護る男
彼は死ぬまで自宅警備員だった。死んでからも自分の墓を警備していた。何度も何度も数えるのが馬鹿らしくなるくらいに成仏させられかけたが彼は、気合いで踏ん張って耐え、自分の墓を必死に警備していた。
「あのクソ坊主、毎日毎日念仏唱えやがって! 俺は俺の墓を護るんだ! 自宅警備の名にかけて! 」
神様はこの自宅警備員のせいで困り果てていた。
神様は男の元に降りた。
「コラコラ、御主いい加減成仏してくれんかね? 君のせいで儂に大量にクレームが押し寄せてるんじゃよ」
「何だお前は! クレームだと!? そんなのは知らん! 俺は自宅警備員だ、自宅は無くなってしまったからこの墓が今の自宅だ! だから俺が警備するんだ! それは当たり前の事だろう? 」
鼻息を荒くしながら捲し立てる男。
神様はしばし考えそこで一計を案じた
「ならワシが別の世界にお前の家を建ててやる、そこに住むと良いだろう」
「そこは三食飯付きか? ネットは? クーラーは? 」
「は? 」
「だから三食飯付きでネットやクーラーはあるのかって聞いてんだよ、俺はその条件じゃなきゃそこには行かないからな! 」
「何をふざけた事を! 君は頭がおかしいのか? 」
「俺は護る、自宅は親に俺ごと焼き払われてしまったが・・・・この墓だけは俺が護る! 」
「・・・・・・それマジ? 」
「マジ」
「それはまああの・・・・何というかすまんな・・・気を落とすなよ? 」
「気にしていないさ・・・・だか焼け落ちた身体と家は戻らないがな」
居た堪れない空気が流れる。
神は男から目を逸らし男の資料を見て、呆れてしまった。
「あー君さ、家にバリケードやトラップも作ったの? それこそ戦争で使える様なレベルの」
「ああもちろんさ! 外敵が侵入してくるのを防ぐ為にな! 引きこもりを連れ出そうとする悪魔が居るってネットでみたからな! 」
男は花の様な笑顔を神に向ける。
「大量に仕掛けられたトラップに両親が引っかかって、それが元で火事になったみたいなんだが・・・」
「マジ・・・・?」
男は目の前が真っ白になった。
「両親に謝りに行こうな? 儂もついてくからな? 」
彼の手には冷たい手錠がはめられ神に連行されていった。
墓には霊化した彼が残した大量のトラップを残して。