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第2話 異世界転生

 神様(仮)に転生させてもらえることになり「男」になるチャンスを辛うじてつなぎとめた俺。

 まぁ、考え方によっては生まれ変わってるわけだしノーカウントという声もあるかもしれないが、中身は俺のままだからこれはれっきとした第2ラウンドのスタートなのだ。


 ……ところが今の状況はなんだ!?めっちゃ苦しいぞ。とりあえず全身をギュッと締め付けられるような感覚がして骨がきしむし、息もできない。きっと俺の顔は窒息寸前で真赤になっていることだろう。

 しばらく痛みと息苦しさにもがいていた俺だが、ついに目の前が明るくなった。


「おぎゃぁぁ、おぎゃぁ(プハァっ!助かった!)」


 ……あれ、赤ん坊の鳴き声がする?それに周りもよく見えない。


「おぎゃぁぁぁぁ(おーーーい、誰かそこにいるのか!?)」


「qwer#$%I`PO`+L@!!」


 何か聞こえるが、何言ってるのかさっぱりわからん。そしてやっぱり視界が不鮮明だ。それに誰かに抱きかかえられているのか、身体が右へ左へ揺さぶられる感じがする。

 呼吸も少しずつ落ち着き、頭も冴え始めたことで俺はようやく状況が理解できた。

 なるほど、俺は今生まれたのか。今のは母親の中から出てきたってことだな、きっと。生まれたばかりで目もうまく見えないのだろう。まぁこれで無事に転生できたってことは間違いなさそうだ。

 そして安心した途端、急激に眠気に襲われ俺はそのまま眠りに落ちてしまった。


【スキル『日進月歩』の効果により言語『ハズール語(日常会話)』を習得しました】


 意識が完全に無くなる直前に、頭のなかにそんなテキストが浮かんだ気がした。


 ◇◆◇◆◇


 どのくらい寝ていたのかは分からない。ただ、無性に腹が減って目が覚めた。


「おんぎゃぁぁ(腹減ったー!)」

「よしよし、シリウスおなかが減ったのね。さぁ、ミルクですよ」


 どうやら俺の名前はシリウスというらしい。シリウスといえばおおいぬ座の一等星なわけだが、果たしてこの地球じゃない世界におおいぬ座なんてあるのだろうか。そういう余計なことを考えていると俺の口元に柔らかい水風船のようなそこそこ質量のある物体があたった。俺は反射的にその先端にあるすこし硬い突起に吸い付いた。しばらくは本能のままにそのままミルクを飲み続けていたが、

 

 …………ん?これってまさかアレ……じゃね?おぉぉぉぉぉ!


 最近週刊誌のグラビアで見た、大人の女性の象徴に今むしゃぶりついている俺。なんか少し「男」になった気がしたが、冷静に考えればこれは母ちゃんなのでノーカンだ。

 お腹も満たされ、俺が口を離すと今度は何かの台の上に寝かされた。


「あらあら、おむつも替えましょうね」

 

 そして抵抗することも出来ず、下半身があらわになった。まぁ、赤ん坊だししょうが無いにしても、流石に結構恥ずかしいな。

 まぁ、それは良いとしてもう一つ気になることが。……俺いまこの人の言葉を理解できたよな?

 

 おむつも交換し終わったようで俺は再びベッドに戻された。今はそれほど眠たくないので、今のうちにできるだけ情報を整理しておこう。

 俺は自分の身体を動かそうとしてみたり、何か言葉を発しようとしてみたり、いろいろとやってみたが今のところ身体はほとんど動かせないし、言葉も無理だ。できることといえば足をちょっとばたつかせてみたり、手を握ったりすることくらいだった。

 だが、身体を動かそうといろんな部位に意識を集中していたときに偶然見つけたものがある。


【ステータス】


 明らかに日本語で書いてある。ちょっと表現しづらいけど、目を開けていようが閉じていようが、意識すると頭の中にPCのウインドウのように浮き出てくる感じだ。

 それを頭のなかで、ちょうどタブレット端末にタップするような感じでポチってみるとウインドウは詳細画面に切り替わった。


【ステータス】

種族:ヒューマン

身分:庶民

Lv:1

HP:3

MP:0

状態:正常

物理攻撃力:0

物理防御力:1

魔法攻撃力:0

魔法防御力:1

得意属性:無・風・光

苦手属性:闇

素早さ:1

スタミナ:3

知性:306

精神:947

運 :183


保有スキル:(固有)日進月歩

保有魔法:-- 


 なんか数字と文字がたくさん並んでいるがこんな感じだ。HP・MPって小学生の頃やったド◯クエにあったな!確かHPが体力でMPが魔力みたいな感じだっけ?

 種族?庶民?……わざわざ書かれてるってことはきっと人間じゃない知的生命体や富豪とか貴族とかもいるんだろう。


 それにしてもLv1なのはまぁ納得だとして、他のステータス低すぎじゃね?いや、でも冷静に考えたらこんなもんか?

 得意属性とか苦手属性とかっていうのは魔法のことかな?ということは俺もいつか魔法が使えるようになるのかな?

 そして知性…306!今までの0とか1とかと比べるとめちゃくちゃ高いな。けど逆に、これが成人男性の普通だとすると、他のステータスが低すぎるとも考えられる。

 精神に関してはまぁ自信あり!他の成人男性より高いだろう!なんせ、こちとら幾度となく修羅場をくぐった営業マンだ!

 運は…よく分からんが0やマイナスじゃないならなんとかなる!そしてよく分からんといえばスキルの『(固有)日進月歩』だ。スキルと言えば神様(仮)が一つくれると言っていたし、他にそれらしいものもないからきっとこれがそうなんだろう。


 そして俺は日進月歩と書かれた文字の上を頭のなかでタップしてみる。すると、更に詳細な画面が開かれた。


【保有スキル】

名称:(固有)日進月歩

効果:Lv・知性などの成長速度が上がる。また、新しい技術を生み出すことがある。ただし老化速度はスキルの影響を受けない。


 なるほど、これもよく分からんが要するにレベルアップしやすい体質ってことだ。ドラク◯のときは相当頑張ってレベル上げしてボスに挑んだりした記憶があるから、それが楽になるのはありがたい。


 とかなんとかいろいろ考えていたら、


【スキル『日進月歩』の効果により知性が306→330に上がりました】


 とテロップが出た。


 こうやって思考するだけでもステータスは成長するようだ。


 ◇◆◇◆◇


 それから数カ月の間は目も良く見えないし、俺はなんとなく周囲の会話を聞きながらこの世界の情報を集めていた。

 父の名前はガラク・ターマン、うちはどうやら雑貨屋を個人経営しているらしい。母の名前はローラ、何かの内職をしているようだ。二人とも年は29才、前世の俺より5つ若い。父のガラクは若くして個人経営とはいえ、社長をやっているなんて大したものだ。そんな青年実業家の息子ってなかなかいい環境に生まれたんじゃなかろうか、なんて思っていられたのは目が見えるようになるまでだった。


 ある日ふいに周囲の景色が鮮明に見えるようになり、辺りを見回してみたのだがそれはもう筆舌につくし難い酷い有様であった。いたるところに何に使うのかよくわからないパッと見ゴミの山が出来上がっており、家の中には足の踏み場もない。昔テレビでやっていた「ゴミ屋敷」のような状況だ。よくもまぁこんなプリティな赤ん坊をゴミの中で育てようなんて思ったな!

 

 神様(仮)よ、これは家柄を選択しなかった俺へのあてつけか?


 時々父に来客があり、応接室的なところから話し声が聞こえるが、大体はどうでもいい世間話をして終わっている。毎回同じ声のおっさんだし、ただの茶飲み友達ってところか。……って言うか頼むから父仕事してくれ。


「おぎゃぁぁぁぁぁ(おぎゃぁぁぁぁぁ)」


 俺は心の底から泣いた。


【スキル『日進月歩』の効果により特技『観察』を獲得しました】

【スキル『日進月歩』と特技『観察』の相乗効果によりスキル『鑑定』を習得しました】


 新しい特技とスキルの獲得は嬉しいけど、なんか素直に喜べない……


 そんなこんなで生まれて一年経ったときの俺のステータスがこちら!


Lv:1

HP:5

MP:0

状態:正常

物理攻撃力:1

物理防御力:1

魔法攻撃力:1

魔法防御力:1

得意属性:無・風・光

苦手属性:闇

素早さ:6

スタミナ:5

知性:402

精神:949

運 :185


保有スキル:(固有)日進月歩(一般)鑑定

保有魔法:-- 


 特に体力的なものはほとんど変化しなかったけど、ずっと考え事してたから知性は結構上がった。あとハイハイできるようになったから(する場所は殆ど無いけど)素早さもちょっと上がった。

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