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第7話 魔物

 初日の大口契約に続き、その後もいくつかの店舗と個人宅から定期配送の契約をもらってガラク商店の売上はうなぎのぼりだ。


 俺は穀物を仕入れるため、歩いて30分ほどのところにある隣の村に来ていた。歩くだけならどうってことは無いが荷車を引いているのでそこそこつかれた。


「どうも!ガラク商店のシリウスです!小麦とトウモロコシを買い取りに来ました!」


 この農家さんに仕入れに来るのはこれで2回目だけど、何回目であっても、どれだけ疲れていても営業マンたるもの元気な挨拶が第一だ!


 売れてる営業マンは元気がよく、いつも感じがいいのである。


「やぁ、この前の坊やだね。まだ子供なのに家の手伝いで隣の村まで来るなんて、えらいねえ」


 農家のおばさんに褒められた。


 家の手伝い、というか最近では父と立場が逆転して俺の店で父を雇っているような構図になっている。その辺は実になんとも言えない感じだ…


「はい!父も忙しくしてますのでこのくらいは僕がやらないと!」


「まぁ!ほんとに賢い子だねぇ…」


 そして俺は荷車いっぱいに小麦とトウモロコシを積んで、出発しようとしたのだが……


「あぁ、坊や!まだ明るいから大丈夫だと思うけど、寄り道せずに早く帰ったほうがいいよ。最近は街道に魔物が出るって話があるからねぇ」


「魔物…ですか?」


 やっぱりドラ○エに出てきたようなやつだろうか?スライムくらいなら逃げられそうだけど……まぁ出会わないに越したことは無い!さっさと帰ろう。


「ありがとうございます!では、怖いのでさっさと帰りますね!」


と言って俺は荷車を引きながらダッシュで街道を引き返した。


◇◆◇◆◇


 俺はさっきの農家のおばさんがとても親切で良い人だと素直に感謝していたのだが、きっと金森あたりは「余計なフラグ立てやがって!」と激怒するところだったんだろうな。


 まぁそういうわけで、しっかり魔物と遭遇しました……


 頭が2つある狼のような魔物が……3体……あっという間に囲まれた。どう見ても肉食系だ。そして今俺と俺の荷物の中で肉食系の皆さんのお腹を満たせるのは………俺だけだ!


ガルルル……


怖ぇぇぇぇぇ!


 よくテレビでやってたアフリカのドキュメンタリーで、ライオンの群れに殺られちゃうシマウマの子供って最後こんな気持ちなんだろうな……


……俺のセカンドライフ、短かったなぁ……


 魔物は合計6つの頭で吠え立てて、俺を威嚇してくる。そのボリュームは犬の比じゃない。


 俺はガタガタと震える膝に力を入れ、気を抜くとチビリそうなのを必死でこらえて、なんとか腰を抜かさずに立っている。


 そんな俺をあざ笑うかのように魔物の一匹が飛びかかってきた。


 なんとか身体をひねってかわしたけど、体勢が悪くて地面に手をついてしまった。そこへもう一匹が突進してくる。結構強烈な体当たりけ受けて、少し飛ばされた。


HP:70→50


 やばい……あと3発もらったら死ぬ。


 そしてそんなことを考えていたら、3匹目が2つの頭で足に噛み付いてきた。


2つの頭で別のところ噛むとかアリか!!?


HP:50→20


 ヤバいヤバいヤバい!最初のタックルよりダメージでかい!


 俺は無我夢中で足に噛み付いた魔物を振りはらおうとしたんだけど、その時にエアカッターが暴発した。


 魔物はちょうど身体を縦に引き裂かれたみたいに真っ二つになって死んだ。ついでにその奥にあった木も何本かスッパリ切り倒された。


 魔物の血が俺の足のあたりに飛び散る。


 ……グロい……


 残りの二匹は仲間の死に警戒したのか一度俺から距離を取った。


 相変わらず、あとのない状況に変わりはないが、偶然にせよ対抗手段があることが分かったことで俺は落ち着きを取り戻していた。


【スキル『日進月歩』と精神の効果によりスキル『恐怖無効』を習得しました】


 気持ちに余裕ができたことでテロップにも意識が行くようになった。


 そう言われてみれば今はあまり恐怖を感じない。真っ二つになった魔物の死体をグロいとは思うけど……


 だけど、恐怖を感じなくなったからといって事態が解決した訳ではない。俺は間違いなくあと一発もらったら死ぬのだ。


 いやぁ……このダメージ回復しないかなぁ?


 いろんな属性魔法が使えるくらいだから回復魔法もきっとあるだろう。俺は傷口がスーッとふさがっていくイメージで魔法を発動させてみた。


【スキル『日進月歩』の効果により光魔法Lv1『止血』を習得しました】

【スキル『日進月歩』の効果により光魔法Lv2『解毒』を習得しました】

【スキル『日進月歩』の効果により光魔法Lv3『癒やしの光』を習得しました】


 おお!一気に3つも覚えた!そういえば、光魔法も得意属性だったけどまさか回復系の魔法だったとは…てっきり豆電球かと思っていたのがなんとなく申し訳ない。


 おかげで体力も全快、足に痛みもない。よしよし、こっからは攻守逆転だ!


 一度距離をとった魔物2匹は、再びジリジリと距離を詰めてくる。そして一斉に飛びかかってきた!


 同時には捌けないとでも思ったか!しかし、俺はDM(鍋敷き) を効率よく作るために両手でエアカッターを発動できるようになっているのだ。

 魔法の左右同時発動ならもうお手の物である。


 シュパッ


 と乾いた風切り音を立てて俺の手から風の刃が放たれ、2匹の魔物はそれぞれ絶命した。


 うん、やっぱりグロい……そして、道端にこんなものをおいておくわけにも行かないので道の端に寄せ、火魔法でしっかり焼いておいた。


【スキル『日進月歩』の効果により獲得経験値が補正されました。シリウスのLvが2→5に上がりました】


 おぉぉ!一気にレベルが3つも上がった!


 ステータスがどれくらい上がっているかとても楽しみだが、まずはさっさと家に帰ろう。俺は荷車を来たときの倍近い速さで押して村まで一気に走りきった。


「おかえり、シリウス……まぁその服の血はどうしたの?!どこかで転んだの?怪我は?」


 ローラは俺のズボンについた血痕に驚いたようだ。さっきまで気づかなかったけど、確かに魔物の返り血もあるから結構痛々しいな。


「あぁ、途中で魔物に襲われたんだ」


「魔物!?大丈夫?どこか痛くない?」


「うん、もう大丈夫だよ!治癒魔法も使えるようになったし、ほらこの通り!」

 

 俺は小さな腕に力こぶを作って笑ってみせた。ついこういうリアクションしちゃうけど、やっぱ昭和な感じがするな。


「そ、そう?まぁ何もないなら良いんだけど…でも先に体をきれいにして着替えてらっしゃい!」


「はーい!」


 ◇◆◇◆◇


 今更だけど、我が家には風呂がない。汲み置きした井戸水を食用に使ったり、体を洗ったりするのに使ったりしている。今日も手ぬぐいを濡らして体を拭いた程度だけど、やはりこういう日はあついお湯にゆっくり浸かりたい。


 そのうち湯船のちゃんとついたくつろげる風呂でも作ろうかな?


 そして夕食も終えて、自室に戻りお待ちかねのステータスチェックタイム!オラわくわくすっぞ!


【ステータス】

名称:シリウス・ターマン

種族:ヒューマン

身分:庶民

Lv:5

HP:170

MP:80

状態:正常

物理攻撃力:51

物理防御力:43

魔法攻撃力:189

魔法防御力:163

得意属性:無・風・光

苦手属性:闇

素早さ:65

スタミナ:120

知性:523

精神:955

運 :199


保有スキル:

 (固有)日進月歩(一般)鑑定(一般)恐怖無効

保有魔法:

 光魔法:止血、解毒、癒やしの光

 風魔法:風おこし、空気砲、エアカッター、エアバリア、トルネード

 雷魔法:スタン

 火魔法:火種、炎、火弾


おおお!めちゃくちゃ上がってるー!

でも、Lvはまだガラクより低いのに、どうしてステータスは高いんだろう?


 まぁそれはおいおい究明するとして、今日の一件で護身術程度には戦闘もこなせないとこの世界では厳しいということが身にしみてわかった。


 結果的には圧勝だったが、一歩間違えれば、ていうかあと一発で死ぬくらいにはやばかった。


 俺は商店の仕事の前後で護身のためのトレーニングを始めることに決めた。

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