですよ。

気に入っていただけて良かったです」


カラリナさんも自分の世界の味が気に入ってもらえたことで、ホッとしたのか笑顔を見せる。


「他にもいろいろあるので、どんどん食べてください」

「ありがとうございます。

でも……すみません。こっちは『ブブルク』しかなくて……」

「しょうがないですよ。この『ブブルク』もすごいおいしいですよ。

誰もこんなことになるなんて思ってないですから、どうせなら異世界の味を楽しんでいってください」


カラリナさんが恐縮した様子で謝ってくるので、

気にしないようにどんどん食べてもらうように勧める。


カラリナさんに笑顔が戻り、缶チューハイに口をつける。

ふぅとかわいらしい吐息が漏れる。

これを機に、異世界人であるカラリナさんとの宅飲みが本格的に始まったのだった。


一方、ジャーウスは左手に持った缶ビールを離さず、

空いた右手でポテトチップ、ブブルクなどをずっとつまんでいた……


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