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第3話 ガラク商店

 2歳をすぎる頃になると普通に歩き回れるようになったので、俺の行動範囲はかなり広がった。

 一度家の外に出ようとしたら真っ青な顔をしたローラに捕まって連れ戻されてしまったけど……

 言葉については理解できるがまだうまく喋れず片言になってしまう。


 そんなある日、俺は自宅に併設されているガラクの雑貨屋を見に行ってみることにした。キッチンの横の鉄扉をゆっくり押し開けると、雑貨屋のバックヤード的なところにつながっていた。


 壁一面を占めている大きな棚には自宅よりはいくらか整頓された状態で品物のストックがおいてある。が、相変わらず何に使うのかよく分からないものがたくさんあった。


 棚の下段から小さな瓶を手にとって色々な角度から眺めていると、いつものポップアップが頭の中に浮かんできた。


【スキル『鑑定』が発動しました】

名称:ポーション(粗悪)

効果:HPを極めて少量回復する。

相場:5R(ルーツ)


 ふむふむ、ポーションってのが体力回復薬か。要するにオロナ○ンCとかリポ○タンD的なやつだろう。その後の(粗悪)っていうのはどう考えても品質のことだ。むしろ腐ってないことに驚きだ。

 最後にR(ルーツ)というのが通貨のことだと思われる。まだ、一般的な物の価値がよく分からないけど、俺がこれを売るならせいぜい5円くらいだと思うからまぁ高価ではないだろう。


 そんな感じで倉庫の品物を見て回っていると後ろからガラクにひょいとつまみあげられた。


「こらこらシリウス、こんなとこに入ってきちゃダメだろ?」


 今にも連れ戻されそうな状況だけど、せっかく店に入ってきたんだし、色々と聞いておこう。


「とーさん、これなに?」


 俺は大きなガラクタを指差してガラクにたずねた。


「おう、これはなぁもともと魔力を注ぐと自動で足をマッサージしてくれるカラクリだったんだが、今は壊れちまってるんだ」


「 うりもの?」


「ん?あぁ、いつか直せたら売ろうと思ってるが今のままじゃだめだな」


 確かに俺の鑑定結果でも相場は0Rだ………そんなものは捨てろ!と心の中で叫んだ。


「とーさん、おみせ見たい」


 ガラクは最初少し微妙な表情をしていたが「とーさんのおしごと、カッコいい」とか言って褒めちぎっていたら最後には抱っこ&商品説明のオマケ付きで店内を案内してくれた。


 この店はガラク商店、というまぁ要するにコンビニやスーパーのようなものらしい。ガラク(タ)商店、とか一瞬でも思ったりなんかしてないぞ?……してないぞ!


 店内は倉庫や自宅ほど散らかってはいなかったが、やはり雑然としていた。日本のコンビニのように商品が種類ごとにまとめられていないのが1番の原因だろう。


「シリウス、いつか父さんはお前にこの店を継いでもらいたいと思ってるんだ!だから小さいうちからしっかり勉強して賢い男になるんだぞ!」


 ……えっと、まずこんな今にも潰れそうな店を継ぎたくない。それから、もちろん勉強して賢くはなりたいが、父よ、アンタはどうなんだ?


 俺は首をかしげてじーっとガラクを見つめていた。


「ハハハ!まぁまだ分からねぇか!」


 どうやら父は俺が店を継ぐというのを理解してないと思ったようだ。


【スキル『鑑定』が発動しました】


名称:ガラク・ターマン

種族:ヒューマン

身分:庶民

Lv:9

HP:122

MP:10

状態:正常

物理攻撃力:48

物理防御力:45

魔法攻撃力:13

魔法防御力:10

得意属性:--

苦手属性:--

素早さ:35

スタミナ:104

知性:75

精神:60

運 :98


保有スキル:--

保有魔法:--


 どれどれ………知性低っ!そしてメンタル弱っ!

後は高いのか低いのかよく分からんが、運は俺の半分ほどだ。よくこの店潰れなかったな……


 それとどうでもいいが、いや、良くないが…名前……ガラクタマンじゃん。絶対に商才は無いと断言できる。

 仮に日本人に「売間千造(うれませんぞう)」という名前のやつがいたとして、そんなやつからものを買うか?「あじさい亭(味最低)」という高級レストランに敢えていこうと思うか?名前とはそういうレベルで大事なのだ。


 俺はとりあえず父に愛想笑いを返し、店のすみでホコリをかぶっている本の山に向かった。


「お!シリウス、本に興味があるのか?」


「えっと…うん!」


「そうかそうか!さすが俺の息子だな!どうせ売れないからどれでも好きなの持ってって読んでいいぞ!絵本は……この辺だな」


 そう言って父はイラストの入った薄い本を数冊渡してくれた。


「ありがとう!」


 そして俺は絵本を抱えて自宅へと帰った。


 ◇◆◇◆◇


 持ち帰った絵本を適当に開いてみたが、文字はさっぱり読めなかった。


「あらシリウス、パパに絵本もらったの?」


 後ろから母に声を掛けられた。これはチャンスだ、この機会にローラから文字を習おう!


「うん、これなんて読むの?」


「これはね……」


「ふーん、じゃぁこれは?」


 そのまま母にを1時間くらい付き合ってもらって絵本をすべて読破した。


【スキル『日進月歩』と知性の効果により言語『ハズール語(記述)』を習得しました】


 お!やっぱりきた!知性が高いおかげなのか、一度習ったことを忘れなかったし、会話よりは複雑だったけどもしかしたらと思ってたんだ。


「かーさん、ありがと!」


そして俺はすでに読み終わった絵本を抱えて再び父のもとへと走った。


 ◇◆◇◆◇


 ガラクは俺のいなくなった店舗で、一人たそがれていた。


「はぁ……シリウスがせっかく本に興味を持ったっていうのに、こんな貧乏生活じゃ新しい本も買ってやれないぜ……」


 親の悩みってやつか……結局前世の俺は知ることのないまま終わっちまったなぁ……


 本を抱えたままの俺もなんとなくセンチメンタルな気分になって足取りが重くなった。


「シ、シリウス!どうした?絵本は面白くなかったのか?!」


「ううん、もう全部読んだ!」


「そ、そんなこと言わずにじっくり時間をかけて読んでみたら……ってえ?母さんに読んでもらったのか?」


「うん、でももう話も覚えちゃったから次の本読もうと思って!」


「覚えたって…シリウスお前さっきまで字も読めなかったじゃないか」


「うん、でもかーさんのお話聞いてたらなんか覚えた!だからもう少しむずかしい本ちょうだい!」


「お、おう!じゃぁこれなんかどうだ?これはハズールの歴史が面白く書かれてる本なんだが…」


「わーい!じゃぁそれ読んでくる!」


 俺は父から本を奪い取るようにかっさらうと自室へと戻っていった。




「たまげたな……ありゃ天才だ!おぉぉぉぉ!こうしちゃいられねえ、今のうちからシリウスを学校に通わせるために金をためねえとな!」


 自分の息子の尋常ならざる記憶力に度肝を抜かれた父ガラクは先程までの物思いなどすっかり忘れて舞い上がった。



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