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第13話 樹海

 俺たちは桶と包丁の魔道具を村の中央広場に運びこむと、桶は井戸につなげ、包丁は鎖をつけて井戸の脇に設置した小さなテーブルの上に置いた。


 アルフレドさんはトマさんだけでなく、集まってきた村人たち全員に魔道具のこととその使い方を教えた。村人たちからも感嘆の声が上がる。


 これで少なくとも新たに毒を摂取することは無いだろう。


 その後、俺とララさんは手分けして毒に冒された村人の治療にあたった。ララさんは割とすぐにMP切れでへばってしまったので、8割方は俺がやったんだけど……


「賢者様、それに従者の御二方。この度は村を救っていただき誠にありがとうございました」


「なに、礼には及ばんよ。それよりもトマ殿、これからのことじゃが……」


「心得ております。今までどおり村はしばらく閉鎖し、外部の人間は入れないようにいたします」


「うむ、解毒とはいえ魔道具を狙う輩がどこから紛れ込むかわからんからのう。井戸の周りにも常に数人の見張りを立てることを忘れるでないぞ?」


「村の人間に限ってそのようなことはないと思いますが……承知しました」


「それで良い、では行ってまいる。二人とも準備は良いかの?」


「はい!」

「お師匠…私は疲れましたぁ…」


「何を情けないことを……ほれ行くぞ」


 ぐずるララの頭をペシっと叩いて歩き出したアルフレドさん。


「イテッ!えーん…シリウスくん、おんぶして」


 いきなり背中にもたれかかってきたララさん。


 身長差もあるし後ろから抱きつかれたような感じになっている……


「な!?あ!へgm\♪9awa☆÷*=7$!?」


 これはまずい……めちゃいい匂いするし、首筋にララさんの吐息があたるし、背中に2つの愛の爆弾が押し当てられている……


「ブヘッ!」


 俺は前のめりに盛大に転んでしまった。


「えっ!?ちょっとシリウスくん、だいじょぶ!?」


「は、はい、なんとか……急なことで少し驚いてしまいました」


「良かったぁ……てっきりあたしが重かったのかと……」


「い、いえ!そんなことはないです!むしろ軽かったというかチャラかったというか……」


「…チャラってなに…??……よく分かんないけど、まぁいいわ!さぁ、行きましょ!」


 そして自然に差し出されたララさんの手をとり、俺たちは先を歩くアルフレドさんを小走りで追いかけた。


 

◇◆◇◆◇


 村を出て一時間ほど歩くと街道とは別に、北東の方角に伸びる別の小道があらわれた。街道のように道幅も広くないし、路面もボコボコしている。


「ふむ、ここから少し進めばいよいよ樹海に入る。二人とも、今までのような遠足気分でおってはいかんぞ?」


「「はい!」」


 俺たちは気を引き締め直し、あたりを警戒しながら小道を進んだ。


 それからまた一時間ほど歩いただろうか。俺たちはいつの間にか深い森の中にいた。


「街道から外れたときは、まだ森なんか無かったはずなのに……」


「それがここの怖さじゃ。ジーフ山の麓に広がるこの樹海はまたの名を『人食いの森』と言うてな、気がついたときには森の腹の中にすっぽり収まっておるというわけじゃ」


「お師匠!じゃぁ私達は食べられちゃったってことですか?!」


「もののたとえじゃ、馬鹿者。心配せんでもこの森自体がこちらを襲うことはない」


「良かったぁ…」


「もっとも、この森の魔物は街道で出くわすような小物とは一味違うぞ?」


「えぇぇ……」


 そりゃ、森は無害でも魔物は出るよね。俺も警戒を怠らないようにしなきゃな!


「まぁ、今のところ魔物の気配も無いようじゃ。ここらで少し休憩を取るか」


 そして俺達は一際大きな木の根本に腰を下ろし、トマさんたちにもらった弁当を食べて休憩をとった。


「そういえば、シリウスくん。君には私達のステータスがわかるみたいだけど、私達は君のステータスを知らないわ!ちょっと教えなさいよ!」


 最近すっかり姉さん風を吹かせているララさん、それ自体は全然良いんだけど……近い!いちいち近い!顔なんかもう触れそうなほどくっつけてくるし、時々もう色んなとこが当たってる!


 俺は毎回反応に困ってキョドるわけどけど、ララさんはそれを面白がっているフシがある。


 姐さん女房ってのも悪くないなぁ……


 なんてちょっと妄想にふけってしまったが、たしかに二人には俺のステータスを教えたことはなかった。


 同じチームなんだし、しっかりと共有しておいたほうがいいか。


【ステータス】

名称:シリウス・ターマン

種族:ヒューマン

身分:庶民

Lv:8

HP:216

MP:140

状態:正常

物理攻撃力:65

物理防御力:68

魔法攻撃力:229

魔法防御力:207

得意属性:無・風・光

苦手属性:闇

素早さ:80

スタミナ:160

知性:580

精神:957

運 :201


保有スキル:

 (固有)日進月歩(固有)ブッチャー

 (一般)鑑定(一般)恐怖無効(一般)魔法陣作成

保有魔法:

 光魔法:止血、解毒、癒やしの光

 風魔法:風おこし、空気砲、エアカッター、エアバリア、トルネード

 雷魔法:スタン、フラッシュ

 火魔法:火種、炎、火弾


 最近は道中での魔物討伐も俺がサクサクっとやっちゃってるしレベルもいくつか上がっている。


「ほぇ~……すごい数値……」

「うむ……その年でこれだけ賢いのも頷けるのう……いくつか聞いたことのないスキルがあるが、もしや本当に神の祝福なのかもしれんのう」


 まぁ、当たってますね……


 アルフレドさんからは、魔道具のこともそうだけど、俺がもっと大きくなって自立したら好きにすればいいと言われたが、幼いうちは俺自身や家族に迷惑をかける可能性があるからあまり目立たないようにと釘を刺された。


 まぁステータスが高いってのは将来的に旅に出るには好都合だし、逆にそれまでは今みたいなときしか使わないから良いんだけどね!


……………

…………

………

……


 その後もさらに2時間ほど進んだが、魔物の姿はもちろんその気配すら全く感じられなかった……ついさっきまでは。


 さっきまでザワザワと葉を揺らしていた木々が急に静まり返った。


「むむ、やっと出迎えが来たようじゃ」

「そのようですね……」

「やってやるわよ!」


 俺たちの眼前の茂みがガサガサと揺れ、いくつもの足音が近づいてくる。かなりの数だ……


「え…!?」


 現れたのは……巨大な猿。身長はざっと2メートルはありそうだ。


「で……でか…」


「シリウスくん油断するな、アレの名は猩猩。身体も頑強じゃが、厄介なのは妖術という精神魔法じゃ。奴らはいろいろな術を使って人心を惑わせる」


 今まで出会った魔物は魔法なんか使ってこなかったから、それだけでもこいつの格が違いが分かる。


 そして猩猩は一斉に石や大きな木の枝やらをこっちに向かって投擲しはじめた。


「チッ……エアバリア!」


 とっさに3人収まるサイズのエアバリアを張って飛来物から二人をかばった。


「すまん、助かった……む!?いかん!二人とも妖術が来る!集中して正気を保つんじゃ」


 何匹かの猩猩がこちらに向かってブツブツと何かを唱えながら魔法を放っているのが見えた。そしてそれを囲むように他の仲間が守っている。知能もそれなりにありそうだ。


「グっ……グァ……イヤだ、だめ…」


 ……ララさんが何やら卑猥な感じでもだえている。この人、狙ってやってるんじゃないだろうか?

 

「クッ……これはなかなかじゃのう」


とりあえず、アルフレドさんの声を聞いてなんとか冷静になった。それにしても、なんで二人だけ狙われてるんだ?


 俺は足元に散乱した石ころを一つ拾って猩猩たちに投げ返した。石は運悪く一匹の頭にあたったが、ゴツっという重い音の割にそれほどのダメージはなさそうだ。

 しかしそれを機に猩猩たちが一斉に騒ぎ立て始めた。そして何匹かが俺に向かって硬そうな木の棒を片手に突進してきた。 


 子ども相手になんて奴らだ!じゃぁ俺だってやっちゃうもんね!


「トルネード!」


 初めて使って以来使ってなかった、俺の(多分)最強魔法だ!


 俺の狙い通り猩猩たちの群れのど真ん中に大きな渦が巻き起こった。


 あれ?なんか前より威力やばくね?


 俺たちの周りには俺の張ったエアバリアがあるから何ともないけど、トルネードはどんどん大きくなり、猩猩たちだけでなく周りの木々も根こそぎ引き抜いて巻き込みながらさらにその勢いを増していく……


 そして天高く渦を伸ばすと、巻き込んだものすべてを空にぶちまけて消えた。


「な、何じゃ今のは!?」


「えと……トルネードなんですが……アハハハ……」


「あれはもはや魔法じゃなくて何かの災害じゃ……」


「アハハハ……ララさんもそう思います?実は、僕もなんです……」


「む!?いかん!上からものが降ってくるぞ!」


 俺はエアバリアに力を注ぎドーム上に三人を覆った。数秒遅れて空から猩猩だった「何か」や巻き上げた木々が雨のように降ってきた。血しぶきもエアバリアにベチャベチャと張り付きドームが次第に真っ赤に染まっていく……


「うえっ……」


「これは……」


「気持ち悪っ……」


 やっと雨がおさまり、ドームを解いたときにはさっきまで一面の深い森だったその場所がなんと、円形の更地に早変わりしていた。


「えっと……」


「なにこれ!冗談でしょ!?」


「ワシは……悪い夢でも見ておるのか」


 アルフレドさんもララさんも驚きでポカンとしていた……



 

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