episode14
「今日は軍から呼ばれてるんでしょ?」
「ああ。何でも緊急招集とのことだけど……」
悠人が生徒会長に予定があると言ったのは単なる口実では無くこの事であった。
「……緊急、ね……また悠人を使って対処させるのかしらっ……!」
それを聞いた棗はいつも以上に険しい顔をしながら怒りで唇を強く噛み締めている。
棗は元より悠人の入隊を反対していた。それは棗が悠人を誰よりも大事に思っているからである。
故に今回、悠人を学院に入学させたのも、少しでも悠人を戦場から遠ざけたかったという棗の思いが込められていた。
悠人とて察しが悪いわけでは無い。棗が心配してくれているのは十分にわかっている。悠人にとっても棗は特別な存在だ。棗が悠人のことを思っている以上に悠人は棗を大切にしているといってもいい。それほどまでに棗という姉の存在は悠人にとって大きいものなのだ。
悠人は棗の肩に手をおき、優しい声音で話した。
「心配ないよ、姉さん。俺は死なない……少なくともこの日本で俺を殺せる奴は存在しないから」
棗は自分よりも少しだけ高い悠人の顔を瞳を潤わせながら見上げる。
悠人の目から迷いは感じられない。嘘や虚勢を張っているようにも見えない。
その黒い瞳からは力強い確固たる意志のようなものをのぞかせていた。
「……相変わらず頼もしいね、我が弟は……でも、私も悠人が一番強いってことは知ってるよ?だから……」
棗は潤ませていた瞳に指を少し擦らせて笑顔を作る。
「いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
悠人は力強く頷いた。
〜〜〜
―――日本軍
現在の日本において最も権力を持っている組織である。
軍事力はもちろんのこと、司法権、行政権などのものでさえこの日本軍に全権委任されている。
昔の日本では三権分立という制度を利用して権力の分散を図っていたようだが現代では通用しない。
何故なら突如の異能の発現とそれを利用したテロ組織によって国中枢の機関が一手に麻痺してしまったからだ。
日本軍に権力を全権委任した事により国も安定した。
何故か?
それは日本軍が圧倒的力を持っていたからだ。
最初の頃はどうにかしてこの日本軍を瓦解させてもう一度権力を取り戻そうとする政治家もいたそうだが、今では全くといっていない。
それもそのはず。
そういう人間は全て日本軍の力によってねじ伏せられ、淘汰されたからだ。
この国、いやこの時代のこの世界では力こそが全て。
そしてそれを証明し続けているかのように君臨する日本軍。
その本部はかつて東京と呼ばれていた日本の首都に置かれていた。
旧東京―――現在では日本軍総合施設、通称レガント。
かつて都市であった区画を丸々と軍事施設として新たに作り変えたのだその軍事施設の規模は現在アメリカ、ロシアに続き三位である。
レガントには一際高くそびえ立つ建物が存在する。高さにすればおおよそ七百メートルほど。この建物はかつて日本で一番高かった電波塔を造り替えたものである。
どこまでも高く伸びるその建物は雲を超え、地上からは頂上は目視できないほどだった。
悠人は現在このレガントで一番高い建物の中のリフトに乗っていた。
ここは日本軍の要といってもいいほどの重要な場所。
それはここが日本軍の本部だからである。
その日本軍本部に悠人は急遽呼び出しを受け、向かっている最中なのだ。
「階層は?」
「一ニ○階で」
「かしこまりました。それでは移動します」
リフトを操作するのは黒い帽子を被った女性。
落ち着いた声で、パネルを操作する。
因みにであるが、この女性は人間ではない。
人間を模して造形されたAIを搭載している人形である。
このレガントでは人間の従業員は殆どいない。
大体の事はこうやって人形達がやっている。
これも機密情報などの漏洩を防ぐ為の一環なのである。
「到着です」
閉ざされていた扉が音も無く開き、黒帽子を被る女性型AIがぺこりとお辞儀をする。
悠人は手を軽く挙げることでありがとうの意を込めてリフトから出ていった。
リフトから出るとそこは広いロビーになっていた。
その奥にあるのは豪華に装飾されている大きな扉。決して趣味がいいとは言えないようなものである。
悠人がその扉に手を掛けると鈍い音をたてながらゆっくりと開いた。
まずは謝罪を。更新のほうが遅れてすいません。ここ最近何かと忙しかったので執筆時間を取ることができませんでした。
またこれからの更新なのですが暫くお休みさせて頂くことになります。誠に勝手ながら申し訳ありません。四月からまた週一投稿していく予定なのでよろしくお願いします




